31,7層の速さで。
マイリーの動きが、さらに速くなる。
いまので、行動速度UPのバフ重ねがけが、5層くらいか。
ハーフ・ディアブロたちは、すでにマイリーの神速についていけない。
そして刀が振るわれるたび、致命的な肉体切断となっていく。
ただし、一撃で屠れるのは、アサシン・タイプのみ。
ちらほらいるバーバリアン・タイプは防御力が高く、マイリーの斬撃では致命傷とはならない。
ただし斬撃さえあてれば、的確に、第十一の型【弾けとぶときもある】が発動。
爆裂傷デバフを付与していく。
爆裂傷は、持続ダメージデバフ。
ただほとんどのバーバリアン・タイプは、一度目の爆裂傷ダメージのタイミングで、バラバラになっていった。
マイリーの刀に埋め込んだ発動準備中のデバフは、オート発動。
ようは必要なデバフを、必要なときに付与していく。
このオート機能、おれが作成したものではある。
が、マイリーの性格にも影響を受けているな。
たとえばスゥも、敵ならば容赦はしないが、とはいえ凍結デバフあたりを好みそうだから。
あそこまで盛大に敵がバラバラというのは──マイリーらしい。
とはいえ、この戦い、おれのデバフは脇役。
主役は、いまや速度UPバフ7層に至り、黒い影程度にしか目視できなくなったマイリー。
このマイリーの黒い影が駆け抜けると、ハーフ・ディアブロたちが無残に斬り殺されていくわけだ。
となりで眺めていたスゥが、溜息をついた。
「リッちゃん。リッちゃんの妹弟子さん、ちょっと強すぎるんだけど?」
「うーむ、そうだな」
しかもマイリーの奴、おれたちが見ているものだからと、かなり手の内を隠しているな。
そもそも、あいつが全力でやれば、デバフ付与の助太刀がなくとも、無双できただろうに。
マイリーがとまる。
ハーフ・ディアブロの死屍累々を見回し、物足りなさそうな顔。
それに応えるかのように、大空洞の別の接続口から、わらわらとハーフ・ディアブロたちの第二波。
スゥが声をあげた。
「あ、まだまだ洞窟内には、ハーフ・ディアブロがいるようだね!」
しかし、最も脅威であるウォーロック・タイプが出てこない。
ほとんどがアサシン・タイプで、ちらほらバーバリアン・タイプがいるだけだ。
ウォーロック・タイプは、全体からして数が少ないのか?
「よし。スゥ、レオナルド。いまのうちにおれたちは移動するぞ。マイリーにはこのまま陽動役として機能してもらうとしよう」
「え、置いていくの?」
「レオナルドの姉さんを保護するにあたり、マイリーがその場にいないにこしたことがない。こっちに枝分かれしている道がある。こっちから先に行こう」
しばらく進むと、また変なところに出た。
それなりに広い空間。
マイリーが暴れている大空洞に比べると手狭だが、それでも標準の酒場くらいの広さはあるな。
さらに前方には、祭壇がある。
ルシファーを祭っているようだ。
この祭壇の近くで、人間の女が一人、難しい表情で座っている。
その近くには、二体のハーフ・ディアブロ。
魔杖を装備していることから、二体ともウォーロック・タイプなのは間違いない。
……え、ここに大物が二体もいるのか?
まだ気づかれていないので、回れ右しておく?
ただこの案は、すぐに却下することになった。
レオナルドが、
「姉さん!」
と声をあげたので。
まぁ、だろうなぁ。
あの女が神聖聖女だと思ったよ。
「サボることをサボるなという師匠の教えとは、程遠いところにきてしまった感」




