表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

29/115

29,タンク。

 


 レオナルドはマイリーから距離を取りつつ、おれにうなずきかけた。


「落ち合うポイントに行けずすまない」


「ハーフ・ディアブロたちに捕まっていたのか?」


「いや、そうじゃない。君とわかれてから聖都から山小屋に向かう途中、尾行の存在に気付いた。だから逆に捕えようとしたのだが、逃げられてしまったんだ。ただし追跡はでき、この洞窟までたどり着いた。ところが洞窟に入ったとたん、出入り口をふさがれてしまってね。どうやら、ここにおびき寄せる罠だったようだ」


 レオナルドが尾行されていたということは、その時点で、隠れ家であるあの山小屋も、ハーフ・ディアブロたちに暴かれていたというわけか。


「ハーフ・ディアブロのもとに神聖聖女、つまりあんたの姉さんがいるのなら、悪くない展開だな。あんたはおびき出されたのかもしれないが、まだ無事だ。そして、おれたちも合流した。あんたの姉さんを助け出し、ハーフ・ディアブロどもを撃退するとしよう」


 あぁ、なんか仕事熱心の人みたいな発言をしてしまった。

 しかし、時には熱心に働くことが、早くにサボることにつながることもあるのだ。


 マイリーの幸運バフはまだ健在のようで、迷いのない足取りで進んでいく。


 その後ろを見ながら、おれは幸運バフの弱点を思い出していた。

 それはどんなバフにもある時間制限。


 幸運バフの継続時間がどれくらいかは、詳しくは知らない。

 師匠のところにいたときから、おれに手の内をあかしたがらなかったからな。


 ただバフというのは、連続して付与できないものも多い。

 幸運バフもそのひとつに違いない。つまり、幸運バフが切れたとき、この洞窟での戦いでは、再度発動できないかもしれないわけだ。


 うーむ。幸運バフ付きのマイリーだったら、全てすっかり任せきりにできたのだがなぁ。


 しばらくしてレオナルドが、マイリーの背中を示しながら言った。


「彼女と知り合いなのか?」


 妹弟子という説明は、別の機会にしよう。


「そういうあんたは、マイリーを知っているのか?」


「もちろんだ。彼女はコア機関の〈四鴈〉の一人だ。ここ半年ほど姿を消していたが、また戻ってきた。血も涙もない女だよ」


〈四鴈〉。四天王みたいなものか。

 しかもマイリーは、師匠のもとでバフスキルを会得する前から、その一角を担う実力者だったようだ。つまり、刀の腕だけで。


 スゥが顔を赤らめて、おれに囁いてきた。


「リッちゃん、リッちゃん。わたし、四天王とかに憧れがあるんだよね」


 いまはお前の、そんな憧れの話はどうでもいいぞ、マジで。


「レオナルド。いい知らせと、悪い知らせがある。マイリーはいま、限定的におれたちの味方だ。ただし、マイリーはいまも、あんたの姉さんを裏切りものとして討とうとしている」


「姉さんのことは、僕が守る。ただハーフ・ディアブロたちと戦うにあたったの戦力となるなら、有難い」


 やがておれたちは、開けた場所に出た。

 大空洞の、高さ20メートル程度にある接続口に出たのだ。


 岩陰から大空洞内の様子をうかがう。

 これまで一体たりとも見なかったハーフ・ディアブロが、ここには100体近くいる。

 一体一体の戦闘力がゴブリンとは比べものにならないのに、この数とは。


「おい、マイリー。おれたち、連携しないと。分かってるのか、連携だぞ。デバフとバフが織りなす」


「うるさいわね。あんたと連携なんて冗談じゃないわ。デバッファーとバッファーは、分かりあえない宿命なの。了解?」


「いや了解じゃ、な──」


 ふいに床があいて、ハーフ・ディアブロが飛び出してきた。

 どうやらアサシンタイプらしい。


 しかし、突然の登場。床に隠し穴があったとは。


 このハーフ・ディアブロが標的にしたのは、最も近くにいたおれだった。

 短剣を振り下ろしてくる。


「あーーー、やば」


 不意打ちすぎて、どのデバフを使うか思いつかない。


 瞬間。レオナルドが割って入り、右ひじに展開したマナ・シールドで、短剣を弾いた。


 バランスを崩したハーフ・ディアブロの首を、スゥが刎ねる。


 レオナルドが振り返る。


「無事か?」


「おかげさんで。あんた、タンク役だったのか。実に、ありがたい」


 これで、アタッカー(スゥ)、デバッファー(おれ)、バッファー(マイリー)、タンク(レオナルド)が、そろった。


 バランス最高すぎないか? ヒーラーはいないけど。


 だた問題としては──パーティとして結束力は微妙ということかね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