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23,情報って大事。

 


 待ち伏せしていた刺客は、この三人だけだったようだ。


 ところで毒死した刺客も含め、顔の上半分を隠すように覆面をしている。

 アサシンなのだから、顔は隠したいだろうが。


「ふむ、顔を見てやろう」


 覆面をはぎとると、不可解な顔が出てきた。人間に似てはいるが、微妙に異なる。白目が黒い眼や、額の切断された角、鋭利な耳。


 スゥが驚きの声をあげる。


「あ、リッちゃん。この刺客、エルフじゃない?」


「これがエルフに見えるか? 違うだろ。しかし異種人であることは確かだな。というか、エルフとドワーフしか知らないが」


 さらにいえば、そのドワーフとエルフも、じかに会ったことはないし。


 ほかの二体の刺客も、同じ異種人だった。


「いよいよ訳がわからなくなってきたな」


「で、ここからどうするの、リッちゃん?」


「おれ? おれが考えるのか? スゥは冒険者歴が長いだろ。おれなんか、解雇されていたんだぞ」


 スゥは決意の眼差しでうなずいた。


「分かったよ、リッちゃん。わたしが考える。よし、まずはコア機関に突撃しよう! 細かいことは考えても仕方ないからね!」


 しまった。こいつ、ただの天然アホな脳筋思考だった。一番最悪な組み合わせ。


「……分かった。おれが考える。お前はちょっと、そこで寝ていろ」


「いえっさー」


 この山小屋に待ち伏せがあったということは、考えられることは二つに一つ。


 まずレオナルドが裏切った可能性。

 しかし、それならもっと早くに、おれを殺すこともできたはずでは?


 ただ別行動してから、向こうの事情が変わったとも考えられるか。


 とはいえ、どちらかといえば、レオナルドも敵の手に落ちた、と考えたほうが自然か。

 で、敵とは誰か? 聖都にある勢力は、聖都軍とコア機関。

 さらに第三勢力が潜んでいるのか?


「情報が足りない。こういうときは、情報を入手しにいくしかないな」


「当てがあるの?」


「あるには、ある」


 聖都に戻ることにした。

 ただお尋ねものの身。しかもコア機関のマイリーまで追手にいるので、注意を払わないとな。


 ちょうど遠くの都市から来たキャラバンの一行が聖都を目指していたので、その団体の後ろから、無害な旅人のフリしてついていく。

 で、ちょっと世間話なんかをして、交流する。


 そのまま聖都に入り、そこの門衛にはキャラバンの仲間に見えるように振る舞った。


 無事、聖都入りしたところで、お次は東区域に行く。

 そこの冒険者出張所が、目的地。


「ギルマスのディーン直々のクエストなんだ。ここの冒険者にも協力してもらうとしよう」


 ところが冒険者出張所があると聞いた場所は、雑貨屋だった。


「リッちゃん。間違えたんじゃないの?」


「いや間違えたはずがないんだが」


 雑貨屋の奥から、小柄な少女が出てくる。濃緑色の髪をハイポニーテールにしている。

 やけに衣服を着崩していて、首にタトゥーをいれていた。

 子供体型に近いが、もう成人しているらしい。


 また腰にはクナイを装備していた。

 どうやら雑貨屋は表の顔で、ここが冒険者出張所で間違いがないらしい。


「騒がしいな、お客さん?」


「違う。あんたの同業者だよ。ギルドマスターのクエストで、はるばるやって来た」


「あぁー、はいはい。聖都入りして早々、お尋ねものにされた無能さんたちか」


 スゥが腕組みしてムッとする。


「もう、言い返せないけど、もうっ!」


 とりあえず自己紹介しておくか。


「おれはリク。こっちはスゥだ。ギルドマスターのディーンの命令で来たんだから、ちょっとは協力してくれよ」


「ふーん。わたしはグウェン。ここ何年かは、この聖都で出張所を運営しているよ。ちなみに冒険者ランクは〈アレキサンドライト〉」


「あっ、リッちゃん。この人、メチャクチャランクが高いよっ!」


「お前はちょっと黙ってろ。グウェンさん。あんたには情報を求めたい。とりあえず、これについて、何かあるか?」


 おれは抱えていた小樽を、雑貨屋の床に置いた。

 この小樽は、キャラバンから買ったものだ。


 グウェンがつまらなさそうに言う。


「何が入ってるの?」


「ぬか漬け──な、わけがないよな」


 蓋をあけて、刺客の生首を見せた。


 いきなりの生首にも驚いた様子は見せず、だたし興味は示して、グウェンが言う。


「へぇ。これ、ハーフ・ディアブロじゃん」


「え……」


 おれが絶句している横で、スゥが腕組みして言う。


「ディアブロって悪魔のことだよね。すると、これって半分悪魔、半分人間ってこと……わたし、大物を殺したんだねぇ。すごい!」


 脳筋って幸せだよな。


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