テレパシー……拒否!
……聴こえますか? この声が聴こえますか?
『え、なに、この声』
大丈夫、怖がらないで。これはテレパシーで今、僕とあなたは――
『イヤッ!』
ふふっ、だいじょう、え、んあ、あれ? もしもーし、もしもーし! え、嘘! ちょっと! ねえ!
『うわ……なんですか』
いや、え? 切れるの?
『はい?』
いや、テレパシーって送られた側が一方的に切れるものなの?
『さあ、知らないですけど……じゃあ』
いや、じゃあじゃなくて! 何で、すぐ切ろうと、いや、そもそもなんで切ったの!? て、ああ、びっくりしたんですね。へへへっ、すみません。
『いや、何か気持ち悪い事を言おうとしてたのかなって思って』
そんなことするわけないでしょうよ!
『じゃあ、さっき何を言おうとしてたんですか?』
え? えーと、テレパシーで僕とあなたの心が繋がって――
『うわ』
え、うわって別にそんな変なこと……あれ、また切りました? ちょっと、おーい! おーい!
『なんなんですか』
いや、なんでちょっと怒ってるんですか……。別に気持ち悪いセリフでもなかったでしょう。
『いやー。それに単純に声もちょっと……』
声も!? 心の声なのに!? えー、いや、ちょっと自分じゃわからないので……そうなのかなぁ……
『じゃあ、さよなら』
いや、だからすぐに切ろうとしないで! ちょっと、ねえ、ちょっと! ねえ! あれ、おーい! うぅぅぐぐ! はぁぁぁっ!
『うわ。いい加減にしてもらえませんか?』
いや、だからなんでそっちがキレてるのさ……。あと、なんか繋がりにくくなっている気がするんですけど。
『拒否してますからね』
そんな着信拒否みたいな……。
『今の呼び出し音キモかったんでもう二度としないでもらえますか?』
君がすぐ切るからでしょうが! あと、人の気合をキモいだなんて言わないでくださいよ!
『はあはあ聴こえてきてキモかったんです。あと臭い』
臭い!? 匂いまでは伝わらないでしょう!
『うわぁ、またクッサ……』
嘘でしょ……いや、そんなことより、今、この世界で大変なことが起きようとしているんです!
そして、それを防げるのは僕らのような能力者だけ。ふふふっ、そう、僕ら。ええ、あなたもなんですよ! 僕とテレパシーで繋がったあなたも能力者の素質があるんです!
ふふふっ、驚いたでしょう。大丈夫、怯えなくていい。でも、これは運命なんです。今から言う場所に今日の夜十時に来てください。能力の覚醒方法をお教えしますよ。
じゃあ、場所は……あの、あれ? 聴こえてますか? あれ、繋がってるよなこれ、ちょっと、もしもーし、もしもーし!
『ああ、今、スマホいじってました。友達に返信してて』
嘘、でしょ……僕と繋がっている時に別媒体をいじり、しかもそっちを優先!? とんだ浮気者だよ君は!
『浮気者って……いちいち言い回しがキモいんでじゃあ、さよなら』
いや、だから待って! あ、クソッ、へへへ、何度だって繋げてやるからな。
うっ!? クソッ! 堅い! 拒絶がすごい! だ、だああありゃああああ! はぁはぁはぁはぁ、聴こえてますか?
『うわ、また、はあはあ言ってるし』
こじ開けるのが大変だったんだよ! 君が二つの意味で心を閉ざすからさ! あ、もしもーし! ごめんごめんごめん! うまいこと言ったみたいな感じ出してごめん! ちょっとぉ! ねぇ! う、うおおおおおおお!
『もういい加減にしてくれませんか?』
はぁはぁはぁ、き、君が、話を、聞いてくれないから……。
『わかりましたよ。能力の覚醒がどうたらですよね。じゃあ、その方法をさっさと教えてくださいよ』
あ、ああ。じゃあ待ち合わせ場所は……
『いや、今ここで教えてくださいよ』
それは無理だ。ふふっ、能力の覚醒は直接触れなければね。
『じゃあ、結構です』
いや、待って! 超能力だよ!? 目覚めるんだよ!? 欲しいでしょ! 人と違うすごい力! 特別になりたいでしょ!
『大丈夫です、じゃあ』
いやいやいや! 確かに君は美人だけども、いつまでも若くないんだし、そうだよ! もしかしたら若くあり続ける能力とか、さらに美しくなる能力とか、そんなのが目覚めるかもしれないじゃないか!
『……美人?』
そ、そうだよ。へへへ、きっと君には素敵な能力がさぁ。
『見えてるんですか? 私の姿が。てか、あれですよね。やっぱりあなた、この店の窓側の席に座っている小太りの人ですよね?
なんか、声と体の動きがさっきから一致してるしチラチラ見てくるし。
これってあれですか? 芸能人と会わせてやるから、まず俺と会おうよ的な詐欺のやつですか? あれ、聴こえてま、あ、逃げ――』