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ベツバラ!!  作者: 理想久
第一記 愛染王位日誌
51/82

Day8 記録継続

お待たせしました。


 ■◇■


「……手賀君達がやられました」


 Bチーム陣地にて、朱音万智は陣地内に集うチームメンバーにそう告げた。

 

「く、詳しい状況は分かりませんが、五分前に来る筈の連絡がありません。こちらから探ってみましたが、範囲内に反応は無し……状況的に三人とも捕まったと考えるのが妥当です」

「最後の連絡は何処から?」

「私達の陣地から少し離れた地点です。偵察に来ている筈のAチームを遊撃する為に見回りをして貰っていた筈ですので、自陣からそう離れてはいません」

「…………」


 現在Bチーム陣地に留まっているのは朱音万智率いる作戦立案班三名と、陣地防衛の為に残った道木修ともう一名の計五名。

 五名という人数はルールブックに記載されていた『同時に陣地内に滞在出来るメンバー数も四分の一である』というルールが故の数字。桜海ソラの加入によってBチームの人数は二十名になったので、五名という人数は陣地防衛に使う事が出来る最大の人数だ。


「開始からもうすぐ一時間。やっと動き始めたって所か?」

「手賀君達は三人で行動していました。そう易々と逮捕されるとは思えません」

「勿論向こうも作戦を練って来てるんだ、これ位当然と言えば当然だろ。まだ開始一時間だけど、三人も一気に行かれるのは結構しんどいな……これ二日目は無いかもな」


 Bチームが逮捕されたのは手賀達が初めて。しかし未だBチームはAチームを逮捕出来ていない。一度逮捕された人間を脱獄させる条件が厳しい以上、この訓練は想定していたよりも短期決戦なのかもしれないと道木は考えた。


「そ、そもそもかけられた暗号の難易度も分からないですし、何とも言えません。出題形式によっては私達のだれも問題が解けないとか……想像したくないですけど」

「それはまぁ追々だな。今は手賀達を脱獄させる方法を考えよう」

「道木君は手賀達を脱獄させた方が良いって思ってんの?」


 道木が手賀達の救出を提案すると、作戦立案班の一人が道木に疑問の声をあげる。


「どういう意味だよ?」

「ほら、杠も言ってただろ。『暗号は脱獄の度により難解なものに変更される』ってさ。なら内の頭領が捕まったとか、ある程度の人数が逮捕された時とかに脱獄は絞った方が良いんじゃねえかなって」


 暗号の難易度は未だ不明。現在は互いのチームが互いの陣地の周辺をうろついている状態だ。Bチームも三人が逮捕されたばかりであり、暗号の難易度は分かっていない。

 暗号の難易度は不明だが、暗号が解読される度により難易度が高いものに変更されるというのは事前の説明で判明している。男子生徒の言う様に、本当に脱獄の必要性がある時……つまりはBチームの頭領が逮捕された時等に脱獄は絞った方がより楽に脱獄させる事が出来る。


 だが、それは勿論道木も知っての所。


「ああ。だが、脱獄の準備は進めておくべきだ。動ける人間がまだ多い内にな」

「そ、それに脱獄後は三分間逮捕されないとはいえ、それは脱獄した人間に限っての話です。助けに行った人間は敵陣地を出た後に待ち伏せをされる危険性がとても高いです。そ、そこで三分時間を稼がれても結局捕まってしまうので……脱獄にはある程度の人数を割かなければいけないと思います」

「そういう事だ。そんで脱獄に手を回せばそれだけ自陣の守りを薄くなる。助けるならAチームを誰も捕まえてない今がリスクは一番低いって事だ」


 自陣内に居られる人数はチームメンバーの四分の一だが、自陣内に居ずとも自陣を守る事は出来る。自陣の範囲には分かりやすく線が可視化されてはいるものの、自陣も広大なフィールド上に円形に存在しているのだ。四方に壁は存在せず、どの方向からでも相手チームは自陣の中に入って来る事が出来る。

 相手チームが自陣に攻めてくるのを防いだり、脱獄を阻止したり、寧ろ自陣外の守備の方が人数制限が無い分重要性は高い。

 

 だがしかし、四方を埋める様に人員を分散させる事もまた出来ない。

 人員を分散させれば、各個撃破される危険性も増し、また攻撃に転じられない分ジリ貧になるのは目に見えているからだ。


「この訓練では防衛と攻撃、そのバランスが重要になる。二十分の三という数字はみかけよりもとても大きい。防衛の人員は減らしたくないからな」

「確かにな……悪い道木」

「気にしてないって。だが、これ以上防衛メンバーを削られる訳にもいかない。早く攻撃に転じないと、ッ厳しい状況は続いたままだ」


 逮捕された手賀達は自陣の東側を防衛する為に巡回していたメンバーだった。

 それが逮捕され、連絡がとれないとなると東側の防衛はかなり手薄になっている筈だ。

 すぐに朱音万智が近辺にいたBチームメンバーに指示を送ったとはいえ、まだ逮捕時の状況も把握できていないのだ。防衛メンバーをこれ以上減らす訳にはいかないというのは当然の帰結だろう。


