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13,ナイトメアモードかぁ。

 

「あれ。もしかして、おれは師匠に身売りされたのでは」


 ディーンが慰めたいのか、からかいたいのか知らないことを言ってきた。


「前向きに考えてみるといい。君は世界を救うための力を得たのだ。そして冒険者として貢献すれば、年若くレジェンドの地位につき、あとはEASYな人生を送ることができる。ただそこに至るまでが、ナイトメアモードというだけのことで」


「ナイトメア? なんですそれ、初耳?」


「ハードモードのひとつ上」


 HARDモードでも河に飛び込みたいのに?

 なんか話が違うんじゃないのかね。


「すみません辞職します。これからは魚屋で働くことにするので、新鮮なアジとか差し入れしますよ」


 一瞬だけ、本気で転職プランも考えた。

 しかし結局のところ、それは白日夢のようなものだ。


 真昼に見る、『こうなったらいいなぁ』の夢。


〈暗闇荒地〉にいたとき、師匠がこんなことを話していたのを、嫌々ながら思い出した。


 ──「大昔は、デバフというのは、もっと一般的だったそうだよ。ところが、何かが起きて、デバフ付与能力は失われた。

 少なくとも、アクティブにデバフを付与する力はね。


 いまだって、副次的なデバフは存在する。氷結スキルを持つ者が敵を凍らせれば、それは凍結デバフと似たようなものになる。

 もっと簡単な話、敵に油をぶちまけて着火して燃やせば、燃焼デバフと似たものになる。ただし、それは『似たようもの』の枠を出ない。


 分かるかな、我が弟子。デバフ付与の真髄というもの。

 それは、燃えるはずがない敵にも燃焼させ、凍るはずがない敵にも凍結を付与する。


 神速のものを亀のように鈍くさせ、神の武器を装備する者から、その装備品を奪い取る。

 相手が魔王だとしても弱体化させることができるのが、真のデバフというもの。


 そして、この『デバフ付与スキル』。

 あなたが名付けたところのデバフ殺法は、誰もが会得できるものではないのだね、これが。


 わたしは、『何か』に選ばれた。で、あなたも何かに選ばれたのでしょう。

 なにもあなたがサボりたそうにしていたから、弟子にとったわけじゃないよ。

 ま、それも理由だけど。あなたが働き者だったら、わたしはスルーしていたね。


 ただ何より、あなたにもまた素質が、天性のものがあった。『デバフ付与スキル』を会得できる、選ばれた者なのだ!

 テンション上がった? え、下がったの? ははあ。さすが、わが弟子」


 ということを。


「あー。魚屋になるわけには、いかなそうだ。いろいろと選ばれてしまったので。無念」


「そのようだね……では本題に入ろう。いや、リク、そして相棒のスゥ。まずは休むといい。君たちは、デゾンを守った。どの冒険者にもできなかったことだ。その栄誉は、君たちのものだ」


「とりあえず、ボーナス、出ます?」


 おれは諦めることを知らないのだ。こういうことは。



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