プロローグ
ダンジョン物を書いて見たくて書きました。
是非コメントください! 返します!
冒険者としてダンジョンに向かう。
これほど緊張する事はない。
死と隣り合わせの中、魔物との戦闘を切り抜け目標を達成する。
これが冒険者の仕事であり、生きがいでもある。
だが、もしもこれから冒険者を目指すチビッコがいるのなら、初心者冒険者の僕は、先輩としてこう伝えよう『やめておけ』と……。
僕が冒険者を目指し始めたのは8年前。
王都に出現した【ゲート】から魔物が外に飛び出し、両親を殺された時。
1人逃げ出した僕は、近くの冒険者ギルドへ行き、助けを求めた。
冒険者の数名が僕の家に着いた時、既に母さんと父さんは魔物の餌と化していた。
それはそれは凄惨な光景で、当時8歳だった僕はその場で嘔吐した。
ただ、僕らでは到底太刀打ちできなかった魔物の群れを、冒険者たちは一瞬にして肉塊にして見せた。
両親の仇を討ってくれた冒険者の人達と、肉塊となった魔物を見て僕は、不謹慎ながら爽快感と同時に冒険者に憧れを抱いた。
あれから8年、ようやく冒険者として登録が出来る16歳になった。
そして僕は今日、冒険者としての狼煙をあげる。
家の姿見で身だしなみをチェックする。
一昨日、気合を入れる為に染めた金色に輝く短髪。
背が伸びるだろう、と買った少しダボダボの茶色いブレザー。
身長165cm痩せ型の僕には少し大きめのリュック。
腰にぶら下げた剣と短刀は、小さな僕の体には少し不恰好だ。
まぁ、格好いいか、はどうあれ見た目は十分冒険者だ。
「えーっと……、じゃあ初心者冒険者のロンゾ=アルフ君? 君はレイ=クロアシさんのパーティーと一緒にダンジョンを体験してきてください」
「はい、わかりました!」
僕は初心者として、今日からダンジョンへ出る。
最初は熟練の先輩冒険者のパーティーについて回るだけだけど、いつか僕も自分のパーティを作って、ダンジョンをたくさんクリアしたい。
「アルフ君? でいいのかな。俺はパーティーリーダーのクロアシだ。よろしくな」
「よ、よろしくお願いします!」
「たった5人のパーティーだけど、アルフ君の教官として、知りたい事があればなんでも教えるよ」
すらっと高い身長に、痩せて見えるけど引き締まった筋肉。
腰に差した剣がよく似合っている。
さすがは冒険者と言った佇まいだ。
「アルフ君はダンジョンについてどこまで知ってる?」
「一応【ゲート】の中に入って、ダンジョンに行く事ぐらいは」
【ゲート】はこの世界、全4カ国の至る場所に50年前から出現したダンジョンへと繋がる黒い霧の様な物。
その出現理由は、未だに解明されていない。
「そうか。まぁ一応初心者には最初から伝えろ、って言われてるから教えるよ」
「お願いします」
「【ゲート】の上には数字が記されている、この数字の意味は?」
「ダンジョン内にいる魔物、モンスターの数です」
「正解だ。ただ数字は魔物の種類を表している訳ではないから、強力な魔物には気をつけて!」
【ゲート】の上には数字が表記されている。
例えば200と書いてあれば、そのダンジョン内には200体の魔物が住み着いている、という事だ。
「ダンジョンのクリア方法は?」
「ダンジョン最奥地にある魔力で固められた宝石を【ゲート】の外に持って帰る事です」
「これも正解!」
宝石の魔力につられて、魔物が【ゲート】に入るケースが多数ある。
その為【ゲート】出現先には魔物が集まっている事が多い。
クリアした後の【ゲート】は消失する。
「今現在、確認されている【ゲート】の数は?」
「100個です」
【ゲート】はクリアすると消失するが、1つ消えると、また新たな場所に1つ増えてしまう。
この【ゲート】を頻繁にクリアして、ダンジョン内、及び【ゲート】周辺の、魔物の数を減らす事が、冒険者達の仕事である。
「よし! 完璧だ。じゃあアルフ君の初期ステータスを見に行こう」
僕はクロアシさんに連れられて、ギルドの奥にある透明で大きな結晶の前に立つ。
僕の初期ステータス、どんなんだろう?
