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ベツバラ!!  作者: 理想久
第一章 ようこそ異能学園へ
16/82

クラス内対抗戦 その4(加筆 2/9)

随分と遅れてしまい申し訳ありません。


追記:何故か保存されて無かったので加筆しました

 

 ■◇■


 クラス内対抗戦二日目。

 新、白木銀子は今日が初試合である。


 既に試合は始まっており、今もステージの上では生徒達が戦闘を繰り広げていた。


 試合は基本立ち見、というか実習室には着席出来る様な椅子が存在しないので必然的にそうなるのだが、中には床に胡座をかいて興味無さそうにしている者も居る。

 そこには昨日までの熱気は存在しなかった。


(まぁ仕方ないか、あんなの見せられたら萎える奴は一人や二人出てくる)


 それは慣れもあるが、期待値の差。

 一日目に試合した者達は一先ず自身の番が終わり、観戦する体勢になる。しかしそういった者達が何に注目するのかと言えば……白木銀子だ。


 言ってしまえばこの時点での生徒達の強弱は殆どが運か相性だと彼等は理解したのだ。一部の例外を除いて。

 最初の試合もそうだったが、安彦元と顕谷美織子との間に大きな実力差は存在しなかった。ただ物理攻撃を主にする安彦と、それを防ぐ方法を持った顕谷では相性があった。

 そしてその相性差を何とかする技術、言わば自身の弱点を補う術を未だ彼等は習得していない。


 しかし一部の例外。それが永宮雅成の試合だった。

 圧倒、それ以外の言葉を見つけられない勝利。目の前のこれがランク4、文字通りの格の違いであると理解させられた。


 同時にその結果は一つの推測をさせた。期待と言い換えても良いかもしれない。

 同じくランク4である彼女……白木銀子は如何程の実力を持つのだろうか、という事だ。


「頑張ってね!銀子ちゃん!」

「ええ、期待に応えられるよう頑張りますね」

「銀子ちゃんなら楽勝だよ~」


 二人が談笑している姿を見ながら、新は考える。

 それは今後の展開についてだ。


(永宮雅成と戦うのは今は無理だ……このまま学園生活を続けていけば機会はあるだろうし、無理に新人戦に出場しなくても良い。けれど)


 永宮雅成は確実に新人戦の代表二名に入る。これは現状の実力では確定的だ。

 もしかすれば永宮に相性の良い異能力者が居るかもしれないが、それでも彼との間に存在する力量の差を覆すまでは行かないだろう。

 そして永宮と同じく、このまま行けば間違いなく白木銀子がトーナメントを勝ち進み代表に選ばれる。


 なら新の目の前に存在する選択肢は二つ。

 白木銀子と戦うか、戦わないかである。


(一戦、一戦勝てば白木銀子と当たる。これはまたとないチャンス……だよな?)


 出来る事なら直接戦いたい。その方が彼女の実力をはっきりと確かめる事が出来る。

 しかし懸念点もあった。


 それは、新が()()()()力を使うかという事。


(……そろそろ白木さんの試合が始まる。取り合えずは観戦かな)


 ■◇■


「さて次の試合は~白木銀子さん対片山華心(かたやま かしん)さん!」


 杠に呼ばれ、二人の女生徒が壇上へ。


 一方は言わずもがな白木銀子。緊張の欠片も見られず、自然体の美を体現し壇上へと登る。

 今まで試合を真面目に見ていなかった生徒も立ち上がって白木銀子の試合風景を見ようとステージの周囲に集まっていた。


 そんな注目されている白木銀子とは別、もう一人の女生徒は新には見覚えの無い人物。正確には見覚えの無い、というよりは非常に印象として薄い人物だ。

 特段緊張している様子も見られないが、どこか自信なさげというか主張が薄い。そんな印象である。


「あ、華心さんだ~」

「知ってるんだ?」

「まあね~でもあんまり話しては無いよ?入学してからは銀子ちゃんと新君とばっかり話してるからね~。華心さんとは座学の前でちょっとだけ話したんだ~」


 意外にも舞桜瞳は新と白木銀子以外の人間とも交流があったらしい。

 考えてみれば社交的な彼女だ、座学前の少しの時間でもクラスメイトと会話していてもなんらおかしな事は無い。普段三人で行動しすぎていて見落としがちだが、彼女は意外と情報通な所もあり、新の知らない交友関係がまだあるのだろう。


「ていうか測定試験の時に全員名前は呼ばれてたよ~?」

「うっ……それどころじゃなかったんだよ」

「あ、あはは~そっか~……ごめんね?」

「良いよ……それで、どんな人なんだ?」

「えっとね~う〜ん、多分見てた方が早いかも?」


 舞桜がそのままステージに立つ二人の方へと視線を移す。

 そこでは向かい合い、準備を終えて今にも戦闘を開始せんとする二人の姿があった。


「準備は良いね?では用意…………始めっ!」


 杠の開始宣言。

 同時に先に仕掛けたのは、白木銀子。


「――〈金剛白装〉」


 新にとっては二度目の目撃となる白木銀子の異能力の使用。

 宣言と共に、彼女の四肢が白い光によって覆われていく。

 それはあたかも光の鎧を纏っているかの様に、或いは武器を装備するかの様に。


(あの時は一瞬だったけど、予め使っておくとこんな事も出来るのか)


