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ベツバラ!!  作者: 理想久
第一章 ようこそ異能学園へ
30/82

エピローグ

投稿頻度が落ちていて申し訳ありません。暫くはこのペースで頑張ります。


 ■◇■


 一先ず戦いの幕を下ろした二人。しかし新には確認しなければならない事があった。 


「それで、あの、銀子さん。見た……よね?僕の……その、異能を」


 新が尋ねる。 

 新が選択した事だとはいえ、新は自身の異能を使ってしまった。それは新が秘密にしていた最も重要な要素の一つであったものなのにだ。

 また暴走状態にあった白木銀子が新が異能を使う様子を見ていない可能性もあるだろう。異能の暴走状態とは半覚醒状態に近く、暴走中の記憶や意識の有無も個人差が大きい。

 しかしどちらであっても新は覚悟を決めていた。それは新が選択した事。白木銀子に対して『真摯に向き合う』と決めた新の選択だった。

 


「……はい、見ました。でもあれは、あの姿はまるで……いえ、止めておきます。私からはもう言いません」


 だが返答は新が予想していたものとは少し異なっていた。


「……聞かないんだね」


 彼女と向き合う事を選択したのだ。組織についてまでは話せないにしても、彼は彼女に自身について尋ねられたのなら出来るだけ答えて話そうと考えていた。勿論異能や生い立ちについてだ。

 しかし彼女の返答は違っていた。彼女だって気にはなっているのだろう。それだけ新の異能は特殊であり、また未熟とはいえランク4相当の白木銀子を打倒したのだ。

 気になって当然。普通の生徒である筈の新が実力を大きく隠していた理由や、彼の姿についても。

 だが、彼女は深く追求しなかった。


「ええ、聞かない事にします。新さんが隠したいと思っているのなら、私も隠しておきます。それに手を抜いていたのは私も同じ。今回の事も、全部互いの秘密にしましょう」

「そう、だね。……ありがとう銀子さん」

「お互い様です」


 白木銀子の心の内に溜まっていた澱みが全て消えた訳では無いのだろう。

 だが彼女が抱えていた意識が変化したのもまた事実。

 少なくとも二人の間には既にわだかまりは存在していないように見えた。


「さて、ここからどうしようか……」


 そう言って新が周囲を見渡すと、眼前に広がっているのは廃墟寸前となってしまった実習室。

 辛うじて壁や天井に穴が空いていないだけで、無事とは到底言えない状況である。午前中は無事であった部屋が夜の間にこうなってしまったというのは事件以外の何物でもないだろう。

 日付も変わり、もう数時間もすれば授業が始まってしまう。そうなれば学生だけでなく教師もこの惨状に気が付いてしまうだろう。

 それまでにこの壊れた部屋を修繕、或いは隠蔽するのは物理的に不可能だ。


「逃げ……いや、そもそもタブレットで入室してるから絶対にばれるか」

「そうですね。入室記録は学園側に確実に残っているでしょうから……」

「だよね。じゃあ黙ってても意味ないな」


 入室記録は当然学園側に把握される。

 ここで問題なのは彼等がこの場所を使ったという事もそうだが、この場所をここまで破壊する程の戦闘を行ってしまったという事だ。

 形式上とはいえ申請が必要な実習室の利用に加えて、ここまでの大惨事である。明日……もう既に今日行われるクラス内対抗戦の最終日に利用できない程の壊れっぷりだ。

 学園側からの制裁は免れず、良くて停学悪くて………


「退学、もあり得るでしょうね。これはれっきとした校則違反です。自然に考えて処分は当然でしょう」


 白木銀子の言う通り順当に考えれば処分は当然の帰結だ。

 そも校則という規則は守られる為に存在しているのであり、それを破っても何の処分も無いとなれば存在している意味が無い。


「……すみません、私のせいで……新さんまで」

「いや気にしないでよ。さっき言ったじゃないか、僕らは同罪だよ。それに僕だって暴れ過ぎたと思うし……そもそも銀子さんの異能は暴走してたんだからさ。きっと事情を話せば何とかなるって」


