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44/115

44,二人しか弟子。

 


「中立都市レグに向かい、計画されている『破壊工作』を阻止してきてほしい。以上だ。君たちの活躍を信じているよ」


 と、われらがギルドマスターのお言葉。

 やることを終えたとばかり、秘書を呼んで別案件を話し合いだした。


「……あの、ギルマス。前回のときも思ったんですけど。クエスト内容、ざっくりすぎませんか? 一文内で済ませなければならない、という裏ルールでもあるんですか?」


 おそらく前回クエストでも、ディーンはフライアの状況などなど、さまざまなことを掴んでいたはず。

 その上で、『神聖聖女に会ってこい』とだけしか言わなかったわけだ。


 ディーンは顔を向けてきて、おやまだいたのかい、と言いたそうにする。


「リク。細かいことは、本当に分からないんだ。レグが完全中立都市をうたっているのは、君も知っているね。中立だからこそ、他都市の干渉もある程度は受け入れている。たとえば、われらが冒険者ギルドの出張所も置かせてもらえているように。そして、レグ出張所の冒険者からの情報があり」


「その冒険者、今度は本物なんでしょうね?」


「もちろんだ。とにかく、これより詳しいことは、彼女から聞いてくれたまえ」


「しつこいと思われたくはないですが、どうやって本物かどうか見極めればいいんですか」


「君がその点をこだわるかもと思い、身元確認がわりにちょっとした合言葉を用意してある。これだけでは不満かもしれないが、ないよりはマシだろう。彼女の名はエンマ」


「エンマ? 変わった名前」


「先に言っておくが、名前について何かしら言うと、彼女は、あー、控えめに言って、とても不機嫌になるから気をつけたほうがいいね。

 では、リク、スゥ。冒険者ギルドの英雄たちよ。今度も世界を救ってきてくれたまえ。さ、私はこれから朝食をとらせてもらうとしよう」


「……師匠がサボり魔になったのは、ギルマスにこき使われまくった反動とかでは?」


「君のお師匠さんが、昔は働き者だったと思っているのかい? エレノラに仕事をさせるのは、山を動かすがごときだったね」


 と、懐かしそうに言ったディーンだったが、一瞬、トラウマ的な表情がよぎった。

 山を動かすのは、さぞかし大変だったのだろう。


「……」


 というわけで、おれとスゥは出発した。


 目指すは中立都市レグ。




 ──マイリーの視点──


『似顔絵描き』。


 コア機関が各街道に配置している、見張り要員の通称。


 その似顔絵描きから、知らせが入った。

 ──『デゾンより、対象の二名が出発。方向からして行き先候補の都市は次の通り』


 とある。

 あたしは、複数都市の候補の中から、冒険者出張所のあるものを選別。

 そのほか、もろもろを踏まえて、今回のリクたちの向かう先が中立都市レグだと確信できた。


 現状。この二人には、ある容疑がかけられている。

〈封魔〉スキルを所有しているのではないか、という容疑が。


 というわけで、〈封魔〉スキルを真に所有すべき(と当人たちは思っている)評議会が、コア機関に捕獲指令を出してきたのも、無理はない話。

 しかも『生死は問わず』で。


 その指令を直接受けたのは、あたしではないけれど。

〈四鴈〉の中で、最も頭のおかしい『あの男』だけど。


 普通に考えれば、今回はリクも命はないでしょう。あと、リクにくっ付いている雑魚剣士も。


 リクはあたしの獲物なので、癪ではある。ただ、『あの男』とやりあうのも、正直、得策ではない。


 そこであたしは、今回は高みの見物を決め込むつもりだったのに。

 突然、それができない状況に立たされている。

 今朝がた、このタイミングを狙ったかのように、ある手紙が届いた。


 差出人は、わが師匠。

 あの人、手紙を出すのも怠くていやだと言っていたのに。直筆の手紙を寄越すなんて。


 その内容は、簡潔だった。


 ──「二人しか弟子がいないんだから、片方が早死にしたら、わたしは泣くよ。泣く泣く泣く」


 …………。

 あたしは側近を呼んで、しばらく聖都を留守にすることを伝えた。どちらに行かれるので、と問われたので。


「中立都市レグに」

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