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30/115

30,相性がいいのでは。

 

 スゥは、先ほどの隠し穴をのぞき込んだ。


 それから、「鼻がもげる!」と飛び跳ねて、ごろごろ苦しそうに転がりだす。


 あー。ここ、トイレか。

 待ち伏せされていたとかではなく、ちょうどトイレ中のハーフ・ディアブロが、『オイラがくそしている間に、外に敵がきている』とか思ったわけか。


 これは互いにタイミングが悪かったな。


 おれはレオナルドに声をかけた。


「レオナルド。あんたの姉さんはいそうか?」


 この位置からならば、大空洞の様子をよく観察することができる。ただしハーフ・ディアブロの中には、フードをかぶっている者もいるので、確認作業も面倒だが。


 しばらくして、レオナルドは首を横に振った。


「ここには姉さんはいないようだ」


「そうか。にしても、こいつら、何が嬉しくて、ここに集まっているんだろうな?」


 100体近くも集まっているのだから、何か目的があるのだろう。


 ふいにスゥが真面目な顔で言った。


「リッちゃん。もしかしたら──フラッシュモブの練習かもしれないよ」


「……あー、それはないと思うぞ」


「そうかなぁ。いい推理だと思ったのに」


 マイリーが、スゥを唖然として見てから──こいつを唖然とさせるとは、さすがおれの幼馴染──気を取り直した様子で、おれに言った。


「リク。そっちから条件を出すことを許してあげる。あたし、優しいとは思わない?」


「どうだかな。こっちの条件は、神聖聖女の身柄をこちらに渡すことだ。傷つけることなく、な」


「あぁ、そっちのあんたの姉だものね。レオナルド、聖都軍が、『裏切り者』の弟であるあんたを追放しなかったのは、姉があなたに接触してくるかもと泳がせていたからよ」


 レオナルドは表情を変えずに答えた。


「そんなことは承知している。そして残念ながら、姉さんは一度も接触してはこなかった」


 どうでもいいけど、と言って、マイリーはこちらに視線を戻してきた。


「いいわ、リク。あんたの条件を受け入れてあげる。神聖聖女がいたら、その女の身柄は渡すわ」


 とりあえず、信じていいだろう。

 マイリーは悪辣な性格だが、とはいえ嘘は好かない。だいたいにおいては……。


「じゃ、そっちの条件は?」


 マイリーは刀を突きだすように、こちらに向ける。


「言うまでもないでしょう」


 つまり、刀に『デバフ発動準備』をかけろ、ということだ。

 もちろん出し惜しみなしに、ありったけ。


「まてよ。ハーフ・ディアブロだからといって、必ずしも悪とは限らないだろ」


「善悪は神が決めることだけど。あれは人間の敵というのは、間違いないでしょ。ほら、そこ」


 大空洞の隅っこを指さすマイリー。

 そこにはバラバラにされた人間の死体が山積みにされていた。


「……まぁ、そうみたいだな」


 デバフ殺法を起動し、『発動準備』状態のデバフを、マイリーの刀身に付与する。

 これで『物理攻撃』を発動条件として、次々と敵にデバフが付与されていくだろう。


 ふと見ると、スゥが涙目でこちらを見ていた。


「あぁ、リッちゃんが、わたしの剣以外に能力付与をしている……寝取られた気分っ!」


 マイリーが、引き気味で言う。


「リク。あんたの相棒、頭、大丈夫?」


「……たぶん」


 準備を終えると、マイリーは何も言わずに跳躍。

 大空間へと躍り出た。


「まて、僕も同行しよう」


 と、自らも出ようとするレオナルドを、おれは止めた。


「まて、いま下手にマイリーについていくと、巻き添えをくうぞ。あいつは、ソロが好きなんだよ」


 ハーフ・ディアブロたちが侵入者に気付く前に、10体ほど斬り殺されていた。


 デバフとバフの違いは、その効力だけではない。

 バフにあってデバフにないもの。


 バフは重ねがけができる。


 マイリーが自らに付与した、行動速度UPのバフ。

 それはすでに3層に重ねがけされている。

 この状態でも、すでに目で追うのは難しい神速。さらに重ねがけは可能で、最大10層可能だという話。


 だがマイリーの斬撃は、巨体のハーフ・ディアブロによって受け止められる。

 バーバリアン・タイプか。

 いくら速くとも、一撃の威力が足りなかったか。


 バフは、元の能力を上げるのがほとんどなので、パワータイプではないマイリーには、破壊力不足の弱点がある。


 瞬間。巨体のハーフ・ディアブロが、粉々に吹き飛んだ。


 デバフ殺法:第十一の型【弾けとぶときもある】が発動、敵に付与したのだ。

 そのデバフ効力は、爆裂傷の付与。


 付与された対象は、爆裂を余儀なくされる。


「デバフとバフの相性の良さ、だな」

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