 とは言いつつも、事情を話せは困るのは新である。

 新には処分に加えてもう一つ問題がある。それは隠していた新の実力が学園側、ひいては生徒達にばれてしまう事だ。

 白木銀子の異能が暴走していたのであれば、入室記録からして彼女を止めたのは普通の生徒である筈の八十新という少年になってしまう。


 彼女を止める為という新の選択だったとはいえ、まだ任務が失敗した訳では無い。

 新に与えられた任務、『白木銀子の観察監視』だって組織の事が露呈しなければまだ続けようがある。が学園を退学となれば残り二つの任務すら遂行出来ない。

 『永宮雅成の観察監視』、『学生としてちゃんと過ごす』。特に後者は学生でなければ遂行出来ない任務であり、新の大前提として学園を退学になる訳にはいかないのだ。

 そして新の実力が知られるのも避けたい。

 新の実力が広まれば、彼の素性に興味を抱く人間も増える。そうなれば満足に任務を行えないばかりか、組織の事まで辿られてしまう可能性があるのだ。

 故に新にとって必要なのは『新の実力がばれる事無く』『退学にならない方法』であった。


「ですが、それでも不正利用は誤魔化せません。異能の暴走だけなら多少は配慮してくれるかもしれませんが……こちらは完全に意識的な行動ですから。それに………」

「それに?」

「事情を話すという事は新さんの事が知られてしまうという事でもあります。秘密にすると決めた以上、出来る限りの方法を選ばないと」

「……ありがとう、銀子さん」


 とは言っても八方塞がりである。

 実習室の修復・隠蔽が出来ない以上、二人に出来る事は素直に事情を話す事だけ。それだって新には二つのリスクが存在してしまう。

 しかし事情を話さなければ共倒れだ。不正利用に加えて実習室の破壊。罪は重く、重罰は免れない。

 

 タイムリミットはこうしている間にも刻々と迫っている。

 しかし考えられる現実的な具体的な案はやはり事情を話す事だけ。

 二人が静かに思考していた――――その時、彼等の後方から扉の開く音が聞こえる。


「――――!」

「誰ですッ!?」


 正体不明の存在に向けて、咄嗟に白木銀子が叫ぶ。

 新も身構え、すぐにでも戦闘に入れる様に体勢を整える。

 臨戦態勢。誰も居ない筈の場に存在する第三者。警戒する二人。


 しかし返って来たのは至極冷静で、安穏として、聞いた事のある声だった。


「誰って、知っていると思ってたけどね。それとも二人共入学式には参加していなかったのかな」

「あ、貴方は……!?」


 廊下を背に向けてこちらに歩いて来る人影を、二人共が見ていた。

 それは確かに聞き覚えのある声と、姿で此方に近づいてきていた。


「そもそも誰ですって、聞きたいのはこっちだと思うけどね。……まあ僕の方は知っているのだけど」

「生徒、会長……!?どうして、ここに……いや、まさか」


 現れたのは羅盤学園史上最年少生徒会長であり、三年生となった今でも生徒会長として全生徒の頂点に立つ者。新も白木銀子も共に、見た事がある人物。


 羅盤学園生徒会長、庵膳木星毅だった。


 ■◇■


「派手に壊したね。一応最新最先端の技術で出来た特殊素材製の部屋なんだけど。やっぱり強い異能者にはこの程度じゃ意味ないか」


 破砕された床の欠片を手で拾いながら和やかに話す。

 その姿には一切の敵意は感じられない。

 しかし彼は生徒会長。いうなれば学園の体制側に人間であり、現状では寧ろ新達を処罰すべき側の人間なのだ。油断は出来ない。


「ん、ああ大丈夫。僕は味方だよ。君達を悪いようにはしないさ約束する」


 そんな二人の視線に気が付いたのか、これまた当然の様に二人を悪いようにはしないと約束する。

 

「……」

「信用されてないな。これでも生徒会長なんだけどね」

「当然だと思います。急に現れて、すぐにそんな口約束をする人間を信頼出来ますか?」

「まぁそれもそうだね。確かに普通じゃ無かったかもしれないな。けど紙で書いて契約って訳にもいかない事位君達にも分かるだろう?これは君達を助ける為なんだよ」


 助ける、とはどういう意味なのだろうか。

 まさか、と新は思い当たりすぐさま庵膳木星毅に問う。


「会長は全部見ていたんですね」

「どうしてそう思う?」

「だって余りにもタイミングが良すぎる。まるで僕らの会話が終わるのを待ってたみたいなタイミングだった。それにさっきの口ぶりからして僕らの戦闘を見てたんですよね?だから入って来ても驚かなかった」


 新と白木銀子の会話が終わり、今後の展開を話し始めて詰まったタイミングでの登場。

 さらに強い異能者という発言に加えて、入室時に驚いて居なかった事。

 これらから考えれば新の推測も当然だった。


「答えて下さい、会長」

「うん、そうだね。僕は一部始終見ていた。白木君の吐露から異能の暴走、そして八十君の異能力の使用まで全部。だからどうした?それが何か問題でもあるのかな?」

「な――――」


 あっさりと認め、一貫して態度を崩さない庵膳木。

 予想に反したその振る舞いに新も白木銀子も言葉が詰まってしまう。

 何故庵膳木が見ていたのか、そのそも何故ここに居るのか。様々な疑問を言葉にする前に、だからどうしたと言われ言葉に出来なくなる。


「だから言っただろう。これは君達を助ける為なんだよ」

「……何をする気でしょうか」

「そう急く必要は無いよ。壊れたこの部屋はどうにもならないけど、君達の処分をどうにかする事は出来る。ただその為には少し話す必要があるだけさ」


 彼は手に握った床の破片へと再び視線を向けると、それを()()()()た。


「先ず前提として僕に出来るのは二つ。一つは白木君の異能暴走の証明だ。君達二人の証言じゃ甘いだろう。だから僕が証言しよう。君達以外の第三者が彼女の暴走を目撃した、しかも僕は生徒会長。どうかな、信用としては十分だろう?」

