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ベツバラ!!  作者: 理想久
第一記 愛染王位日誌
50/82

Day8 記録開始

五十話になりました。いつもありがとうございます。

 

 記録


 ■◇■


 少年の名前は赤座護(あかざまもる)

 彼は地面を駆けていた。

 

 息も荒く、相当な距離を走ったのだろう。異能力者の肉体は体内に流れる異能エネルギーによって身体能力が強化されている。しかしその強化幅は多くの場合人間の域を出る事は無い。

 超人的な動きというのは、元々身体能力強化を能力とする異能か馬鹿げた異能エネルギー量が可能にするものであって、常人には不可能なものだ。

 だからこそ、彼もまた走っているのだ。


「くそっもう来やがった!お前等、臨戦態勢を整えろ!時間を稼ぐぞ!」

「「応ッ!」」


 彼の目の前で、数人の生徒が立ち止まっている。

 その生徒達は一人の合図によってそれぞれが異能領域を展開し始めた。

 異能領域の展開。それ即ち体外への異能エネルギーの放出。展開された異能領域は、いつでも異能が使える状態にあるという意思表示でもある。


 ある生徒は手元に輝く火球を発現させた。

 ある生徒は地面に数本の剣を呼び寄せた。

 ある生徒は周囲の砂を巻き上げて固めた。


 三者三様の異能力。待ち構えられており、赤座の速度から考えれば数秒後には相対するだろう。

 待ち構える三人の生徒に対して赤座は一人。しかし赤座は焦っていなかった。


「異能力……」


 赤座もまた異能領域を展開する。

 既に残り十数メートルの距離。

 

 故に、一足早く異能を使ったのは彼等の方であった。


「〈排熱気球〉!」「〈剣創造(クリエイト・ソード)〉射出!」「〈念動力(サイコキネシス)〉!」


 放たれる三種の異能力。燃える空気の球体、弾丸の様に飛ぶ剣、塊になった砂が赤座の元へと飛翔する。

 彼等の役割は自陣の防衛と、遊撃。故に彼等の異能力もまた遠距離攻撃が可能なもので統一されていた。遠距離から放たれる三種の異能は、それぞれに異なる特性を保有するが故に対処も困難と化す。

 

 異能が赤座へと飛ぶ。対して赤座もまた速度を緩めず、避ける様子は無い。

 対抗する物体が一瞬の内に間の距離を埋め……そして。


「――――〈隔壁(シールズ)〉」


 防がれる。


 三種の異能が赤座の生み出した異能、〈隔壁〉によって雲散霧消させられる。

 薄い水色の〈隔壁〉にも多少の罅が出来ているが、以前健在。赤座は速度を緩めない。


「チッ赤座の異能だ!撃ちまくれ!!」

「耐久も無限じゃねぇ!!押し切れば捕まえるのはこっちだ!」

「近寄らせるな!!」


 だがそれは彼等にとっても理解の範疇。

 半年もの間同じクラスで修練を積んだ彼等は当然、赤座護という人間の異能がどういうものか知っている。当然、その耐久力が高いという事も。

 

 〈隔壁〉は護る機能に特化した異能力。自身の周囲に防壁を展開し、耐久性は彼の異能エネルギーに依存する。しかし護るという機能だけを持つが故に、〈隔壁〉は非常に効率が良く、高耐久だ。

 赤座もまたそれを理解していた。三人の異能が集中砲火されようと、一度ならば確実に防ぎきれる。それも無傷で、速度を緩める事無く。そしてその想定は正解だった。


 流石に赤座の〈隔壁〉でも何度も先程の様な三種類の異能の集中砲火を受け止める事は出来ないだろう。

 しかし赤座は知っている。


 そして再び、彼等が異能を発現させようとする。

 連続しての攻撃、〈隔壁〉を破壊する為に。


 だが……。


「な……!?発動しない!!??」

「おい、まさか!?」

「しくじった!!離れすぎたんだ!」


 彼等の異能力は発現しない。

 異能領域は展開されている。一度の異能でエネルギーが切れるという事も有り得ない。

 そして彼等は確かに感じている。自分達はエネルギーを消費して異能を使った筈だ、と。


 ならば。彼等の想像は当たっている。


 〈理知減測〉。宗谷智晴の異能力。

 その効果は『宗谷の異能領域内で発生する同じ異能力を二度目以降前回のエネルギー分を減算する』というもの。

 この異能は、異能が発現出来なくなるのではない。異能が発現しなくなる異能だ。

 故に異能を使用した者は発現しなくても異能はしっかりと消費される。つまり、対象となった異能者には消費したという感覚だけが残る。

 この感覚は彼等がこの半年間で何度も感じた感覚だった。


 少し離れた場所で、宗谷が目を閉じていた。

 感覚を鋭敏に、彼は異能領域の展開にだけ集中している。


「拙い!宗谷の奴、完全にフィールドを支配する気だ!」

「早くこの事を――――」


 通信機を用いて、情報を伝えようとする。

 しかし彼等は一瞬だが意識から彼を外してしまう。


「タッチ」

「――――あ」


 触れられてから彼等は気が付く。既に距離は埋められ、赤座は彼等の元へと辿り着いていた。

 そして赤座の手が二人の身体に触れている。見ればもう一人も既に触れられたのか、地面に座り込んでいる。これが触れられた時のルール。


「ふぅ何とかなったね。宗谷の支援が遅れていたらちょっと危なかったかも流石リーダーだ」


 額に流れる汗を拭い、彼は離れた場所から自身を援護した宗谷へと賛辞を贈る。


「おっけ、じゃあ牢屋行こうか?」


 そして先程の攻防を感じさせない笑顔で赤座は自陣の方を指さした。


 ■◇■

 