「連絡は済んだな?一端は報告待ちだが……しかしどうやって相手は手賀達を逮捕したんだ?」

「も、もしかした赤座君かもしれません。赤座君なら三人の攻撃にも少しは耐えられるし、奇襲を仕掛けられたなら、一発を耐えれば逮捕位の隙はあるだろうし……」


 赤座護の戦闘能力はクラスの中でも優秀な方だ。

 確かに奇襲を仕掛ける事に成功すれば、三名からの一斉射撃を受けても一、二回は耐えられるだろう。逮捕モジュールの性質から言っても、十分に触れる隙は確保できる。


 しかし、道木にはそれが全てだとも思えない。

 まだ赤座護が逮捕したとは限らないが、道木にはそこに何か把握できていないパーツがあるような気がしてならなかった。

 そして、実際その不安は的中するのだが……今の彼に知る由は無い。


「赤座か……次に赤座の報告があったら俺が行く。朱音はその時用の人員配置を用意しといてくれ」

「分かりました」


 道木の指示に合わせて作戦立案班の面々は慌ただしく動き始める。

 朱音もまた、次の行動に向けて準備を再開した。


「後は……()()()()だな」


 道木は敵陣の方角を見つめながら、そう呟いた。 


 ■◇■


「さて……」


 桜海ソラは一人、フィールド北西部に立っていた。

 

(Aチーム陣地は恐らく北西部だと考えていましたが……どうやら当たりの様ですね)


 彼女が立っている場所は小さな崖の様な地形になっている場所だった。

 そして少し離れた所には、三名の人間。どれもAチームのメンバーである。


(確認出来るのは三人……残り二人は牢屋の方でしょうね)


 手賀達が捕まり、Aチームの指示・サポートを担当するメンバー以外の二名は牢屋の監視に赴いている。二名とは少々心許ない数に思えるが、情報の伝達がスムーズに行う為にもサポート三名という数字は減らせなかったのだろう。


(ですがこれではっきりしました。陣地の配置は北東にAチーム、南西にBチーム。牢屋はどちらの陣地も共通して拠点施設からは少し離れた所に設置されているようですね)


 事前に共有された資料に載せられているのは自陣の配置のみ。相手陣地の調査等も含めて今回の訓練では全て自らの手で行わなければいけない。

 チームメンバーそれぞれに役割を持たせるという意味では確かに効率的だ。


 そうして桜海ソラがBチーム陣地を観察していると、一名の生徒が拠点から離れていくのが見えた。

 暫くすると、拠点に戻って来たのは違う生徒。陣地外のメンバーと入れ替わったのか、或いは牢屋を監視していた人員と交代したのかは定かではないが、これで四名。


(……宗谷さんの姿は見えない。やはり牢屋の方の防衛が宗谷さんの仕事、という事でしょうか。もしくは……)


 今回の訓練において、最も重要な要素はチームプレイである。

 団体訓練と銘打っているのだから当然と言えば当然。しかしチームプレイとは何も集団で全員が行動するという事ではない。

 各々に与えられた役割を、それぞれに最大限に全うする。それこそが真のチームプレイ。

 

 異能者養成学園通う学生は、多くの場合卒業後異能者として進路を歩む。公務員、機関職員、或いは探索者、研究者。勿論個人としての能力も重要だが、同じ位に重要なのは組織の中で行動する力。

 団体訓練とはそういう能力を鍛える為の訓練である。


 そして今回の団体訓練のカギを握るのは……頭領という役割。


 明らかに特殊な役割。

 頭領が逮捕され時間が経過すれば、全員が逮捕されておらずとも敗北するというルールからも頭領という役割がどれだけ重要な要素か見て取れる。

 

 頭領は誰か。頭領をどう使うのか。

 それが勝利のカギを握っているのは間違いない。


 桜海は道木達との会話を思い出していた。


(……兎も角、これで偵察の役割は終わりました。私が逮捕されては元も子もありません。ここは一度自陣まで引き返して――――)


 そこで、彼女の持つ通信機が振動する。

 通信機の数は拠点の分を含めても全員には行き届かない。拠点の固定通信機を除けば、数も陣地内に居られる人数制限と同じくチームメンバーの四分の一に限られている為だ。

 

 またこの通信機も個別にしか使用できない為、今回の訓練における情報の伝達手段はかなり限られている。例外として頭領のみは全体通信が可能だが、これも頭領から全体に向けての一方的な通信に限られた機能だ。


 そんな貴重な通信機の一つを持っている事からもどれだけ彼女がチームメンバーから戦力として信頼されているのかが分かる。


「……はい」

『あぁ、桜海さん……で大丈夫だよね?』

「大丈夫ですよ、道木さん」

『良かった。偵察の方は?』


 桜海ソラが通信機を繋げると、機械からは道木修の声が聞こえてくる。

 拠点に設置されている通信機を用いて道木が桜海に通信してきたのだ。


「こちらはAチームの陣地を発見。拠点は見つかりましたが、牢屋は発見出来ていませんね。陣地内に居るAチームで判明したのは四名、残り一名は判明していません。それと宗谷さんの顔も見ていませんね」

『上出来だよ、ありがとう。それと伝えときたい事が二つ』

「もしかして既に誰か逮捕されましたか?」

『すごいな……そう、手賀達が逮捕された。こっちは残り十七人だ』


 まだ逮捕されている人間が居ないのであれば、牢屋に人員を割く意味は薄い。

 既に桜海にとっては推測の範囲内だ。


「もしかして救出作戦でしょうか?それならすぐに帰還しますが」

『それもあるんだけどな。重要なのは二つ目だよ』


 通信機の向こう側の道木が軽く息を吐いた音が聞こえ、そして口を開く。


『――――一回目の特殊任務だ』


 団体訓練開始からおよそ一時間半、一回目の特殊任務が訪れる。


 ■◇■


 そして、動き出す。

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