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106/115

106,デバフの怖さは、遅れてやってくるものだ。

 


 再度、スゥが接近戦を試みる。


 オロガリア伯爵には、第八の型【敵の攻撃は弱いにこしたことはない】が付与されている。

 このデバフ効果は、攻撃力の著しい低下。


 それでも、一撃をくらうだけで、人体は破壊されるようだ。


 ゆえにスゥは、すべての攻撃を回避しながら、オロガリア伯爵に斬撃を叩きこむ。


「虫けらごときが、焼け死ぬがいい!」


 オロガリア伯爵から、火炎が噴き出る。

 先ほどスゥは回避したが、その回避行動中に追撃を受けてしまった。


 今回、スゥは火炎に果敢に飛び込む。


「わたしはいま、覚醒中! 火炎の渦だって、わたしを止めることはできないよぉぉ!!」


 ……いや、それはさすがに運を天に任せすぎだろ。


 伯爵は嘲笑い。


「バカめ。これは悪魔族の獄炎術がひとつ。この一帯を燃やしつくす。すべて灰燼に帰るがいい!!」


 獄炎は広範囲攻撃ということか。このままでは、みなが巻き込まれる。

 あいにく、デバフには防御はない……まぁひとつ手はないでもないが……


 獄炎の広範囲攻撃が終わったとき、勝ち誇っていたオロガリア伯爵が不可解そうな顔をする。


「なんだ、これは?」


 何かといえば、氷の彫像。

 凍結デバフで、おれたち三人を凍らせ、獄炎攻撃を耐え抜いたのだ。


 まぁスキル発動者であるおれも凍結しているので、自力解除はできない。

 が、こんなときに便利な時限解除方法がある。


 解除された刹那、隙を見せていた伯爵に、スゥの必殺の〈回転斬り〉が入る。


 ついに第十の型【弱らせてなんぼ】が本格的に機能しだす。


 付与自体はすでにされていたが、ここにきてようやく、オロガリア伯爵に利いてくるほど、付与層が重ねられてきたのだ。


 オロガリア伯爵への『耐性の弱体化』デバフ。

 防御力の著しい低下。


 さらに同時に付与される第十一の型【弾けとぶときもある】。

 スゥの斬撃攻撃をトリガーとして、爆裂傷の持続ダメージが発生する。


 オロガリア伯爵の表皮を切り裂き、肉をえぐる。


「な、なんだと!!」


 人間に外傷を負わされたことは初めてらしく、驚愕する伯爵。


「ここから畳み込むよ!!」


 そこから追撃にかかろうとしたスゥに、ラミアが飛びかかる。


「この人間ごときが、あたしを忘れるじゃないよ!」


 そのラミアを、屈辱に顔を歪めたオロガリア伯爵が掴み、握りつぶす。


「……魔物ごときが、われの邪魔をするな」


 スゥはいったん距離を取って、おれのとなりに着地。


 オロガリア伯爵が、青い血を拭いながら言った。


「よかろう。貴様たち人間の底力は見せてもらった。いまばかりは、生かしておいてやろう。去るがいい」


 肩で息をしながら、スゥがおれを見やる。


「あんなこと言っているけど、リッちゃん?」


「せっかく、ここまでデバフ付与層を重ねてきたのにか? さらにデバフは上書きされる。いつか、この悪魔はゴブリンよりも雑魚くなる」


「その前に、わたしがその首を叩き斬るけどね!」


「貴様たち──悪魔を殺すということが、何を意味するか分かっているのか? 気の狂った人間どもか!」


 おれたちは血に飢えた冒険者です。

 なぜならはいま、おれとスゥは──。


 なんども死にかけたせいで、戦闘ハイだから。

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