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あなどり!-another world dream-  作者: ねこずきのくま
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プロローグ2

「うーん。まぁまぁかな。60点っていったところね。」


気付けば女性のそんな声が聞こえた。

何が60点??


「あっ!気が付いた?さっそくだけど気付いたんなら手続きをはじめるわね。」


「手続き??」


「ええ。単刀直入に言います。相模原 京介さん。」


「はい。」


こいつなんで俺の名前知ってるんだ??


「あなたは死にました。」


銀色の長い髪をかき上げながら女性はそう告げる。

よく見るとけっこうな美人さんだ。


「死んだ??」


「そうです。何も覚えていないのかしら??まぁ人によっては死の瞬間なんてあまりにも凄惨な光景で記憶に蓋をしてしまっているという場合も珍しくもないんだけど・・・」


そう言われて俺は思い出そうとする。

確かヤッチャンみたいなチンピラに追いかけられて逃げてる途中階段から転げ落ちて・・・

そうだ。なんか女の人が居て見上げたらスカートの中で・・・


あぁ・・

そう言うことか。

全部思い出したけどなんていうか相当間抜けな最期を遂げてるわコレ。


「ぷぷっ・・・・」


その声の方を見ると先ほどの女性が笑いを堪えるように口を両手で押さえていた。

しかし、その表情までは隠せていない。

笑っとるなコイツ・・・


「それで?俺が死んだことは理解しましたがここは何なんですか?ていうか、あんた誰?」


笑いを収める為か深呼吸を繰り返した女性はしばらくの後に口を開いた。


「はぁ・・・苦しかった。私は貴方がたからすれば天使のような存在です。」


「天使?」


女神じゃないんだ??


「そうです。死んだ人を次の人生に送るのが仕事です。」


なんか如何にもな展開になってきたな。

しかし、死=無ではないようだ。

次こそはマシな人生でありますように。


「あら?あまり不思議そうではないですね?」


「そりゃ、よくある展開ですから。」


「よくある??ここ最近ここに来て同じようなことを言う人が増えてますけど、まさか人類に天界の存在がバレちゃってる??」


天使を名乗る女性はその後も何やらブツブツ言っている。

過去にここへ来たやつらが言っていた言葉を思い出しているようだ。

死んで異世界に行く前に神やら何やらに遭うってのは、まぁ今や異世界もののド定番だしな。


「独り言の途中で申し訳ないんですけど、もちろんチートは貰えるんですよね??」


頼む!!

イエスと言ってくれ!!!

何気なく訊いたわけだがこの答え如何で次の人生が決まるんだっ!!!


「そうですねぇ・・・あなたの死に方はそれなりにインパクトもありましたし、転生させるにあたってこうして欲しいというような願いがあれば少しは叶えられますよ?」


「インパクトで決まるの??」


「まぁそういうわけでもないんですけど、私もここで同じようなやり取りばっかりしてるもんで退屈なのよね。退屈凌ぎをさせてもらったお礼みたいなもんよ。」


「神様でもないのにそんな権限があると?」


「あら、チートをくれって言っときながら私にその権限が無いと思っていたのですか?」


くれと言うか、貰えるか確認しただけなんだけどね。

もちろんくれないと困りますよ??


「ではチートをください。」


「ちなみに私が送った人の中で同じようにチートを要求してきた人はたくさんいますけど、ほとんどがすぐに死んでるわね。」


「えっ!?」


「普通の何の特典もなしの人はもちろんなんだけど、何か一つだけ願いを叶えるという形で願われるのってだいたいチートくださいなのよね。それでもうちょっと具体的にどうぞってことで『スキルを全部使えるようにして欲しい』とか『ステータス系をかなり優れたものにして欲しい』とか、あぁ、勇者や賢者にしてくれというのもあったかな。中には自分が相当やり込んでたMMORPGのキャラクターそのままで転生させて欲しいというのもあったわ。聖剣や伝説級の防具、アイテムなんかを要求されたこともあるし。それくらいの願いなら叶えられる範囲だからそうしてあげたんだけど、結果は悲惨なものよ。」


え?マジで??

チートがあってすぐに死ぬ世界なんだ??

他の世界はないのか??


