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104/115

104,悪魔の鎖。

 

 魑魅魍魎。


 魔物たちが跋扈しているようだが──

 この『位相の異なる歓楽都市ヴィグ』には、どこからか集まった魔物たちで溢れているのか?


 スプリングは、〈愉悦論の会〉が魔物の開放を企んでいる、と話していたが。

 このままヘカトンケイルを含めた魔物たちを、位相転換で、『おれたちの世界』に移動させるつもりだろうか。


 とにかく、ヘカトンケイルに比べると、ラミアならまだ対処できそう。

 ようは、でかい蛇に美人さんがくっ付いているわけだろ。


「だがこの人間の肉は、あまり美味そうじゃないねぇ」


 と、ラミアの蛇下半身がうごめき、ダートの死体を投げてきた。

 蛇の尾に巻き付かれ、そのまま圧死させられたようだ。凄まじい形相のまま死んでいる。


 これに憤怒したのが、傭兵仲間たち。

 とくにソニアという女傭兵は、武器の長剣を振るい、ラミアに突撃する。


「許さない!!」


 しかしこっちは、すでにラミア目掛け、《デバフ・アロー》発射準備に入っていたのだが。


「あ。ちょっと、そこをどいて」


 こっちはマイリーの命中率UPバフがあるわけでもないのだから。

 射線上に、ソニアがちらちらと入る。

 どうにか狙いを定めて──発射。


 しかしデバフのエネルギー矢は、ラミアに到達する前に、突然に割り込んできた異形にむんずと掴まれ、握りつぶされてしまった。


 身の丈3メートルほどの亜人で、全体は人間形態だが頭部だけ馬。

 肩甲骨あたりから、炎の鎖が伸びている。


 炎の鎖。


「スゥ。悪魔を見分ける方法って、ルシファーの悪魔眷属はみな、炎の鎖が実体化しているんじゃなかったか?」


「うーん。そんな授業を受けたかもしれない。わたし、13点だったよ」


 100点満点中13点の少女。

 それはいいが。

 馬の頭を持つ悪魔の名は、オロバスだったか。


 そのオロバスは、蛇女に向かって、


「ラミアの個体か。こんなところで、なにを遊んでいる?」


 オロバスが無造作に右腕を振るうと、ソニアの身体が四散した。


 ラミアが、限りなく上位個体である悪魔オロバスにひれ伏す。


「これはオロガリア伯爵。なぜ、このような場所に?」


「まだこの都市で時間を潰している魔物たちを呼び集めるよう仰せつかったのだ」


 おれは腕組みして、オロバスとラミアを交互に見やる。


「ふぅむ。ややこしいな。オロバスという悪魔名で、オロガリア伯爵というのが名前か。というか、悪魔のくせに伯爵か」


 ソニアも失い、残りの傭兵ベルナルドとシーが、怒りの形相。

 それぞれ武器を手に、オロバスのオロガリア伯爵に攻撃を仕掛けようとする。


「リッちゃん。傭兵の人たちが、『許さん』の流れでどんどん殺されにいこうとしているけど?」


 第五の型【昼下がりの温もり】を発射。 

 行動阻害系。ようは睡眠デバフ。


 ベルナルドとシーを眠らせる。

 それからエンマに言って、爆睡中の二人を安全なところまで運ばせた。


 オロガリア伯爵の叱責を受けていたラミアが、こちらを指さしてくる。


「オロガリア伯爵、奴らをご覧ください。不可解なスキルを使います。どうか、あたしに仕留めさせてください」


 馬の頭がこちらを向いた。

 地獄の炎の鎖が蠢く。


 魔物と悪魔では、その戦闘力には圧倒的な違いがあるのだとか。

 それを体験することになるのか。


 オロガリア伯爵は、妙に理知的な口調で言う。


「人間はどれも蛆虫に過ぎない。われら悪魔族の足元にも及ばぬ。粉々に砕け散るがよい」


 火炎の右拳が振り落とされる。

 その破壊力は、この歓楽都市ヴィグをまるごと吹き飛ばし、クレーター状にするほどだろう。


 だが実際は、路面に大穴をあける程度だった。


「なんだと?」


 オロガリア伯爵が不可解そうに、右拳を持ち上げる。


 やれやれ、《デバフ・アロー》の命中が間に合って良かった。


 オロガリア伯爵に付与したのは、第八の型【敵の攻撃は弱いにこしたことはない】。

 デバフ効果は、攻撃力の著しい低下。


 おそらく100分の1。

 逆にいうと、100分の1の攻撃力で、路面に大穴を開けやがったぞ、あの悪魔。


「悪魔だろうが、なんだろうが、デバフに弱体化できぬ敵はいない」


 スゥが戦剣〈荒牙〉を片手に、前へと出る。


「リッちゃんが弱体化させ、わたしが倒す。いつもどおりだね」


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