セールストークとかできないので
まあ、俺もこれでも伊達に予知に幼少期から押しかけ嫁されてたわけじゃないので、一家言あるんだよ。まあ予知した結果俺が助かったことなんて数えるほどとかなくて、八割がた、知ろうが知るまいが影響ないことか知らん方が良かったんじゃねーかなってことばっかなんだけど。
まあ一口に予知といっても、どのような原理で起こるのかで…三つ、四つくらいには分類できる。まず第一に、そこまでに得られた情報から演算して最も確率の高い未来を導き出すもの。まあ、平たくいえば天気予報みたいなものだ。第二に、文字通り未来のある時間を過去の時点から観測するもの。いわゆる未来視の類。第三に未来やメタの視点から能動的に送られた情報を受信するもの。神託の類だな。後は本当なんかよくわかんなかったり複合してるのとかもある。
予知の分類としては他にも重要なポイントがある。予知した未来を変えられるか否か。変えられない場合は単純に見た者の力不足か予知した時点でそれが確定するのか。未来を変えられる場合、その予知した光景は消失するのか、平行世界の出来事なのか。
あるいは、そもそも予知込みで未来が導き出されるのか…予知で未来を知ったことで、それを理由に起こす行動が想定されているか否か。
後は細かいところだと予知を自分の意志でコントロールできるか否か、予知したのがいつ起こることなのかわかるか否か、予知できるのは自分のことか他人のことか、てのもあるかな。
で、マア。俺の予知は分類上によると"観測型/視点共有/平行世界型/自動発動/観測座標固定/座標探査不可"って感じになる。ただ何か偶に違うのがあって、お兄ちゃん曰く、神託も偶に受信してるらしい。
神託は受信の仕方で二種類に分けられる。憑依と預言。憑依に関しては自分が憑依されてることを知覚してるか否か、憑依中の意識がどうなってるかでも分けられるかな。俺は預言と憑依どっちもあるらしい。憑依の方はさっぱり記憶にないがな。何か睡眠時は一番霊的な防御が緩むから、半覚醒…躯が起きてて意識が寝てる時に入られてた時があるらしい。一切記憶にないんだが、まあログは残ってたんだよな。めっちゃ明瞭な調子で文脈のないこと言ってた。
睡眠と言えば、予知夢というものもあるな。これはまあ、予知をどういう形で知覚するか、という話だからその本質にはあまり関わりがないかな、という気がする。ただまあ、予知としての情報量、解像度は高いんじゃねーかな。視覚聴覚…五感に、その時の視点主の思考も共有されたりする。まあ夢でどの程度感覚があるタイプかってのもあるかもしれないが。
いつ何故そんなことが起こるかわからないなら、予知なんてのは解答しかわからん問題みたいなもんなわけだ。途中式がわからんだけならまだしも、設問すらわからんケースもある。だからカンニングとしてはやや力不足になるわけ。
で、まあ最初の話に戻るんだけど、俺の予知って一切制御できない上にいつのことなのかわかんねーの。その代わり確実にその通りになるし、基本的に"その時"の俺の視点を一瞬先取りする形だからいつの間にか終わってた、ってことはないんだけど。マア偶に俺に縁ある他者の先が見えるケースもあるんだけど、曰く、あれは神託の方のやつらしい。預言の方の。だから俺はその場で伝えて終わり。
預言なぁ…いや、本当にフッと、エウレカしてるだけなんだよ。それでそれを目の前の相手にそのまま伝える。それでどうにかなる。そういうもんとしか俺には言えない。聞いた相手がその情報を正しく活かせるかはともかく、な。
スピリチュアルとか言われるともにゅるんだよね。俺にとってはずっと鼻をかまないで放置してると垂れるから時々鼻をかむ、くらいのレベルの日常動作の一つみたいなもんだから。ああなんか変なもん見ちまったな、ってそんだけ。
というか、基本的に予知したもんをあんまり長く覚えてられないんだよね。"二度目"にそういや見てたわって思い出す場合の方が多い。なんとなくこうするべきだなって思って、その後結果が出てそれでか、ってわかる。実質的に、めっちゃ勘が鋭い人とそう変わらないんじゃないかな。
まあ、そういうわけで俺の予知能力を一時的にあんたに預けたいわけだよ。それが俺のための行動なのか、あんたのための行動なのかはともかく。