白木銀子の本質(加筆 2023 3/29)
遅くなりました。
「行くわ……〈金剛白装〉」
白い光が、彼女を覆う。
先に駆け出したのは白木銀子の方だった。
駆け、そして真っすぐに目標の方へと。
目標とは言わずもがな、新の事だ。
「――――っ!」
衝突。
同時に再び、今度は両者の身体が吹き飛ぶ様に移動する。
既に二人はステージの上から飛び出していた。
ドオン!という着地の音が響き、着地と同時に地面が罅割れる。
ギリギリと、新が押し倒され白木銀子がマウントポジションを取る。
白い光が〈金剛白装〉によって生み出されたエネルギー体が彼女の手を覆っている。
鋭利な獣の、猛虎の爪。獲物を引き裂く攻撃的な形状が、白木銀子の両手から延びていた。
爪が当たる直前で新は白木銀子の腕を止め、攻撃を受け止めている。
硬質化した新の肉体が攻撃をすんでの所で止めていた。
長さは然程でも無い。精々拳一つ分より少し長い程度であり、他の遠距離を得意とする異能とリーチの差は比べるまでも無い。
故に肉薄している状況とはいえ受け止められている。もう少し長ければ例え腕の部分を受け止めたとしても爪は新の肉体を傷つけ、切り裂いていただろう。
しかし、ソレが持つ凶悪さは一目瞭然だった。
何故ならばそれはただの獣の爪ではない。
〈金剛白装〉によって象られた爪であり、超高密度のエネルギーそのもの。非実体でありながら物質に干渉するエネルギーの塊なのだ。
その攻撃は新の身体を十分に傷つけられる威力を誇り、そして現在のソレは対抗戦で見せたものよりも何倍も濃密なエネルギーを秘めている。
受ければ新とて明確な負傷を負う事は確実だろう。
一瞬の停滞。しかし停滞をそのまま許す彼女ではない。
すぐさま第二撃が襲う。
受け止められた片手はそのままに、もう片方の腕を振りかぶる。
その手にも勿論爪が存在している。〈金剛白装〉で覆われた手は片方だけではない。
咄嗟に新は腕に力を込め、白木銀子の肉体を弾く。
弾かれた白木銀子の攻撃はそのまま軌道を逸らして通り過ぎてく。
新は起き上がり、後方へと後ずさる。
逃走を図った訳では無い、しかし何度も押し倒される訳にもいかない。
だが、攻撃も出来ない。
白木銀子の纏っている〈金剛白装〉に込められたエネルギーは対抗戦時の数倍の量だ。純粋に使用するエネルギー量が増えれば異能は強化されるが、〈金剛白装〉の場合はそれだけに留まらない。
〈金剛白装〉とは優れた武器であり、鎧。圧縮されたエネルギーは量が増えれば増える程に硬さを増し、打ち破るにはより大きな威力の攻撃を要する。
そしてそんな攻撃を行えば間違いなく新がどういう存在であるのか判明してしまうのも必然。
現在の白木銀子は同年代の人間が出せる異能の出力を大きく超えている。
〈金剛白装〉に匹敵するだけの出力でなければ攻撃にもならない。逆に言えば、今の彼女に『攻撃』をするという事は……それだけの実力を持っている証明になる。
問題はそれだけではない。推測された新の正体から組織にも手が伸びてしまうかもしれない。
となれば任務の失敗だけでは事は終わらない。
同僚にも、そして他ならないボスに対しても迷惑をかける事になってしまうのだ。
だから『攻撃』は出来ない。
弾き飛ばされ、一瞬体勢を崩した白木銀子。
しかし、すぐに持ちなおし後方へと退いた新へと再び跳躍した。
硬質化した新の右腕と、〈金剛白装〉を纏った白木銀子の右腕が激突する。
まるで金属と金属がぶつかり合ったかの如き衝突音が空間に鳴り響き、激突と共に発生した衝撃が二人の肉体を互いに弾き飛ばした。
「………」
「………」
弾き飛ばされたとはいえ、お互いに体勢は崩していない。