 あの男子生徒を吹き飛ばした時は手だけに使用していたのだろう。だから遠目では分からなかった。

 しかし今は覆っている部分が余りにも違う。手足がはっきりと光によって覆われている事が視認できる。つまり込められたエネルギーはあの時とは格段に多いという事。


「では……行きますッ――!」


 白木銀子は律儀にも行動宣言を行い、強化された脚力を以てステージを蹴る。

 それは初日の安彦元と同じ、異能力者の基礎とも言える身体能力強化に似ている光景。

 実際原理は同じだが、しかし本質は全く異なるものだ。


 最早身体能力の延長線上にある、という程度ではない。

 安彦があくまでも純然な異能エネルギーによる身体能力強化であったのに対し、彼女はその強化そのものが異能力の効果なのだ。


 故に、強化の幅もまた別格。

 一瞬彼女の姿が消えたのかと錯覚する程の移動速度で、白木銀子は目の前の対戦相手、片山華心の方へと疾走した。


「破ッ!」


 発勁。突進の勢いをそのまま攻撃に活かす技。

 白木銀子の掌底が片山華心へと突き刺さる。


 ドンッ、という音と共に後方へと突き動かされる片山。

 地面と足とが擦れる音、それがどれ程大きな力で彼女が弾かれたのかを物語っている。


 あのナンパ男子にした事と根本では同じ。強化された肉体の、純粋な物理攻撃。あの時でさえ吹き飛ばされた生徒の身体は壁を破壊していた。それよりも明らかに大きな衝撃が、片山を襲う。


 誰もが一撃の決着を予見した。

 永宮雅成がそうであった様に、白木銀子もまた一撃によって沈めるのだと。


 しかし……。


「痛ッたいなぁもう」


 吹き飛ばされた片山華心は痛みこそ訴えてはいたが、倒れていない。

 しかし注目すべきなのはもう一点。


「流石に効いたよ。でも、こんなもんじゃないよね?」


 彼女の手が、獣の如き毛によって覆われていたのだ。


「成程……肉体変化系統ですね」

「当たり。ま、珍しくは無いでしょ?それに全員の前で披露されてるし……ってあんたらはそれどころじゃなかったんだっけ?」


 片山がステージ周辺に居る新の方をちらりと見る。


「すいません」

「良いのよ、でもこれで力の差は無い訳ね。さッ続きをしましょ?」

「ふふ……えぇそうですね」


 ■◇■


 肉体変化系統。それは創造系統とは異なる異能系統の一つ。


「あははッ!!」

「……」


 『何か』を生みだす創造系統とは異なり、肉体変化系統は文字通り肉体を変化させる。

 それは時に鋼そのものであり、武器であり、そして……。


「良いわね!ケモノ()の力に平気で付いて来るなんて!流石白木なのかしら!」

「それ程でも無いです……よッ!」


 ステージという舞台の上で、二人の少女が格闘を繰り広げる。

 それはこれまで行われて来た試合とは趣が違うもの。ただ見ているだけなら異能の介在が分からない、純粋な力と力のぶつかり合い。

 しかし見ている内に理解出来るだろう。生身のそれよりも威力も、速度も異なるその格闘。片や獣の肉体を得て、片や光の装甲を纏い、お互いに戦いあっている。


 舞桜瞳が見ていれば分かると言ったのはこういう事だったのだ。

 異能を使う前の片山から感じた雰囲気と今の片山から感じられる雰囲気は全く違う。

 

