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35/115

35,裏技だけどね。

 


 退散するときは手早く。


 スゥ、レオナルド、フライアを連れて、ハーフ・ディアブロの拠点を後にする。

 フライアも抵抗はしなかった。


 ただ撤退前にスゥが、


「まって、リッちゃん。凍結状態の妹弟子さん、忘れてない?」


「いや、まだ忘れてない。この聖都から出て、デゾンに戻ることができたら、忘れる予定」


「ここは敵拠点だよ? そんなところに、凍結状態で無防備のマイリーさんを置いていくのは、さすがに鬼畜すぎるんじゃない?」


「いや、ぜんぜん」


 相手がマイリーじゃなきゃ鬼畜だが。

 というか、相手がマイリーじゃなきゃ、凍結状態にしないし。

 死んじゃうからね、並みの人間が全身凍ったら。


 マイリーは常に、自身に『生存能力UP』バフをかけているので、問題ないが。


 というわけで、妹弟子は凍結放置で撤退。


 ちょっとした撤退戦──通路の先から数体のアサシン・タイプのハーフ・ディアブロが現れ、スゥが斬り捨てる──のちに、脱出。


 ハーフ・ディアブロの拠点のあるガル渓谷からも離れたところで、一息つく。


「で、これからどうする?」


 レオナルドが厳しい表情で言う。


「姉さんを評議会のもとに連れていくつもりだ」


「あー、レオナルド。お前、それ、姉さんを処刑台に連れていくぜ、と言っているのと同義だぞ?」


「姉さんはそれだけのことをしてしまったんだ」


 うすうすと分かってはいたが、この姉弟、なにごとも難しく考えすぎるところがそっくりだな。

 なぜに『姉さんを助けた、万歳』で終わらんのか。


「おれは、あんたの姉を処刑台直通させるために、わざわざ命をかけて救出したわけじゃないぞ」


「僕が喜んで姉を犠牲にしたいと思っているとでも? だが仕方ない。姉さんは、本当に自分の意志で、ハーフ・ディアブロたちのもとにいたようだ。〈封魔〉を解除したのも、姉さんの意志。そしてそれを再度発動するつもりがない以上は──人類のためを思えば、これ以外の道はない」


「〈封魔〉スキルだけ、ほかの者に移し替えればいいんじゃないか?」


「それができたら、僕もこんな決断はせずに済んだ。しかし女神の力である〈封魔〉スキルは、神聖聖女が命を落としてはじめて、次の者へと託されるんだ」


「うーむ、マジか」


 レオナルドが苦渋の選択をしたことは分かる。

 分かるが、なんともすっきりしない展開。


 一方のフライアは、自分の殻に閉じこもった様子で、少し距離を置いている。


 スゥが困った様子で言う。


「リッちゃん。そもそも、わたしたちの初期クエストって、なんだっけ?」


「ギルマスから与えられたクエスト? 神聖聖女に会ってこい、じゃなかったか。ま、会うには会ったよな。なにも解決した感じはしないが」


「じゃ次のクエストをあげる」


 と、いきなりそばから声がした。

 わっと、振り向くと、グウェンが当然のような顔で立っている。


「あんた、一体いつのまに──隠密スキルか何かか?」


 スゥも驚き顔なので、グウェンの接近に気付かなかったようだ。戦闘訓練を受けたスゥでも、か。

 グウェンが刺客じゃなくて良かったな。


「で、心臓に悪い登場をして、何のようだ?」


「キミたち、悩んでいるようだね。そっちの神聖聖女のことで。じゃ、アタシからプレゼントをあげちゃう。キミたちの悩みを解決する方法を」


「どんな?」


「〈封魔〉スキルを、別の人へと移す方法。もちろん、そこのフライアさんは、生きたままでね」


「そんな方法があるのか?」


 グウェンは悪戯っぽく微笑んだ。


「裏技だけどね」


 で、なんでそんなこと知ってるんだ、この人。

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