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109/115

109,支配悪魔。

 


 エンマをゴミ箱から引きずり出してから、おれは傭兵ベルナルドに言った。


「あんたも、ここで待機していてくれ」


「いや、おれも都市クオの傭兵だ。すべて他人任せにはできない。同行し、力になろう」


「傭兵としてのあんたの力を疑っているわけではない……」


 いまのところ、あまり戦力として当てにならなそう、というのは本音だが。

 マイリーならば、多少の戦闘力を持っている者ならば、バフ付与で強化できるのだがな。

 

 おれは、その手のことは無理なので。

 続ける。


「……だが、おれたちが死んだ場合、誰かがこの『異なる位相世界』のことを、もとの世界に伝えなければならない。神話級の魔物どころか、悪魔まで集まっているんだ。奴らの目的が何かは分からないが、放っておくわけにはいかない」


 ベルナルドは頷いた。


「リスクを分散したい、ということか。どちらかが全滅しても、もう一方が、元の世界に戻り、人類に伝えることができれば、と」


「そうだ。そこの棺桶屋で、おれたちは、この『異なる位相世界』に来た。もしかすると、時間がくれば自動で戻れるかもしれないし。だからこれを渡しておくよ」


〈キー〉をベルナルドに渡してから、おれ、スゥ、エンマ(不承不承)は、ラベンダーの先導で出発。


「もう少し情報を開示してもらいたいね、偽グウェンさん」とおれ。


 ラベンダーはにこやかに言う。


「アタシも、とある人の命令で、この『異なる位相世界』の現状を調べることになってね」


「調査対象は、つまり〈愉悦論の会〉だな? ふむ。おれたちも、ある男──ノーランという男を〈愉悦論の会〉が殺したという情報を得て、手がかり追って、ここまで来たわけだが」


「ふーん。誰情報で?」


 まぁ、これくらいなら情報を共有してもいいか。


「鴎騎士のスプリングからの情報だ」


「あーあ。まんまとハメられちゃって」


「ハメられた? なにを根拠に?」


「え、まだ読めてないの? この絡繰りが? もちろんスプリングは、キミたちがこの『異なる位相世界』に迷い込んで破滅するよう、そう仕組んだに決まっているじゃない。だとしても、いきなり〈キー〉を渡したら、さすがに怪しいからね。手がかりを撒いて、キミたちを誘導したわけだ。パンのくずだよ」


 と、腹が立つくらいに『え、まさかそんなことも分からない??』という顔で、そうラベンダーが言った。


「……スプリングは鴎騎士を裏切り、〈愉悦論の会〉に寝返った、とでも言いたいのか?」


「違うなぁ~。そもそも『鴎騎士団は善良であり〈愉悦論の会〉と敵対している』という前提が間違いでしょ」


「鴎騎士団そのものが、〈愉悦論の会〉に乗っ取られた、とでも言いたいのか?」


「えー。キミ、もっと頭がまわると思っていたのに。そんな単純な話じゃないでしょー」


 おれはスゥを見やって、ラベンダーを指さした。


「こいつ、嫌い」


 スゥが困った顔で肩をすくめた。


 おれはラベンダーに視線を戻した。


「……つまり、おまえが示唆しているのは、『組織名などは関係がない』ということか? 鴎騎士も〈愉悦論の会〉も、結局のところ、ただの名前でしない。ようは、どちらの勢力も、悪魔ルシファーのためにあり続ける、と?」


「へぇ。まずまずだね。だけど、なぜ二つも組織があるのか、その利便性にも目を向けてあげなくちゃ」


「……表と裏で動ける」


「正解~!」


 ラベンダーの言うことを、すべて鵜呑みにするつもりはないが。

 なんといっても、うちの冒険者グウェンを殺し、成りすましたうえ、なんの目的からか、スゥに〈封魔〉スキルを移譲させた女だからな。


 ただ、妙なところで辻褄があう説なのも、厄介なところ。

 この『異なる位相世界』から無事に脱出したら、うちの司令塔であるギルマスに、このことを伝えておくとしよう。


 ラベンダーが本題に移る。


「ところでキミたちは、オロガリア伯爵を見かけた? 馬の頭の」


「ああ、交戦した」


「そ。生きているということは、善戦したようだね。これなら、『位相の異なるヴィグ』を支配している悪魔を殺すのも、現実味が増してきたねー」


『位相の異なるヴィグ』の支配悪魔は、オロガリア伯爵ではないのか。

 すると消去法で、


「この『位相の異なるヴィグ』を支配しているのは、ルチアという悪魔だな? 少年だか少女だか分からない容姿の」


 だがどうやら違うようで。


「ルチアって。え。あのチート悪魔まで、ここにいるの?」


 何が嫌だって、このラベンダーでさえ、地味に顔が青ざめたこと。

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