 少し時間は遡る。

 訓練の為に用意されていた期間は終わり、遂に団体訓練当日の朝。

 訓練の場となる演習場の入口前に、四組の生徒達は集められていた。

 そして四組の生徒達の前には彼等の担任となる教師、杠信二が立っている。


「えー、これより今回の団体訓練、その詳細に関して説明を行う。後程ルール把握の為三十分のチームミーティングの時間を用意しているが、それぞれ把握に努めるように」


 教師は杠信二の他にも三年生の担任教師が三人、そして何人かの教師が傍で控えていた。教師陣の中には有木柚木の姿もある。


「では今回の団体訓練、その訓練内容について発表する。今回の団体訓練は……『追跡収監逃走』、所謂『ケイドロ』だ」


 ケイドロ。他にも地域によっては呼び名は様々あるが、おおよそ『ケイドロ』で伝わるだろう。基本的なルールとしては警察サイドと泥棒サイドに分かれ、警察サイドは制限時間内に泥棒サイドを全員捕まえる事を、泥棒サイドは制限時間内に逃げ切る事を目的として戦うゲームだ。

 ケイドロという言葉を聞いた生徒達に動揺は無い。過去には『鬼ごっこ』や『かくれんぼ』等も行われた事があった。今更『ケイドロ』の名前で驚く事は無い。

 そして、団体訓練がただの『ケイドロ』で済まされる筈も無い。


「先ず今回の『追跡収監逃走』においては、AチームBチームに警察・泥棒サイドの区別は無い。全員が警察であり、泥棒としての役割を果たす。そして相手チームを全員捕まえる事、これが今回の団体訓練における一つ目の勝利条件となる」


 AチームBチーム共に捕まえ合い、逃げ合うという形になるという事だ。


「お前達には一人に付き一つ、この逮捕用モジュールを配布する。掌に装着したこのモジュールは、相手チームの手の除く肉体に触れた際に起動し、相手に微弱な電流を走らせる。これが逮捕の合図だ。電流を感じた者は速やかに異能領域の展開及び抵抗を辞めるように。ああ逃げても無駄だぞ、逮捕のデータは教師陣に送られてくるからな」

「先生、どうやって相手チームの判断を行われるんですか?」

「事前に測定した異能領域の波長をモジュールには記録している。相手チームの身体に触れた時のみ作動し、逮捕の判別を行う形だ。他にも判別の要素はあるが、兎も角誤作動する事はよっぽどの無茶苦茶をしなければ無い。安心して捕まえろ」


 異能領域の波長は個人によって異なる。異能がそもそも千差万別なので当然と言えば当然だ。

 この逮捕モジュールはそうった生態データを元に逮捕の判定を行うのである。


「そしてケイドロと言うからには脱獄システムも存在する。各チームの自陣に設置されている牢屋に収監された生徒は、同じチームの人間が敵陣地に赴き牢屋にかけられてる暗号を解読する事で脱獄可能だ。ただし脱獄の度に暗号はより難解なものに変更される。また脱獄に成功した生徒は敵陣地を出るまでは捕まる事は無いが、同時に異能の使用並びに妨害行為等も禁止とする」


 そもそも敵陣地に存在している牢屋。そこに近づくだけでも危険だというのに、更には暗号が用意されている。一度捕まった生徒を脱獄させるには相当な危険が伴うという事だろう。

 脱獄の条件を緩くすれば、制限時間内に決着が着かない可能性が高くなる。団体訓練には明確に勝敗が決定されなければならない。

 そして脱獄してから捕まらないというルールは脱獄に成功した場合の即逮捕を防ぐためのルールだ


「そして最後、二つ目の勝利条件についてだ」


 杠信二が教師の一人に合図を送ると、その教師が杠信二の元へ先程の逮捕モジュールとは異なる小さな機械を持って来た。


「各チームに一人ずつ、頭領という役割の人間を設定する。この頭領が相手チームに逮捕された場合、そのチームには連絡が入り……逮捕から一時間以内に頭領の脱獄を成功させられなかった場合、そのチームは敗北。相手チームの勝利になる」


 脱獄の条件が厳しかったのはこのもう一つの勝利条件の存在も理由一つなのだろう。


 自チームの頭領が逮捕された時、自チームにだけ連絡が入り、相手チームには入らない。つまり相手チームには頭領が逮捕されているかどうかが分からない。

 チームメンバーの配分、配属、或いは運用。頭領という要素が入る事で複雑になる。

 陣地に籠る事で起こるデメリットも何かしら用意されているのだろう。


「あー、主なルールについては以上だ。ではお前たちのデバイスにその他禁則事項等を記した団体訓練についてのルールブックを送信する。ミーティングの時間内かつ、我々に回答が出来るものならば教師陣が質問に対応する。それでは各チーム健闘を祈る」


 団体訓練の説明は終了した。


 ■◇■


 そうして、時は現在に戻る。


私生活が忙しくなって来た事も相まって、ストーリー構成を再確認する為一週間程お休みさせて頂きます。投稿頻度がまばらで申し訳ございません。


質問や感想については執筆の励みになりますので、よろしければお願いします。

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