ヒエラルキー
こうして、まずまず戦力になる若い雄が加わったことで、ジャックは少しホッとできたようだ。正直、あのままだと幼体達のほとんどを死なせていた可能性もあった。
とは言え、キングの縄張り内を放浪している状態なのは変わらず、幼体達には厳しい状況は続いていたとも言える。
そんな中でも、発情期は訪れる。しかも今のジャックはボスなのだから、<ボスの務め>として、雌の相手はしなければいけない。
ジャックの妹達も、新しく加わった若い雄には興味津々のようだった。
前の発情期の時には、それこそ余裕もなかったこともあって、発情そのものがなかった。過剰なストレスがそれを阻害したのだろう。しかし今の状況にも慣れてきたというのもあってか、ジャックは、以前の群れのボスであるキングの娘だった雌と交尾を行うことになった。ジャック自身はキングの子ではなく、他所の群れから加わった雄とキングの娘の子だった。なので、血縁上は<叔母>に当たる雌だったが、この程度ならそれほど珍しくもないだろう。しかも、ジャックの妹達はそれこそ別の群れから加わった雄とだったので、問題はない。
基本的に近親婚を避けるために、雄の多くは巣立ちによって群れから離れ、他の群れに合流する場合が多い。特に<ボスの子>は、ほとんどが群れを離れることになる。ボスに追い出されるのだ。これも近親婚を避けるための本能なのだろうと思われる。
ちなみに、ライオンなどでは、他所から来た雄がそのままボスを倒して地位を奪うと、前のボスの子がまだ小さいと殺してしまうことがあるという。これは、雌が子育てをしている間は発情しないからで、子を喪い子育てが終わると発情し、新しいボスの子を宿すのだが、オオカミ竜の場合は、時期が来れば子供がいても発情するので、実は<新しいボスによる子殺し>は基本的にはなかった。
ただし、<前のボスの子>は群れの中でのヒエラルキーが低くなり、新しいボスの子からイジメられることもあるようだ。体の大きさが極端に違えばそんなこともあまりないものの、差がないと覿面にイジメられる傾向にある。
一方、ジャックは、相手が誰だろうとイジメるということはなかった。特に幼体相手には進んで理不尽に振る舞ったりはしない。キングに歯向かった仲間を噛み殺したりしたのも、あくまで群れの秩序を守るためで、彼自身が望んだことではない。
なので、自分の子も、新しく加わった雄の子も、分け隔てなく大事にした。それにより<食い扶持>が大変だったが、それについてはやはり自分が頑張ればいいと思っていたようだ。