互いが互いの一挙手一投足に意識を集中し、その動きの全てを見んと瞬きすら忘れていた。
加速された思考が、その一瞬を何倍にも引き伸ばす。
やがて、先に口を開いたのは白木銀子の方であった。
「やっぱり、全然違う。試合は本気じゃなかった……いいえ、それどころか私なんて相手にすらしてなかったのね」
「……そんな事は」
「そんな事あるでしょ?」
今の白木銀子は明確に対抗戦の時よりも強い。
それは彼女が対抗戦の時よりも本気だからだ。
〈金剛白装〉に込められたエネルギーの量を見ても、初撃から爪の攻撃を仕掛けた事も、獣の爪を模す技である〈金剛白装・五選〉を用いた事も。そして何より、彼女が発する雰囲気がそれを物語る。
「今の攻撃は対抗戦の最後に使ったのと同じ……いえ、それ以上の力を込めた。なのに貴方はどうして平然と防いでいるの?」
となれば結論も容易い。いくら新が否定した所で、否定しきれない。
今の彼女は軽く見積もっても対抗戦時の数倍のエネルギー量。ならば対抗戦において彼女に防戦一方だった新が、初撃のみならず追撃までも防いだ事は有り得ない事だ。
例え『攻撃』をせずとも、その対応が新の隠した実力を明るみにしてしまう。
「偶然、なんて言い訳通用しない。偶然で白木の術式は防げはしない」
白木銀子が近づく。両者の距離は数メートル。
この距離は白木銀子にとって移動に一秒もかからない。にも拘わらず彼女はゆっくりと歩く。
白き光が、彼女の身体の表面から静かに溢れている。
白き光の流れは、流れのままに彼女の両手に集い……“五選”によって形作られた獣爪を更に長く、鋭利に切っ先を尖らせる。
組み合った際に爪を伸ばされていれば、防いだとしても爪は新の身体を切り裂いただろう。
先程の攻撃ですらまだまだ本気では無かったという事であり、彼女が新の対応を測る為の攻撃でしか無かったという事なのだ。
白木銀子が右腕の袖をまくり、右腕を露わにする。
そこにあったのは切り傷か、もしくは掠り傷。ごつごつとした岩肌に肉体を擦った時の怪我の様な、そんな傷だ。
「それ……」
「対抗戦の時に貴方に付けられた傷よ」
「……」
「〈金剛白装〉を貫通して傷を与えられる学生が今の日本にどれだけ居るんでしょうね。……少なくとも私に苦戦する貴方が出来る芸当じゃない」
それは自負だった。白木銀子という少女が自分自身に抱いている自負。
白木という名前に誇りを持っているからこその自負。
実際に彼女の論理は正しい。〈金剛白装〉は鎧である。
『攻撃』無くして突破は有り得ない。
新の疑念は正しく、彼が対抗戦の最後に咄嗟に出した力の一端は一部ではあれど〈金剛白装〉の防御を貫通してしまっていたのだ。
それは『攻撃』では無く『防御』故の行いだが、白木銀子にしてみればそちらの方が余計に不快だろう。白木銀子本人にしてみればそれこそが動かぬ手加減の証拠だったのだから。
「手加減してたのね」
「違う、僕は……!」
新は否定しようとして、しかし言葉が続かなかった。
何が違うというのか。何が違って、反論しているのか。
新に彼女を傷つけようとする意志は無かった。それは断言できる。
そして新なりに言葉の真意を考え、行動した。それも断言できる。
その結果がこれだ。夢でも幻でも無く、現実なのだ。
正体を隠していた、手加減もしていた。
それが事実であってそれ以外の何物でもないではないか。
気が付いていたのか、或いは無意識だったのか。
彼が思考を止めたそれらは今になって彼自身に大きなしっぺ返しを与えていた。
彼が避けていた結論に、彼を向かわせようとしていた。
「手加減して、私と戦って、そして負けて……それで貴方がしたい事は終わったの?」
言葉が出ない。否定できない。
