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107/115

107,前と、後。

 

「このおれを斃すだと? 身のほどを知らぬ愚かな人間どもが!」


 激高するオロガリア伯爵。

 だが、だいぶきつそうだ。


 現在、伯爵に付与されているデバフは。


 減速デバフが15層。

 凍結デバフが12層。

 燃焼デバフが10層。

 防御力低下デバフが25層。

 攻撃力低下デバフが5層。

 爆裂傷の持続ダメージが12層。


 さらにデバフを付与していけば、先ほど言ったように、ゴブリン並みに弱体化するのは時間の問題。


 戦闘ハイの勢いで、悪魔の伯爵を仕留めようとしたとき。


 どこからともなく、雪崩のようにネズミの群れが向かってくる。大量のネズミたちに、スゥが顔面蒼白でくるくる回転しだした。


「あわわわわわわわ、ネズミの大群だよぉぉぉ!!」


 あまたのネズミは、オロガリア伯爵のもとで集まり、人型の姿となった。

 無色透明な髪の少年(またはボーイッシュな少女)の姿に。


 だが明確に、右腕から〈ルシファーの鎖〉が伸びている。つまり、こいつもオロガリア伯爵と同じ悪魔ということだ。


 しかしいま、意図的にネズミを出したのだろうか?

 または、ただの偶然か。


 前者だと、こいつ、スゥの弱みを知っていたことになるが。

 事前に調べたとは思えない。何か能力で知ったか。


 オロガリア伯爵が、少年/少女の悪魔に言う。


「邪魔をするな、ルチア」


「いや、そうはいかないな、伯爵。君はいま、劣勢に立たされている。そして万が一にも、悪魔が人間に倒されるようなことはあってはならない。だから君は、撤退するんだよ」


「……いいだろう。人間、この勝負、預けておくぞ」


 ルチアという、いまだ性別不明(というより悪魔に性別はあるのか?)は、こちらに礼儀正しくお辞儀してから、ネズミの大群をまとって、伯爵ともども消えた。


「逃がしたか。ここで悪魔二体との戦いはさすがに厳しかったし。いっか」


 というか、なんでここ、悪魔が二体もいるんだ?

〈愉悦論の会〉のバックには、ルシファー勢力がいるということか。


 いやそもそも、悪魔と遭遇した人間なんて、何百年ぶりなんじゃないか?

 さすがにギルマスも、この報告には腰を抜かすことだろう……まぁ眉くらいは動かすだろ。


 先ほど睡眠デバフで眠らせたベルナルドとシーがやってくる。ようやく起きたらしい。


「一体なにが──あの馬の頭の怪物はどうしたんだ?」


「逃げた」


 ベルナルドが疑わしそうに言う。


「逃げた? まるで追い詰めていたかのような発言だな」


 地響きが起こり、近づいてくる。

 さっきも、オロガリア伯爵と遭遇する前に、こんなことがあったな。


 悪魔と戦う前に。


 おれは地響きの源を見なかったが、ベルナルドが悲鳴めいた声で言った。


「ヘ、ヘカトンケイルだと!! ダメだ! おれたちに、こんな化け物は倒せない!!」


 ちらっと見上げると、複数の頭部をもつ、80メートル級のヘカトンケイル。

 先ほど遠くから眺めたのと同じ個体か。


 今回、そのヘカトンケイルが言葉を発した。


「オマエタチ、人間ハ、オデ様ノ餌ニナル運命ダ」


 おれはかぶりを振って、


「知らん」


 ヘカトンケイル目掛けて、《デバフ・アロー》連射。


 凍結デバフを一気に50層まで畳みかけ、全身凍結させる。


 完全なる氷の彫刻となったヘカトンケイル。


 最後に、爆裂傷を付与。

 はじめの持続ダメージ発動で、80メートル級の異形の超大型魔物が、バラバラとなった。


「悪魔と戦ったあとだと、どんな魔物も雑魚すぎて仕方がないな」


 悪魔と遭遇の『前』と『後』では、戦闘観もだいぶ変わるようだ。

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