43,次なる都市へ。
四日後の朝。
中立都市レグに向かうことになった。
その前に、まず今回の功績によって、おれとスゥの冒険者ランクが上がることに。
ランクは最下位から、銅→銀→金→ルビー→サファイア→エメラルド→アレキサンドライト。
アレキサンドライト・ランクの上はない。が、それでもそこに行きついた者を、便宜上、レジェンド・ランクという。
ディーンが功績を述べる。
「君たちは神聖聖女を助け出し、ハーフ・ディアブロの暗躍を証明。そして討伐不可能とされていた古神殿のガーディアンを撃破する大車輪の活躍」
そういや古神殿の宝なんてなかったな。
「冒険者リク、冒険者スゥ。君たちを銅ランクから、ルビーランクへと特進としよう。これからも励んでくれたまえ」
喜び溢れるスゥ。
「感謝いたします、ギルドマスター。ねぇ、リッちゃん! わたしたち、英雄にこれでまた一歩近づいたね!」
「まぁ給料が上がるのはいいことだよな……いやまてよ。これ、こんなにクエスト強制受注させられていたら、金の使い道がないんじゃないか?」
「老後のために貯めているんじゃないの?」
と、スゥがとんでもないことをほざいた。
まだ若いのに、いまから老後のことなんか考えてられるか。
そもそもレジェンド・ランクになって遊んで暮らす、という初期プランから問題があったよな。
レジェンド・ランクに至る前に、命がいくらあっても足りない問題が。
さて。
休みは三日間しかない。この三日間を有効利用しよう。
エンジョイ・ライフでいくのだ。
一日目。
寝てすごした。
疲れがたまっていたんで。
聖都グルガでは、何度死にかけたことか。メンタルもすりへった。
二日目。
寝てすごした。
まだ疲れが取れないんで仕方ない。
だがもう元気溌剌だ。三日目こそ、勝負のとき。
ということで三日目。
意気揚々と娼館に向かったが、そのルート上で、またもスゥと遭遇した。
「なんで……なんで……また見回りしているのか?」
「え、違うよ。リッちゃんの家にいこうと思っていたんだけど。たまには美味しい手料理をご馳走してあげようと思ってね。だけど、何か用事だった?」
「………………いや、散歩してただけ」
三日目。スゥの手料理をいただく。
これがエンジョイ・ライフというものだ。たぷんな。
で、四日目の朝には、出発。
まずは冒険者ギルド本部で、ディーンからクエスト内容を詳しく聞く。
前回と同じ流れだな。
今回で終わりにしてほしいが。
「ギルマス。また世界を救え、という話ですか。とはいえ、聖都でも世界を救ったほどの活躍はしてませんけども」
「謙遜することはないよ、リク。〈封魔〉スキルがハーフ・ディアブロの手に落ちる瀬戸際だったんだ。少なくとも、このアーゾ大陸は救ったといえる。そして人類はこの大陸のみ暮らしており、われわれの『世界』の定義が人類生活圏だとするなら、君とスゥ君は『世界を救った』と言っても、言い過ぎではない」
「はぁ……」
おれはスゥに耳打ちした。
「世界を救ったんなら、一気にアレキサンドライト・ランクに上げてくれても良かったのにな?」
スゥはおれの言葉は無視して、ギルマスに尋ねる。
「それでギルドマスター、今回のクエストを教えてください?」
幼馴染が、仕事する気満々すぎて怖い。
スゥよ。やりがい搾取という言葉があってだなぁ……。