「あのー、これから行く世界ってどんな世界なんです??」


「あー、私が担当しているのはあなた達にとってはアニメやゲームでよくあるオーソドックスなファンタジー世界よ。その世界に適応できそうな人が私の担当になるの。」


なるほど。

まぁそういうことなら俺の場合この女性の担当になるのは決まっていたと言っても過言ではないな。


「それでチートの方は?」


「そうね。先ほども言いましたが、インパクトに免じて少しなら願いを叶えましょう。とりあえず何個か欲しい特典を言ってみてください。」


やったぞ!!

しかし、ここはかなり慎重に選ぶ必要があるな。


「何個くらい叶えて貰えるのでしょうか??」


「まぁ内容にもよるけど、3個くらいってとこかな?」


3個か・・・

少ないな。


「あっ!いま少ないなって顔しましたね?これもさっき言いましたけど、普通は何もなしか、あっても1個ですからね!」


それもそうか・・・

では慎重に選ぶとしよう・・・

俺は頭をフル回転させて叶えて貰う願いを考え始めた。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


「あのー、もう何回も言ってますけど流石に長すぎやしませんかね?」


「うーん、チートって言ってもすぐ死ぬようなもんじゃ困るしここはもう少し具体的に絞った方が良いんだろうけど・・・うーん。」


もう何回同じことを考えたろう。

完全に堂々巡りの状態に陥っていたがそんなの関係ねえっ!!

俺の一生が掛かってるんだっ!!


「あのー、聞いてます??もう何もなしか、それが嫌なら私の方で適当にギフトを与えて勝手に送りますよ?」


「それは困るっ!!」


「なら早くしてくださいっ!いったい何カ月待たせるつもりなんですかっ!!」


そう、俺は考えに考え抜いてもうかれこれ半年近くうんうん唸っていた。

もっともここでは時間の流れが異なるのか、それとも死んでるからなのか知らないが腹が減ることも眠たくなることも無かった。


「分かりました!もう覚悟を決めます。」


「やっと決めて貰えましたか。」


「はいっ!」


「それでは伺いましょう。」


「それでは一つ目、スキル『全知全能』をください。」


「『全知全能』?って神様の力みたいな?」


「はい。魔法、剣技などありとあらゆるスキルを使いこなせるようなものを所望します。」


「ありとあらゆる、ね。」


「そうです。その気になれば自分で新しい魔法も創造できるような強力なやつをお願いします!!」


考えに考え抜いて行きついた願いだ。

よく魔法創造をくれとか、特定の事象に限定した願いを述べる展開を見かけるがそれは所詮『全知全能』の前では下位互換に過ぎないだろう。


「わかりました。それでは二つ目は?」


「二つ目は『魔力無限』で。」


これはありがちなものではあるが、必要だろう。

全能といってもスキルを使う能力があるというだけで肝心の魔力が足りないと使えないなんてことにもなりかねない。

使えもしない自爆呪文を唱える小悪魔みたいになっても仕方がないのだ。

また、ステータスを全てカンスト値にしてくれとかいうのも考えたのだがバッドステータスもついでにマックスになったらたまったもんじゃない。

それ故これに落ち着いた。


「二つ目は意外と平凡ですね。では最後、三つ目は?」


そう、三つ目だ。

これが思い浮かばずに何カ月も経ったんだ。

もちろん『完全耐性』とか、『不老不死』とかよくある定番の強力そうなワードは思い浮かんだ。

しかし、全知全能のスキルで何とでもなりそうな気もするんよね。

下位互換のスキルをわざわざ貰うのも勿体ないしなぁ・・・


「どうしました?何もないんですか?それじゃあこのまま」


「ちょっと待ってください。」


「はぁ・・・もう何カ月も待ってますけど。」


ええいっ!

どうせ何も言わずに送り込まれるなら何でも良いから言っておくか。


「それじゃあ見た目を良くして貰えませんか?」


「見た目を??」


「はい。もうブサイク面で生きていくのは嫌なもんで・・・」


「なるほど。お気持ちは分かりますが、好みなんて人それぞれですよ?」


「それはそうなんでしょうけど、それでも一般的な常識で見てくれの良い人と悪い人の区別はあるでしょう?」


「わかりました。それではもう良いですね?」


「あっ、はい。」


「では。」


女性がそう言うと俺の身体を光が包み、俺は再び意識を失った。

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