表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

18/115

18,脱獄計画。

 

 聖都は中心にある神塔。

 さらに東西南北の四つの区域で分かれている。


 で、聖都軍が管理する収容所は、南区域にあった。

 この収容所内に、スゥは囚われの身、なのだと。


 その収容所を観察できる建物の一室に、おれとレオナルドはいた。


 数刻前まで身を隠すのに使っていたのは、聖都の郊外にある山小屋。

 そこから、いわば敵地と化した聖都に戻ってきたわけだ。


 ちなみに、いまおれたちがいる部屋は、レオナルドが偽の身分で借りているのだとか。

 だから追手がここにたどり着く心配はない、ということらしい。


 ようは隠れ家を、聖都軍の施設の目の前に用意していたと。

 大胆不敵というかなんというか。おかげで、収容所の様子を見ることはできたが。


「なぜおれはコア機関とやらに引き渡されるはずだったのに、スゥはあんたらの軍の収容所に?」


「取引があったからだ。まず君たちの正体については、何ものかの通報が事前にあった。神聖聖女と関係のあるよそ者が、聖都入りすると。

 そのよそ者が、男女のペアだとも。それで聖都軍とコア機関は、片方ずつ身柄を取り、尋問するという話になった」


「通報が? こっちの動きは知られていたのかぁ。それが、おれの葡萄酒に薬を盛った奴かもしれないな」


 にしても、いまの話からしても、聖都軍とコア機関の仲は悪いらしいな。

 ま、似たような性格の組織が都市に二つあれば、何かと競い合うのはおかしなことでもないが。

 面倒なことだなー。


「ところで神聖聖女、つまり、あんたの姉さんの名前は?」


「フライアだ」


「そうか」


 はたして、おれはフライアと会うことがあるのだろうか。

 とりあえず、スゥの脱獄作戦に失敗したら、そんな心配もせずに済む。


「レオナルド。あんたはスゥを脱獄させるのに同行しないほうがいいだろう。これ以上、聖都軍との関係をこじらせないほうがいい。まぁ、おれが失敗したら、ギルマスに『呪ってやる』と伝えてくれ」


 レオナルドが怪訝そうな顔をする。


「……すると、君は呪術師なのか?」


「はぁ? いや、そうじゃなくて──まぁ、いいや。じゃ。あぁそうそう、落ち合う場所を決めておこう。追われている場合、この隠れ家に戻ってくるわけにもいかないしな」


 ということで、再度、聖都郊外にある山小屋を落ち合う場所とした。


 おれは隠れ家を出て、ぐるっと迂回してから、収容所の後ろに回る。

 高い塀がある。はい、登れない。


 ふむ。デバフ付与スキルって、こんなときにも応用は利くのだろうか。

 いろいろと考えたが無理そうなので、正面に戻ることにした。


 警備の聖都兵が二名配置されている。

 おれはテンポの速い足取りで向かっていく。


 すると兵側が、


「おい、まて止まれ。この施設に用があるのならば、まずはそこで身分を名乗れ」


「おたくたちが探している指名手配人」


 ここで秘密道具の登場──小型のビー玉発射器。

 まぁたいしたものではない。空気圧でビー玉を効率よく飛ばすだけで。


「なんだ、お前、そこで腹ばいになれ!」


 こちらが武器を取り出したので、向こうも剣を抜いて応戦しようとする。

 ビー玉の連射で、二人ともヒットさせる。


 デバフ殺法:第五の型【昼下がりの温もり】。行動阻害系の睡眠デバフ。すぐさま二人ともぐぅすか眠りだした。


 爆睡中の警備兵が発見されるのも時間の問題。

 ここからは、巻きでいくとしよう。


 駆けていき、収容所内に飛び込む。

 あいにくレオナルドも、収容所内のどこにスゥがいるかは不明とのこと。


 誰かに聞くか。


 はじめに遭遇した兵士の左足に、ビー玉を射出。


 第四の型【冷たいものは冷たい】。効力は、凍結状態。

 これを限定的に発動した。


 そのため、その兵士の左足だけが凍結する。


「うわぁぁぁ、なんだこれはぁぁぁ!!」


「落ち着け。大丈夫だ。ちゃんと解除してやるから。いいか、よそ者の少女を、ここに捕らえているはず。どこの部屋に収容しているのか教えてくれたら、解除してやる」


「そ、それは、いまは第四尋問室にいるはずだ。さぁ、はやくこの氷をどうにかしてくれぇぇぇ!!」


 おれはその兵を【昼下がりの温もり】で眠らせてから、凍結デバフを解除した。

 あいにく凍傷は免れそうにないが、まぁ、軍なんだから良いヒーラーがいるだろ。


「第四尋問室。上か」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