 肉体変化系統、その中でも動物に変化する類の力は変化対象の動物の性質を反映する。

 そうなれば当然、肉体だけでなく精神もまた影響を受けるのは当然だ。

 これもまた片山華心という人間の精神の一側面、動物の活力が精神に齎した彼女。


 そして試合は進む。

 お互いに肉弾戦を得意とする異能力者。

 一度防がれたのなら、それ以降同じ力で攻撃しても防がれるのは当然。

 三分という時間では疲労し、極端に体力が減衰する事殆ど無い。


 殴る、蹴る、薙ぐ。多彩な体技と純然な暴力。

 それらが繰り出されていく時間は、短い制限時間を感じさせない程に濃密だった。


 しかし試合時間は残り半分を切った。

 互いに決め手に欠け、後半へと移行する。


「はァ……はァ……はァ……」


 先に息が切れ始めたのは片山華心の方だった。

 戦いの中でも片山は大きく身体を動かして攻撃していた。その反動か、未だ白木銀子が構えを崩していないのに対し、彼女はやや緩んでいる。

 動けないという程では無いが、着実に疲労は蓄積しているのが見て取れた。


 そしてニッと笑うと、片山は白木銀子の方を指差す。


 ――次で決着だ。


 その行動に込められた意味は、単純だった。


「……」


 白木銀子にもそれが伝わったのだろう。

 白木銀子もまた微笑を片山に返す。


「スゥ……〈身体狼化(メタモルフォーゼ)〉ッ!!!」


 片山が異能力の名を宣言する。

 肉体変化系統は肉体そのものを異能によって変化させる力。故に他の異能力よりも使用する際のイメージは容易い。

 しかし、全身となればまた別。


 片山の肉体が毛に覆われ、変化する。

 骨格が変わり、体躯もまた大きく。


 その姿は伝説の人狼そのもの。

 しなやかな肉体、しかし膂力は獣のそれ。


 全身を変化させるのは難しい。特に頭部を変化させる事は未熟な異能力者にとっては困難。

 片山もまたこの半人半獣の形態を維持できる時間は少ない。使用後、暫くは肉体を無理に変化させた反動で筋肉痛に似た状態になり異能力を使えなくなる。


 しかし、決着の一撃を決めるのならここだと、彼女は判断した。


「GAAAAAAAAA!!」


 跳躍、同時に発されるのは飛び蹴り。

 右から左へと振るわれた足は、既に獣のもの。

 獣の膂力を以て彼女は白木銀子を場外へと弾き飛ばそうとした。


「〈金剛白装〉」


 だが白木銀子もまた異能を使う。


 手足に纏っていた光が、より大きくそして輝きを増す。

 今までが単なる鎧だとすれば、今の彼女が拳に纏っているのは、より厚いガントレット。光が集まり、先程より一層厚みを増している。


 そして、ゴォン!という衝撃が実習室に響いた。

 周囲の生徒もまた食い入る様にその光景を見ていた。


 純粋な力の衝突に負け、押し負けたのは……片山華心。


 ステージの外で半人半獣の姿も解け、元の少女の姿で意識を失っている。


 どう見ても戦闘続行は不可能だった。


「――勝者、白木銀子!!」


 ■◇■


 試合が終わり、場外の片山の元へ白木銀子と杠が近づいていく。


「いたた……」


 彼女等が近づくとほぼ同時に片山は意識を取り戻す。

 恐らく白木銀子が殴ったであろ足を擦りつつ、起き上がろうとする。


「良い試合でしたね、片山さん」


 そこに手を差し出す白木銀子。

 その姿はついさっきまで肉体言語で語り合っていた人間とは思えない程に清廉だ。


「あ、え、あっはい……すい、すいません」


 そして片山の方も打って変わって挙動不審とも言える態度で白木銀子の差し出した手を取り、立ち上がった。どうやら足を痛めてはいるようだが、立ち上がれない程では無いようだ。


「あの、私、本当……異能を使うと、変になっちゃって」

「全然変では無いと思いますよ?とても強く、迫力のある姿でした」

「ははは恥ずかしいので……そこらへんで……」


 新の初見の印象の様に、普段は気の弱い女性なのだろう。けれど内に秘めたるは比喩ではなく獣の心。この二面性が彼女のパーソナリティなのだ。


「今回はギリギリでした。是非また戦いたいですね」

「こ、光栄です……」


 そんな二人の会話を見ながら、新は考えていた。


 それは『白木銀子』の強さについて。


(……汚れ一つ無い)


 手を取り仲の良さそうに話す二人。

 しかしその見た目は余りにも違う。顔や身長、体格ではない、服装だ。


 片山の服は一部が破れてしまっている。

 学園公式の運動着は頑丈に作られてはいるが、しかし破れないという訳ではない。

 彼女の場合は自身の変身による内側からの膨張もあったが、その程度で破れる程は脆くない。

 つまり彼女の服が破れているのは、白木銀子の攻撃を受けたからだ。


 対し、白木銀子。

 彼女の服には一切の傷が無い。そもそも白木銀子は服装を着替えていない、制服のままだ。

 羅盤学園の制服はそれ単体である程度の異能や衝撃に耐えられる様に設計されているとはいえ、伸縮性等は運動着と比べるべくも無い。

 にも拘わらず、彼女の服は傷も汚れも付いていない。


 それは白木銀子がこの試合の中で、まともに片山華心の攻撃を受けた事は一度も無かった事を示している。


 〈金剛白装〉によるエネルギーの鎧が、片山の攻撃を全て遮断し受け止めていたのだ。


 つまり白木銀子は未だ異能を攻撃には用いていない……という事だ。


(永宮雅成は強かった。圧倒した、瞬殺だった。けど白木さんは)


 対戦相手を瞬殺した永宮雅成は確かに強い。

 ランク4に相応しい異能力の練度、この若さではトップクラスの異能力者だろう。


 では白木銀子は。

 彼女は確かに勝った。彼女にはまだ勝てない、そう思わせつつも永宮雅成程遠い存在ではないと印象付ける試合だっただろう。

 しかし内情は違う。

 

(多分彼女は、本気なんて一欠けらも出していない)


 それは一つの違和感を新に抱かせた。

 情報の食い違い、或いは常識の入れ違いか。


 試合を終えて談笑する少女を見つつ、彼は次の自身の試合に思いを巡らせていた。



〇肉体変化系統

異能力者自身の肉体を変化させる異能系統。通常異能の発現は能力者との距離が遠くなる程に困難になるので、肉体変化系統は異能を発現させやすい傾向にある。

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