27,拠点入口。
マイリーの協力のもと、さくさくと聖都を出ることができた。
そのままガル渓谷に向かう。
疑惑が正しかったら、このガル渓谷は、聖都軍、コア機関、どちらの勢力も調査していない。
ハーフ・ディアブロの拠点があるとしたら、この渓谷かもしれない。
ひとまずマイリーが『限定仲間』になったのは、良い材料とみていいんだよなぁ。
ところでスゥは、根が単純だからか、『限定仲間』となったことで、マイリーと打ち解けようとしている。
「リッちゃんって、夜寝るとき歯ぎしりするって、本当?」
「……あんた、まとわりついてこないでくれる?」
共通のネタがおれしかいないからって、やめてほしいんだが。
会話が聞こえてくるし。
ガル渓谷に到着。
少なくとも渓谷入口から見たところ、ハーフ・ディアブロも魔物の気配もない。よくある渓谷。
「やっぱり、何もないみたいだね」
と、スゥが落胆した様子で言う。
「あのな。仮に拠点があったら、パッと見で分かるようにはできていないだろ」
何か見落としがないよう、三人で目を光らせつつ進んでいく。
やがて、巨大な橙色の水晶体が見えてきた。トロールくらいの大きさがある。
マイリーが、そうせざるにはいられないという様子で、刀で斬りつける。
しかし水晶体はびくともしない。
スゥが「ふっふっふっ」と笑いながら。
「そういうパワー勝負なら、わたしの戦剣〈荒牙〉の出番だよ。いっくよ! 必殺〈回転斬り〉!」
だがスゥの戦剣でも、削りとることもできない。
これで自信を失ったらしく、スゥはしゅんとした。
「破壊不能なのだろうか?」
マイリーが腕組みして、自説を述べる。
「特定の破壊方法があるのかも。少なくとも、物理攻撃じゃないわね」
仮にこの水晶が、人工的なものだとする。
そしてハーフ・ディアブロの拠点入口をふさいでいるのだとしたら?
破壊するための特定方法が魔法とかだと、ここで詰むんだが。
「いくつかデバフを付与してみるか」
デバフ殺法の状態異常系を、片っ端から付与してみる。
とはいえ、これはダメ元もダメ元だが。
ふいに水晶体が明滅しだす。
これ、爆発するんじゃないか?
と、不安に思ったとき、マイリーだけが身軽に跳んで、安全圏まで避難しているのが目に入った。
スゥが驚きの声で、
「え、爆発するの? 爆発するの?」
「あー、どうだろ?」
爆発は杞憂で、水晶体は消えただけだった。
そして、洞窟の入口が現れる。手の込んだ水晶体の塞ぎかたといい、これがハーフ・ディアブロの拠点入口であることは、間違いない。
マイリーが戻ってきて、
「いま、なにをしたの、あんた?」
「第七の型【ビリビリしているのだね】。感電状態を付与するデバフだよ」
「感電状態。百雷を操るスキル持ちを聞いたことがあるけど、そうそういないものね。一方、魔術師なら雷属性魔法を使うのも簡単なんでしょう。だから感電状態にすると消滅する水晶体を使ったわけね」
「ここにデバフ使いがくるとは思いもしなかった、というわけだな。どうだ、マイリー? お前に真似できるか?」
「っさいわね。とっとと行くわよ」




