第7話 衝撃の展開!
そして俺は今、マクベスと並んで魔王の前でお座りをしている。
もちろん、犬がするやつではない。
赤ちゃんがするやつなので悪しからず。
因みにマクベスはお座りではなく跪いているのでそこもお間違えの無きように。
え?魔物たち?
ナニソレ、オイシイノ??
ていうのは冗談として、俺が引き連れてきた魔物たちは玉座の間の魔族を何人か蹴散らしはしたものの、その進軍はそこまでだった。
ていうか、魔王、あれはやばいっ!
手下の魔族が束になっても止められんかったものを、すっと片手を前に出し、物凄い光量の光と障壁を貼ってなお感じる煉獄の熱量、俺が認識できたのはそこまでであったが、その後、俺の後に続いていた魔物どもは跡形もなく消滅した。
え?俺はどうなったって?
障壁を貫いた一撃は俺を玉座の間入り口横の壁面に激突させ、俺は意識を失っていたのだ。
そう、魔王の一撃は余裕で俺の『絶対防御』を突破してきた。
はい突破ぁーーーっ!(某交番風に)
である。
そして俺が気絶している間に責任者のマクベスが呼びつけられ、今に至るわけだ。
「マクベスよ。面を上げよ。」
魔王ゲルムツベルグは静かな口調で告げる。
「はっ!」
その声にマクベスは跪いた姿勢のまま、顔だけを魔王に向けた。
「っ!!」
魔王の顔を見た瞬間、マクベスは硬直する。
そのあまりの威圧に耐え切れなかったのだ。
なお、俺も怖くて見れないのでさっきからずっと下を向いている。
「さてマクベスよ。今回の事態を招いた責任をどう考える?」
「・・・・・」
マクベスは答えられない。
ざまぁみろだ。
「恐れながら王よ。こやつはその人間のゴミともども即刻処分すべきかと愚考いたします。」
傍らに控えているガイコツが何や立派な鎧を着こんだような不気味な生き物がそう進言している。
「ふむ。」
魔王はその進言を受け、目を瞑って何やら思案に耽る。
「しかしガルフォード卿よ。マクベス様は五将の一人。簡単に処刑も出来ますまい。」
さっきのガイコツ、ガルフォードというらしい、に苦言を呈するのは魔族の女。
肌が紫色でなかったら惚れてたかもしれん整った顔立ちではあるが、額の左右から生えた角(野郎のよりは小さいか?)と不気味な背中の羽は頂けない。
しかし、五将なんていうものがあるのか。
四天王みたいなもんか。
「ふんっ!その五将も先の一件のせいで四将になってしまったではないか。どうせ再編が必要なのだ。こんな事態を引き起こした奴をそのまま将の位置に置く訳にもいくまい。」
「ですがっ!」
「魔王様の御前である。控えよっ!」
魔王のすぐ横に居た悪魔の男が二人を諫める。
こいつは、見たことあるな。
そうだ!俺を連れ去った悪魔の一匹だっ!
え?悪魔の単位は匹じゃないだろうって?
こんな奴ら、匹で十分じゃ。
さて、名前は何だっけかな。
俺を連れ去って、マクベスのところに連れて来たやつな気がするな。
ザイルとかいうのが報告にいったとか言ってたから、こいつは違う方か。
「良いっ!ジゼル!」
「はっ!」
ジゼルと呼ばれたその悪魔は魔王の声にひれ伏す。
「とは言え、此度の一件で確かに五将のうちザイルを失った。どの道再編は必要だ。」
あっ、ザイル死んだんだ?
これまたざまぁ、だ。
「それでは沙汰を下すっ!」
マクベスは再び頭を垂れる。
なお俺は元々下を向いていたのでそのままだ。
「妖魔将マクベスは第2軍団長、妖魔将の任を解くっ!その上で貴様には魔王領からの追放を命ずるっ!!」
「・・・、畏まりました。」
マクベスは力なくそれに答えた。
その一部始終を悲しそうな顔で見ていたのは先ほどの女。
彼女は続く魔王の言葉で驚愕に染まることとなる。
「エルメダよ。」
「はっ!」
その女、エルメダは突然名を呼ばれ驚きながらも片膝を付き、頭を垂れる。
「貴様に第4軍団長、新たな妖魔将を命ずる。」
「っ!!」
エルメダは一瞬息を呑む仕草をするも、さすがは魔族の幹部といったところか。
すぐに気を取り直して魔王に具申する。
「恐れながら魔王さま。わたくしめもマクベスさまの副官として責任があったかと存じます。その私が妖魔将になど、」
「貴様は魔王様の決定に異を唱えるつもりか?」
すかさずガルフォードが嗜める。
「っ!・・・・」
エルメダもそれ以上は何も言えなかった。
「では続きだ。不死将ガルフォードには第1軍団長を、闘魔将ジゼルには第2軍団長を、そして獣魔将ジャルガナには第3軍団長をそれぞれ命ずるっ!」
一同、跪いて頭を垂れる。
なお、魔王軍の序列はその数字が小さいほど上である。マクベス率いる妖魔軍団は魔導士が中心の部隊であり、元々は第2軍団であったが今回エルメダが任じられたのは第4軍団。これは実質的な降格と言えた。
さらに言うなら魔族よりも魔物色の強い獣魔族より序列で下に行くというのは実はけっこうな屈辱であった。
思わぬ出世に獣魔将ジャルガナは薄ら笑いを浮かべていたが、顔が獣そのものなので他の者にはその表情の変化が伝わることは無かった。
なおジャルガナは一つの獣の姿形ではなく、幾つもの獣の集合体のような異様な姿をしている。
一般的なファンタジーものでいえば合成獣キマイラというのが一番当てはまるのだろう。
そんな風貌だ。
ところで俺はどうなるんだろ?
やっぱりゴミとして処分されるの?
ここに来てかなり不安になってきた俺!
やはり、強行突破で帰還して尚且つ玉座の間に直行はかなりまずかった?
でも、赤ちゃんだし仕方ないよね??
そう思っていると、
「ああ、忘れていた。マクベスよ。そのゴミも一緒に連れて行けっ!」
「はっ!」
「処分するかどうかは好きにしろっ。」
そう吐き捨てるように告げて魔王は何処かへ転移していった。
取り敢えず、助かった、のか?
いや、処分どうのと言っていたからまだ油断は禁物か。
まぁ魔王も連れて行けと行った以上、ここで殺されることはなさそうだ。
無理やり思考を前向きに持って行ってはいるものの、不安でいっぱいな俺。
この先どうなってしまうのやら。