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5. 「リーダー危ないッ!!」


「うわっ!?」


「リーダーッ!? こんの…………犬畜生がぁッ!!」


 藪の中から突然狼の姿をした魔物が飛び出し、近くに居た男に襲いかかった。

 何とか回避した男と入れ違うように、後ろから拳を振りかぶったティアが狼の魔物の眼前に躍り出る。


「私のリーダーに手ぇ出してんじゃねぇ雌犬がッ!! くたばれッ!! 地獄で後悔しながら永遠に苦しめッ!!」


 瞬時に懐へ潜り込み構えた拳を振り抜く。魔物は身体をくの字に曲げて吹き飛び絶命した。

 

 その後も次々と飛び掛かってくる魔物を拳と杖で殴り飛ばし、魔物の群れを一掃していった。


「ティアさん、さっきは凄かったね。本当に肉弾戦も得意だったんだ」


「はい? 信じていなかったんですか? 心外です。注意深くて頼りになります」


「いや俺を気遣っての冗談かと……」


「リーダーに対して冗談なんか言いませんが」


「えっ? ははは! それ面白いね! でも、あの位は平気だからあんまり前に出ないで欲しいかな。やっぱ危ないからさ、魔法使いで女の子なんだし」


「冒険者に男性も女性もない…………と思っていましたが、女の子扱いが嬉しすぎて今考えが変わりました」


「あっそうだよね。ごめん失礼なこと言って」


「いえ、精々思い出す度に歩けなくなるほど下着を汚す程度ですので」


「えっ!? そんなに!? ……ってそうだ、服が随分と汚れちゃったね。ティアさん返り血で真っ赤になってるし、どこかで身体を洗いたいな」


「確かにこのままでは少々まずいですね。ですが幸いな事に着替えはあります」


「なるほど……ティアさんが日帰りの依頼でもいつも荷物に着替えを入れているはこういう事態を想定してたのか」


「ええ、特に私は汚しやすいので」


「流石だよ。今度から俺も替えの服とか用意した方がいいか。でも、あんまり服買わないから分かんないんだよな」


「リーダーはいつも無地でシンプルな服ですね。まあ素材が良すぎて何を着ても神のつくりし芸術品のようですが」


「素材? この服安かったけど、そんなにいい素材なんだ」


「いえ、そうではなく」


 雑談の最中で男が何かに気付いたように振り向く。


「……ん?ちょっと待って、水の音がしない? 俺ちょっと見てくる!」


男はそう言うとすぐに駆け出し、あっという間に遠くへ離れていく。


「え? あっ待ってくださいリーダー! 一人で離れないでください! 一生隣にいてください!」

 

「たぶ……っちに……るとおも……」


 置いて行かれたティアの呼び掛けに遠くの方から薄らと男の声が返ってくる。

 

「…………もう。そうやってすぐ夢中になる所も好きです。愛しています。今行きます。【身体強化】【感覚強化】」


 ティアが魔法で自分の身体を強化する。身体が急激に軽くなり感覚が鋭くなる。

 研ぎ澄まされた聴覚が離れた所で周辺を探索している男の声を拾った。

 

「……ぅいえば、ティアさんっていつもお洒落だよなぁ。凄く似合ってるけど、ああいう服ってどこに売ってるんだろ」


「…………」


「まぁティアさんの場合、ティアさん自身が綺麗で可愛いから何着ても似合っちゃうか」


「…………ん、ぉ”」


 身体をビクリと跳ねさせたティアが、股座を抑えよろめいてると男が戻ってくる。

 

「……うーん川も湖も見当たらない。確かに水音が聞こえた気がしたんだけど…………あれティアさん?どうかした?」

 

「いえ何も。ただ溢れた水で下着が濡れてしまったんですが、着替える前なので丁度良かったなと思いまして」


「あらら、でもラッキーだったね」


「はい。それと私も水を気配を感じました。こちらです、動物が行き来したような獣道も出来ているので恐らく水源があると思います」


「そっちだったか! ありがとうティアさん、早く行こう!」


 リーダーの男がティアの指した方へ進む。

 

 ティアは少しの間その場で立ち止まり、何かを考え込んでいた。

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