「内心で笑ってたの?あの『白木』がずっと弱くて、その私がずっと弱くて。それで満足した?実力を測って遊んだの?」
「そんな事……何を言い出すんだ。そんな事ある訳がないじゃないか」
彼女の言葉は的外れだ。少なくともその時の新に彼女を貶める意図は無かったし、勿論内心で笑っていたという事も無い。強さ云々に関しては寧ろ逆だ。
周囲にも彼と彼女の実力差は歴然の様に映っていただろうし、この決着自体に不審な点は存在しない。
だから新は分からない。
結果的に白木銀子が勝利した。新は敗北した。
あの『白木』が弱かったとも感じていない。実力を測る為とはいえ彼なりに誠意をもって取り組み、真摯に向き合ったと感じていた。
そもそも手加減していたのは白木銀子も同じな筈だ。白木銀子も今だした実力と対抗戦で出した実力とでは余りに差があるだろう。
そこに何の違いがあるのか新には分からないのだ。
一体全体白木銀子がどうしてそこに、ここまで激怒しているのかが理解出来ないのだ。
「じゃあ証明して」
「えっ……?」
「アンタの全部で、証明してよ」
「それ、は……」
『真摯に向き合え』。
言葉が彼の中を往復し、何度も響く。
気休めの筈の言葉ももう彼の脳には理解しがたい何かとなってしまっていた。
「僕、は……」
「答える事も出来ないのね」
答えが出せない。
その時。
「……アンタは考えた事ある!?」
「――――!」
常に冷静を崩さなかった白木銀子が、常に自然体の雰囲気を崩さなかった白木銀子が叫んだ――否、吼える。
雰囲気こそ変われど、言動こそ変われど、それでも彼女らしくない行動に新は一瞬動きを止めて彼女の言葉の続き静かに待った。
「自分の全部が!見知らぬ誰かに勝手に評価されてッ!関係ない誰かに……また勝手に馬鹿にされる!!勝って当たり前、負ければ『違う』……そんな環境で……!!」
彼女は泣いていた。
涙こそ流していなかったが、それは確かに慟哭だった。
聞き入ってしまうような凛と美しい声を震わせて、喉が千切れるのではないかと心配する程に叫ぶ。
「認められずに、それでもやらなくちゃいけないから――――!」
溜めこんだものが噴出して溢れ出す。零れて、堪らない。そんな感情の濁流が彼女からとめどなくあふれ出ていたのだ。
「そんな気持ち、知らないでしょう!!??感じた事も無いでしょう!?」
空間に彼女の声が響き、そして消えた。
耳に届くには十分過ぎる音量だった。
「――手なんか抜かせない」
それは天帝近衛四家が一つ。
「――本気で来なさい」
西の守護を司る家系であり、白く硬き獣の家系。
「じゃないと私、アンタを絶対に許さないから」
白木銀子。白銀の如き少女。
■◇■
本気。その言葉の重みは今まで新が味わった事のない意味を抱えていた。
「〈金剛白装〉ッッッ!!」
再び彼女が異能を使う。
だが〈金剛白装〉は正確には異能ではない。
古くから存在する名家は超常史以前から続く家系だ。そして当然異能とは超常史に〈巨龍〉によって人類に与えられた力の事を指す言葉でありモノだ。
であれば白木家は超常史以前より力を持つ家系であり、彼等の持つ力とは異能力では無い。
超常史と共に人類に付与された異能力とは異なる力。古くは魔術や呪術と呼ばれてきた力、それが彼女の異能の正体。
天帝近衛四家・白木に伝承された血統が発現する共通の術式、名を〈金剛白装〉。
そして魔術とは異能と似て非なるもの。その性質もまた異なるもの。
『異能』は単一の機能しか持たない。正確にはどれだけ使いこなそうが根本となるのは同じ能力でしかないのである。
〈盾創造〉がどれだけ練度を上げたとしても認識上の『盾』しか生みだせない様に。異能力者はどこまで行っても『一つの現象』を異能として使えるだけだ。
しかし魔術は違う。