楽しみだなぁ。
もしかしてめちゃくちゃ高くて、いきなり熟練者のパーティーにスカウトされちゃったりして。
結晶の前に立つ事30秒。
透明な結晶の中に僕のステータスが写し出された。
筋力:126
技術:196
俊敏:205
知能:49
魔法:211
特殊スキル:【逃げ足】
これって、どうなんだ?
他の人のステータスがわからないから、凄いのか、凄くないのか分からない。
それに特殊スキルってなんだろう?
「あの、このステータスってどうなんですか?」
「んー、まぁ悪くはないけど良くもない、初心者の平均くらいかな」
やはり最初からチート、とはいかないようだ。
それにしても知能49は納得いかないな。
「あの、ちなみにこの特殊スキルってなんですか?」
「特殊スキルは、冒険者が持つ特定の、能力みたいなものかな。生まれた時から持ってる人もいれば、経験で付与される人もいるよ」
僕の特殊スキル【逃げ足】はおそらく、8年前魔物に襲われて逃げ切った時に付与されたものだろう。
スキル効果は、自分より強い者が現れた際の俊敏が2倍か。
結構使えそうだけど、名前が【逃げ足】ってダサいな。
「ちなみにクロアシさんのステータスってどんな感じなんですか?」
「俺か? 最近測ってなかったから見てみるか」
筋力:1029
技術:2078
俊敏:1008
知能:1809
魔法:1005
特殊スキル:【策士】【剣術】【スプリンター】【火事場の馬鹿力】
す、凄い! 全てのステータスが僕の10倍くらいある。
しかも特殊スキルが4つも!
これが本当の冒険者かぁ。
自分とのステータスの違いに僕は少し落ち込んだ。
ここまで違うと、自分には才能がないのではないだろうかと思えて仕方がない。
「こらこら。そんな落ち込むな。冒険者として、ダンジョンをクリアして場数を踏めば、ステータスは上がっていくから。初期ステータスなんて気にしなくて大丈夫だ」
「本当ですか!?」
「まぁ、その痩せ細った体じゃ筋力は上がらないから、しっかり筋トレする事だな」
「わかりました!」
冒険者の研修を終えたところで、僕はダンジョンの体験をしに行く。
この日を8年間も待ちわびていた僕の心臓の鼓動は早くなる一方だ。
王都を出て少し先にある草原に【ゲート】はポツンと出現していた。
数字表記は13。
初心者の体験ダンジョンとして、魔物が少ないダンジョンを選んだんだろう。
「13体の魔物しかいないと思って気をぬくなよ!」
「おう!」
クロアシさんのパーティーメンバーの顔が引き締まる。
やはり熟練の冒険者でも、ダンジョンに入るのは緊張するものなのか。
クロアシさんのパーティーメンバーの人達が次々【ゲート】に足を踏み入れ、その場から消えて行く。
僕は【ゲート】の前、深く深呼吸をして、黒い霧に大きな1歩を踏み出す。
全身を潜らせると、先程までの草原と打って変って、神殿のような場所が目の前に広がる。
中は少し寒くて薄暗い。
初めてのダンジョン。
僕の心の中にはなんとも言えない不安感と期待感が融合したような、不思議な気持ちでいっぱいだった。
「ダンジョンへようこそアルフ君!」
「よ、よろしくお願いします!」
ダンジョンに足を踏み入れたこの瞬間、冒険者ロンゾ=アルフは誕生した。
そして僕の冒険者としての成長物語が始まった。