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40/115

40,移譲完了。

 

 グウェンの説明では、ガーディアンを撃破したことで、この古神殿の『管理者権限』を会得したのだとか。


「おれたちが?」


「厳密には、ガーディアンを明確に破壊した人が」


「じゃ、スゥ。お前だな」


「え、そう? えへへ、そうなんだぁ~」


 と、なぜか照れ笑いするスゥ。


「えーと。グウェンさん。それで、わたしはどうすればいいの?」


「そこの石板をはめたところに行って。そうそう。そこに管理者権限を持つ者だけがアクセスできる魔端末がある。魔端末というのは──そうそう、それのこと」


 グウェンの指示のもと、スゥがおろおろしながら作業を進める。

 レオナルドが固唾をのんで見守っている。


 少し離れたところで、フライアがどうでもよさそうにしてやはり見守っていた。

 おれはそちらに歩を運んで。


「あんたの弟は、とても心配していたんだ」


「分かってる。レオナルドには申し訳ないことをしたと思っている。だけど、人類の罪は事実。わたしたちの先祖は、ハーフ・ディアブロを駆逐してしまった」


 どうもフライアには確信があるらしい。

 親の罪は子に、というが。

 さすがに何十世代も前の、先祖の罪まで償いたくはないね。おれは。


「……フライアさん。あんたは極端なんだよ。いまさらハーフ・ディアブロにすべてを返すことはできない。だが、もしかしたら共存はできるかも。その橋渡し役に、あんたがなることもできる」


 フライアが奇妙な眼差しを向けてくる。


「人類とハーフ・ディアブロの共存? そんなことが可能だと思う?」


「……あんまり思わない」


 だからといって、殺しあうことはないと思うが。

 おれは争いは好まない性格だし。


「神聖聖女さん。こっちに来て」


 と、魔端末のところから、グウェンが手招きする。

 少しは慣れた様子で、スゥが魔端末を操作していた。


 フライアと一緒に、おれも近づく。

 レオナルドは少し距離を取って、緊張の様子。


 グウェンが、魔端末からツタのようなものを引っ張り出す。


「このマジック・ワイヤを人体に接続するよ。あ、大丈夫。少し痛いだけ」


 マジック・ワイヤというものを近づけると、いきなり生き物のように動き、フライアの皮膚の下にもぐりこんだ。


 フライアが悲鳴を上げる。


 おれは非難の眼差しを、グウエンに向けて。


「少し、痛いだって?」


「うーん。かなり痛かったみたいだね。ま、死なないから大丈夫でしょ」


 大丈夫の基準が緩いな。


 ふいにマジック・ワイヤの接続が解除され、皮膚下から抜ける。

 よろめいたフライアを、駆けつけたレオナルドが抱きかかえた。


「姉さん、大丈夫か!」


 グウェンは満足そうにうなずく。


「これで〈封魔〉スキルは、この石板内にひとまず移譲されたよ。あとはこの石板で、次なる神聖聖女に〈封魔〉スキルを移譲するだけ」


 そう言ってグウェンが、はめこまれていた石板を取り外す。

 この石板、ただの起動キーだけでなく、〈封魔〉スキルの移し先にもなったのか。


 おれは、グウェンが右手に持つ石板を見据えた。

 それから片手を差し出す。


「グウェン。その石板、おれが預かっておこうか」


「キミが? そうだね。預かってもらおうか」


 グウェンはなんら抵抗を示すこともなく、石板をおれに渡した。


「……どうも」


「いえ、いえ。じゃ、アタシは先に聖都に戻っているね」


 使命を終えたとばかり、グウェンが軽やかな足取りで去っていく。

 その後ろ姿を見送ってから、どうやらおれの考えすぎだったようだ、と反省した。


 ふと見ると、スゥが、自分の顔の前で手を払っている。

 なんとなく、飛んでいる虫を払うような仕草。ただしここに虫はいない。


「なにしているんだ、お前?」


「ねぇ、リッちゃん。さっきから、変なのが見えるんだよね。なんなんだろ、これ?」


「幻覚でも見えているのか? さっきの戦いで、お前、頭でも打ったのか?」


 少し心配になったが、スゥは首を横に振った。


「頭を打ってはいないけどさ。この視界にうつるものは、なんだろう。あ、消えた」


「消えた? そももそ、お前だけ見えていたのか? 一体、何を?」


「メッセージ」


「メッセージ?」


「『管理者さまに〈封魔〉スキルの移譲が完了しました』ってさ」


「……」


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