名家とは即ち魔術師の一族であり、彼等は何でもできるのである。
エネルギー……旧時代的に言うのなら魔力や呪力が尽きぬ限り、魔術を用いて様々な現象を世界にもたらし、影響を及ぼす。それが魔術師の一族。
だが彼等は万能ではない。実際にエネルギーが多くとも現象を引き起こすには様々な制約が存在している。それは才能、肉体の向き不向き、起こす現象への知識や、自身の認識等才能による部分が大きい。
故に魔術師は一族を作り、長い年月をかけて血統を生みだす。そして理論化された魔術……家系に伝承される術式を生みだすのだ。
長く続いた家系程、魔術師の才能の現れはより顕著になる。これが所謂魔術師の一族の中でも名家と呼ばれる者達だ。
そして白木家もまた定向進化によりその特徴を引き出した魔術師の一族。
白木とは『肉体の強化とエネルギーの操作』を血統の基礎とした家系。
術式・金剛白装の本質とは『エネルギーの圧縮・凝固』。
仮に異能として名を与えるのならば〈白木血統〉だろうか。
白木銀子が〈金剛白装〉を纏う。
それは鎧でありながら、獣の様にも見えるしなやかで頑強な体躯。
それは単に非実体の飾り等では決してない。
最初の攻撃の様に、〈金剛白装〉で纏った超高密度のエネルギーは物理的な衝撃を衝突した存在に与える攻性防壁である。まともにぶつかれば新とて大きなダメージを負う事は避けられない。
「“五ッッ選”ッッッ!!」
「――!!」
白木銀子が腕を振る。
瞬間、彼女が纏っていたエネルギー体がが指先から延び、巨大な猛虎の爪へと変化する。
咄嗟に回避行動を取る新。
彼が右方に避けた瞬間、着地した彼女の爪が轟音と共に床を破壊した。
残されたのは五本の傷跡……“五選”の名の通りに床に現れた五本の痕跡。
今までの比ではないその攻撃は……正しく新の命を刈り取るに相応しい威力。
「戦えッ!八十新!!アンタ迄……アンタ迄、私を馬鹿にするのかッ!?」
「……馬鹿になんて、していないッ!」
再び振り下ろされる爪。
またも新は避けるが、埒が明かない事は十分に理解していた。
彼女は莫大なエネルギーを纏い、今や巨大な白き人虎と化している。
あくまでもエネルギー纏った姿で有る為、実際の中身は元の彼女のサイズなのだが、纏ったエネルギーは物理的な衝撃を与える攻性防壁。実体を持つも同然だ。
リーチが違う。一撃の価値が違う、重みが違う。
リーチは言うまでもない。エネルギーを操作し、近距離、中距離の攻撃を得てとする彼女と新。攻撃の方法が違えばそれだけ手数も異なってくる。
そしてそうなれば一撃の価値が違う。
彼女の攻撃はエネルギーを消費しているのではない。纏ったエネルギーを操作しているだけに過ぎない。故に消費は見た目よりもずっと少ない。“五選”を連続して放ったのがその証拠だ。
ならば重みが違う。チカラを用いて身体強化を行ってはいるが新は生身。対して彼女の攻撃は一撃が必殺級。一発KOも視野に入る攻撃的な力。
そのどれもが一流。二流ではない。
この学園で、現在の時点でも彼女と互角に戦える者は少ないだろう。ランク4の中でも最上位に近い素質を持っているのは疑いようもない事実だ。
一体、どれだけの努力を重ねてきたのだろう。
一体、どれだけの苦労を重ねてきたのだろう。
これだけの実力を容姿を知恵を備えながら認められないと、彼女は言う。
それは一体……どれだけの苦痛だったのだろう。
きっとそれは、新には想像もつかないものだったのだろう。
「〈金剛白装〉……“天延”ッ!!」
白木銀子の脚部に〈金剛白装〉の鎧が集中する。
やがてそれは猛虎の足を形どり――地面を蹴り抜いた。
「――ッ」
爆ぜる音。それがまさか脚力によって実習室の床が蹴り砕かれた音だとは思うまい。
