罠
こうして土竜を捕らえるコツを掴んだジョーカーは、おおよそ三日に一度の割合で土竜を捕らえることができた。その間はもちろん虫で飢えをしのぐことにはなるものの、この辺りはオオカミ竜の群れでも数日獲物が獲れないということは珍しくないので、それに耐えうる肉体はもっていた。むしろそれに耐えられない個体は次々と死んでいく。
なお、土竜はいくつかの種に分かれており、生態や食性も違っていたりするものの、多くは雑食性で土中の虫や草の根や地下茎をモリモリと食べてどんどん子を産む習性がある。なので、どんどん狩られないと、土竜が住み着いた当たりの植物が根こそぎ枯らされてしまうという一面もあり、そういう意味でも積極的に狩っていく必要があった。
もちろん、ジョーカーはそんなことを知る由もないものの、彼は土竜を狩り、食らい、自らの命を繋いでいった。
だが、土竜狩りには思わぬ<罠>が潜んでいることもある。土竜の天敵の一つであるイタチ竜の仲間は、多くの種がその名が示す通り細長い体をしており、そして土竜の穴に潜れる者が多い。こうして土竜を狩るのだが、同時に、土竜を狩ろうとする小型の肉食獣なども襲って食うことも少なくない。
まさに、ジョーカーのような。
そしてこの時も、イタチ竜が土竜の穴に潜んでいた。ここまでイタチ竜に遭遇したことがなかったジョーカーはまったく無警戒にいつものように近付いてしまった。そこに、
「ギュアッッ!!」
穴を壊そうとしたジョーカーに、イタチ竜が襲い掛かる。
「ヂッッ!?」
突然のことにジョーカーは咄嗟に飛び退くも、間に合わなかった。イタチ竜に首筋に食らい付かれ、電撃のような痛みが全身を駆け巡る。
『死ぬ……!?』
やはり明確な思考ではないもののそれに近い感覚を覚え、彼は必死で抗った。そうしなければ確実に自分はここで死ぬと思った。
『嫌だ! 嫌だ! こんなのは嫌だ! 俺は何もいい目を見ちゃいないんだぞ? なんでこんな……!?』
そんな感じの憤りが吹き上がり、彼は己のすべての力を振り絞って、両前脚の爪をイタチ竜の顔に突き立てる。
と、
「ギュヒッッ!?」
ビリッとした悲鳴が上がり、イタチ竜の力が弱まった。
「!!」
ジョーカーは地面に転がりながらさらに両方の後脚の爪をイタチ竜の腹に突き立てた。
おそらく、普通にそうしようとしても身をひねって躱されていただろうが、この時、ジョーカーの前脚の爪がイタチ竜の眼球を貫き脳にまで届いていたことで通常の対応ができなかったのだろう。
イタチ竜の腹が、ジョーカーの後脚の爪で切り裂かれていったのだった。




