Day8 光争劇化
中途半端だったので、19時にもう一話更新します。
■◇■
戦闘を終え、道木はその場で崩れる。
異能力によって生み出していた光の鎧が、粒子となって消える。異能力を解除したのだ。
「ハァ…ハァッ………ッ―――!」
息も絶え絶えに彼は立ち上がろうとするが、立ち上がれずその場で再び膝を着いた。
“光騎士”は強力な技だが、相応の消耗を要する。今回の様に実践の緊張感の中で使用したのは初めてであり、その緊張が道木の精神をより摩耗させていた。
(ま、ずい………急いで、この場を離れないと)
今回は奇跡的に勝利した。だがそれは幾つかの運が絡んだ結果であって、確実なものではない。そのそも増援が来れば、消耗した現在の道木では確実に敗北するだろう。
道木修という人間が弱いのではない。道木と彼等の違い、それは実践慣れと数の力だ。
これまで戦闘と言ってもあくまで授業で有り訓練だった道木と、人を殺す為に壊す為に戦ってきたテロ集団。攻撃力に差があるのは当然の結果であった。
テロリスト達が先程の二人の筈が無い。起きている事の規模を考えればもっと多いだろう。その数が十人なのか、はたまた二十人なのかは定かでないにしても危険はまだ消えていない。
そして、あの二人が最高戦力である筈も無い。
道木は知っている。この世界には想像も出来ない程の強者が存在する事を学び、見た事で知っている。
それは過去に道木自身が体験した事。彼が国家所属の異能者を志した理由でもあった。
(………まさか、こんな風になるなんてな)
だが、彼の身体じゃ彼の意思通りには動いてはくれない。
疲弊した身体に力が入らず、痺れとも異なる感覚が表面を伝っていた。
(だ、めだ……立て………)
遂に身体を上げる力すらも失い、彼は前のめりに倒れようとした、その時。
「―――道木君!!」
地面にぶつかる寸前、彼の身体が何かによって止められる。
彼の身体を受け止めたそれは人の腕であり、そして彼の仲間である朱音万智のものだった。
「あ、かね……?どうして」
薄れていく意識が、少しだけ覚醒する。
逃げた、もとい逃がした筈の彼女が何故ここにい居るのか。
怪我人を連れ、戦闘から離脱させた朱音が此処に居る意味。
「戻って来たんですよ!一人放っておける訳ないじゃないですか!!??」
「……そうか……そう、だな」
半分涙を流しながら、朱音は道木に言う。
朱音は道木の身体を支え、仰向けに向きを変える。
そうして道木の怪我を確認し、軽く安堵の息を吐いた。
「外傷は……無いみたいですけど、打撲痕が酷いです。すぐに安全な場所まで移動しないと!」
「安全な、場所……?」
「ええそうです。本当に、本当についさっき。やっと繋がったんですよ!」
繋がる。その言葉が意味するものに、道木はすぐに思い当たった。
それは彼女の異能に繋がる要素。
「…………それ、は」
「ええ、外部との連絡が着きました!もうすぐ先生方が助けに来てくれます!!」
■◇■
時間は少し遡る。
道木の戦闘開始、宗谷の会敵から数分。
彼女が辿り着いた場所は、両陣地から殆ど均等に離れたとある場所。
最初に感じた地点から多少の誤差はあるが、桜海ソラが感じたエネルギーの発信源。
「そうか、足止めしとけ。そんでシラサギの奴にも言っとけ、邪魔すんなってな」
桜海ソラが辿り着いた場所に待っていたのは、一人の男だった。
荒々しい雰囲気を纏い、通信機越しに会話をしている。
服装に特筆すべき点は存在しないが、強いて言うならば憑かれているという表現だろうか。
本来なら桜海ソラは男に奇襲を仕掛けるべきだったのだろう。そも訓練場に居る大人は、今においては敵対者つまりテロリスト以外に居ないのだから。
それを彼女が止められなかったのは、触れてはならないという予感がしたからだった。
例えるなら、爆発寸前の危険物。
漏れ出るエネルギーこそ制限しているが、秘めたそれは確かな危険を訴えてくる。
「……貴方、は」
「残り時間が少ないみてえだ。早速だが、一個聞く」
そこに会話の余裕は無く、男は少女の方を見向きもせず言葉を放つ。
「分かってるよな?」
「…………!」
それだけで、それだけで十分だった。
彼女の脳に浮かぶ、危険信号。最悪の予感。
―――この男は、何を知っている?
それはある種、機械的な反応だったのだろう。
「抵抗しなければ痛い目には―――」
「―――撃てッッ!!!!」
「はは、まあそうなるよなぁ!」
男の言葉を全て聞き終わる前に、既に桜海ソラは異能を発動していた。
空に直接現れた四つ雷球が弧を描きながら男の元へ飛翔する。
直線に叩き込むのではなく、四つの方向から確実に相手の意識を刈り取る為の攻撃。
そしてそれは、これまで彼女が使ってきた異能のどれよりも凶暴性に満ちていた。
爆発音。或いは電音。
雷球が弾け、爆風と共に砂埃が舞い上がる。
だが―――。
「ははは!!良いぞ!やはり革命には戦いが必要だ!!お前を連れてより高みへ信念の成す方向へ!!!」
砂埃が一瞬の内にして晴れ、無傷の男が現れる。見れば、男に衝突したかのように思えた雷球は男自身には激突しておらず全て地面に当たっていた。
まるで急激に方向を転換したように、男の直前の地面だけが抉れていた。
そうして、高らかに宣言をする。
革命、その言葉が指し示す意味。
だが彼女にとってそんな意味はどうでも良かった。
彼女の血が訴える。彼女の思考が命令する。
冷徹な血が、冷静な思考が、行動を取る。
「排除する」
「来いよッ!殺さない程度に壊してやる!!」
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