爆発的な加速、それは今まで存在していた新と白木銀子の距離を一瞬の内に潰した。
「異能力……!!」
咄嗟の判断。新は異能力を使おうとする。
しかし……間に合わない。
ただでさえ身体能力を強化する〈金剛白装〉。それを更に瞬発力に特化させた技、それが“天延”。
鎧を集中させる事で『強化』の性質を増加させる高度な技能。
「“五選”!!!」
近距離から放たれる減衰無し、直撃する〈金剛白装・五選〉。
衝撃が、新を襲う。
ドガアァァアン!と、轟音と共に新は後方へと吹き飛ばされた。
壁に衝突する。それは奇しくも二日目に彼女が見せた光景、それを数倍か数十倍か、もっと凄惨に凄烈にした光景の様だった。
強化素材から作られた実習室、その壁が衝突と共に罅割れる。
あたかも地割れの様に、平面が二つに割れんと亀裂を生みだしていた。
その原因は八十新、一人の少年が壁に衝突した事で生まれたものであるとは信じ難いものだ。しかし事実、新は派手に吹き飛ばされ、白木銀子は肩で息をしながらも実習室の中央に立っている。
「はぁ……はぁ……ッ!」
呼吸は荒く、彼女の消耗も大きい事が分かる。
〈金剛白装〉は確かに燃費の良い力だが、それはイコールで体力の消費まで抑えられるという訳では無い。
寧ろ今の彼女の様に、衝動のままに身体を動かせば纏ったエネルギーは尽きずとも体力が底をつくのは目に見えていた。
今の彼女は獣の様に獰猛で衝撃的だ。しかし悪く言えば精細に欠けている。
大振りかつ、単純。技術そのものは高度だが、攻撃手段は技よりも膂力に任せたものに近づいていた。
しかし、彼女は止まらない。
止められない。
目の前の存在、八十新。彼女の在り方と相反する存在。
だから、止められない。
彼女の中に存在するのは、目の前の敵を排除せんとする衝動。
名状しがたい憎悪が彼女の精神を蝕む。
それが学内で使う事の無かった〈金剛白装〉の“技”を彼女に使わさせ、彼女の血統に宿る獣の力を隆起させた。
止められないのだ。
「あ……れ…………?」
否。
――止めてはいけない。
そうだったのか。自分は果たして、そんな事を思って此処に居るのか。
客観的な自分が今の自分を疑問視する。
今自分がしている事は何だと。今自分が思っている事は何だと。
「お、おか……」
しかし疑問が答えに結びつく前に。彼女が気が付いてしまう前に。
彼女の中の何かが、彼女自身を縛り付け、そして。
「ああぁああぁあぁぁぁあぁぁぁ」
精神がぼろぼろになっていく。
それすらも白木銀子は制御出来ない。
「た、立てたてたてタテたテ立テたてたて……!!!!どうシテ立たナい!?ぁぁぁあぁあぁらぁぁあたァァァァァ!!!」
力が暴れ狂う。制御出来なくなった彼女の異能、いや術式が彼女の手を離れ制御権の外側へと。
剝離した彼女の『本質』が意識とは別の言葉を吐き出し続ける。
それは異能の暴走。彼女の場合厳密には異能では無いが、結局の所原因は同一だ。
異能とは個人のパーソナリティに由来する力。故に強い精神への衝動、或いは欲求、時にトラウマによって変質ないしは暴走する事があるのだ。
白木も超常史に入り異能者の血を取り込んだ今、その性質は受け継がれている。
白木銀子。
正統な白木本家の生まれた少女。
鉱石の如き美しさを纏う少女。
彼女は一流だ。しかし彼女にとって未経験の事柄、それが感情のままに戦闘するという経験。
自分を律し続けていた彼女が初めて感情を吐き出しながら力を振るったというその状況。
異能者の始まりは知る事にありと、誰かが言った。
それは戦いに勝つ事であり、新たな挑戦を成し遂げる事であり、自身を戒める為のものでもある。
彼女は今、自身の悪意に飲み込まれようとしていた。
異能の暴走である。




