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108/115

108,囚われ中の再会。

 


 ベルナルドたちを元に世界に戻してやるため、ひとまず棺桶屋に戻る。


 ここから戻れるのかハッキリさせておきたい、というのもあるし。


 棺桶屋に向かうと、その店前に、どうにも見慣れた少女が腰かけてあくびしていた。濃緑色の髪をハイポニーテールにした女が。

 おれたちを見やると、満面の笑みで駆けよってくる。


「この展開は予想外だ……」


 というおれの狼狽も無視して、


「やぁ、わが友たち! 元気してたかな、二人とも?」


 新たなる人物の登場に警戒していたエンマが、ホッとした様子で胸をなでおろす。


「リクさんとスゥさんのお友達でしたか」


 あいにく、この女は友達ではないんだよ。


 スゥがその意志を示して、偽グウェンへと剣を突きつける。


 偽グウェンは、やけに大袈裟な演技で傷心の顔をした。


「こら、こら。友情関係にひびが入るじゃないか、そんなことをしたら」


「何が友情関係だ。おまえ、本物のグウェンを殺しておいて。もちろん、このまま無事に解放されると思っちゃいないだろうな。冒険者ギルドの権限で、おまえを捕縛する」


 偽グウェンは、とくに驚いたふうでもなく、余裕をだしながら微笑む。


「面白いことを言うじゃないか。しかしリクくん、スゥさん。キミたちは、この『異なる位相世界』から、自力脱出する術はあるのかな? 行きはよいよい、帰りはなしだ。キミたちが自力脱出できるとは、思えないね」


 そもそも、なぜ偽グウェンはここにいるのか?

〈愉悦論の会〉の一員と考えるのが妥当なのかもしれないが、どうもそうではないように思える。

 この『異なる位相世界』においても、どうにも異質な存在だ。


「……そこの棺桶屋が出口のはずだ」


「ほう。じゃ、そこから元の世界に帰ってみなよ。さぁ、どうぞ」


 偽グウェンにうながされて、おれは棺桶屋に入った。

 棺が二つ、しかし子ザルの死体がなぜかなくなっている。


〈キー〉となるパズルのピースを取り出し、掌で転がしてみる。

『入口』となったときの眼が開かない。


「正しい時間に正しい場所にいて、このピース型の〈キー〉を所持していればいい」


「それは甘い考えだね。『行き』と同じ手順だと信じ込むのは、危険な思い込みじゃないかな?」


「……偽グウェン」


「ラベンダー」


「は?」


「アタシの名は、ラベンダー。はじめまして、よろしくー」


「ここから脱出する手順を知っているなら、話してもらおうか」


「その手順は簡単さ。それを聞きたいのかな?」


 さて、この偽物、どこまで信じられるのか。

 とくに信じられる要素がない……いや、ある条件のもとだと、少しだけ信用できるようになるが。


「おまえ、〈愉悦論の会〉の何を知っている? 一員ということじゃないんだろう?」


「質問にはひとつしか答えられないよ」


「……そうだな。まずおれが思うに、おまえも『脱出の手順』は知っているが、それを単独で行うことは難しいんじゃないか? だから、おれとスゥを利用したいのでは?」


 いいところを突いたようだが、偽グウェンあらためラベンダーは肩をすくめた。


「キミのデバフ付与スキルと、スゥさんの〈封魔〉スキルは、確かに頼りになるからね」


 スゥが〈封魔〉スキルをまったく使えないことを知らないのか?


 一考していると、ベルナルドが言ってきた。


「シーはもう限界だ。彼女を安全なところに避難させておきたい」

 

 仲間のシーを抱きかかえるようにして。シーに肉体的損傷はないが、立て続けに仲間を失い、精神的に立ち直れない様子。


「わたしも避難したいです! 凄く避難したいのです!」


 というエンマの戯言は無視し、おれは棺桶屋を示した。


「この中なら安全だろう。しばらくのあいだは──それでラベンダー。どうやって、この世界から出るんだ?」


「まず手順一として、この『異なる位相世界』の歓楽都市ヴィグを支配している、とある悪魔を殺す必要がある。その悪魔は、かのルシファー御大も信用を置く大物だよ」


 とりあえずエンマがゴミ箱を探したくなる気持ちは、分かるよ。



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