「どうって……それが本当なら、ありがたい限りですが……」


 新と白木銀子は互いに目を合わせるが、考える事は同じの様だった。

 庵膳木の言う通りだ。例え素直に新達が事情を話したとしても、そこからその事情を信じてもらえるかは別の話である。

 しかし生徒会長として権力を保有し、また学園側からの信頼も厚い庵膳木が証言してくれるのならば話は変わる。彼の証言はそのまま『事実』として学園に受け入れられるだろう。


「そして二つ目………白木君の暴走を止めたのは僕って事にしても良いよ」

「!?」

「どうした?余計なお世話だったかな」

「い、いや」


 庵膳木の言った事が本当なら、話は変わる。全ての問題が解決すると言っても過言ではない。

 彼等が抱えていた『学園側からの処分』と『新の実力の露呈』、そのどちらもが解決してしまう。


「……どうしてですか?」

「ん?」


 白木銀子が庵膳木に尋ねる。

 それも当然の疑問だ。何故ならこの行為、庵膳木にはなんの利益も存在していない。

 寧ろ隠蔽に加担し、学園に嘘を吐くという行為はそれだけでリスクを孕んでいる。生徒会長という身分を考慮すれば、それだけで相当なリスクの筈だ。


「成程、そう思うのも無理ないね。でも本当に裏は無いのさ。君達を助けるのは羅盤学園の生徒会長として当然の事だからそうするだけ。本当にそれだけだよ」

「当然……?」

「そう、当然。そうだね、強いて言うなら……白木君も八十君も入学式に僕が言った事は覚えているかな。まあ八十君は覚えてくれてたみたいだけど」

「~~~~ッ!!」


 そういえば庵膳木は一部始終を見ていたのだ。

 という事は当然、新達の会話も聞いていたという事であり………。

 冷静に振り返れば気恥ずかしい台詞を放っていた新を見られていたという事である。

 

 恥ずかしさに内心で悶える新。そんな新を無視して、庵膳木は話続ける。


「白木の令嬢、そして暴走した彼女を止めるだけの実力を有する君。君達は間違いなく『玉』だ。羅盤学園の為にもこれからのこの国の為にも、君達は此処で脱落していい異能者じゃない」


 強力な異能者の獲得。それこそが羅盤学園の、ひいては異能者養成学園の存在意義。

 雅写学園が特殊な事情にありながら黙認されているのもそれが根底にあるからであり、羅盤学園であってもその存在意義は同一である。

 一人の優れた異能者は、金の山以上の価値を有する。

 これだけの設備を投資し学園を運営しているのも全ては強い異能力者を育てる為。

 確かにその理念に照らし合わせれば、羅盤学園の生徒会長である庵膳木の行動にも説明がつく。


 しかし、まだ疑問も残る。


「ならどうして隠蔽するんですか。私の暴走の証明は兎も角、新さんの実力を学園に伏せるメリットは会長にとっても学園にとっても存在しない筈」


 それならば尚更庵膳木が新の実力を隠す手伝いをする理由が無いのである。

 口裏を合わせて広まらない様にする訳でも無く、彼が新のした行為を肩代わりするという事は新の実力を完全に包み隠すという事。

 会話も聞いていたという事は新が、これからも学園側に実力を晒す事を避け秘密にしようとしている事は知っている筈なのにである。


「そうだね。だけど何度も言うようにこれは君達を助ける為だ。助けるのに君達が不利を被るようには当然しないだろう?」

「それは……そう、でしょうが」

「そうだよ。……さて、もう暫くすれば教師達も出勤してくる。後は僕の方で何とかしておくから君達は少し休憩しておきなよ。寝てないんだろう?明日はクラス内対抗戦の最終日だ、少しでも体力を回復しておくといい」


 そう言って庵膳木星毅は後ろ手に手を振りながら実習室から出ていった。

 余りにもあっけない去り際に、何か質問をしようという雰囲気でも無く、二人は庵膳木の背中を見送るだけであった。


 実習室に残された二人。

 静かな部屋で二人は顔を見合わせる。


「……なんとかなった……のかな?」

「どうでしょう。まだ完全に信用出来る訳じゃありませんが……少なくとも今私達に出来る事は会長の言うう通りにする事だけでしょうね」

「とは言っても今から家に帰ってる時間は無いな。救護室も開いてないだろうし」


 基本的に二十四時間利用可能な羅盤学園の各施設ではあるが、救護室の様に担当の教師が居ない場合には使えない部屋も存在している。救護室も医療機器や薬品の管理の問題等から担当の教師が出勤していない場合は閉鎖される事になっている。


「そうですね……どこか休める部屋があればいいのですが……」


 二人が頭を悩ませていると、やがて「「あ」」と同時に声を出した。


「そうだ、休憩室。休憩室なら開いてるんじゃないかな」

「そうですね。あそこなら利用許可も要りません」


 その後二人は授業開始時刻まで休憩室で休む事に決め、実習室を後にした。

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