82 修羅場①
「で、そんなことであたしを呼び出さないで欲しいんだけど」
「正直スマンと思っている」
逃げ出したカナデを追いかけて、たくさん言い訳して何とか連れ帰ることができた。
俺もカナデも冷静じゃなかったので貧民街に来たついでにスティーナを呼びつけて仲裁してもらうことにした。
家に戻ってきた俺達はこの騒ぎの元凶へ目を通す。シエラは横並びのソファに寝転んで寝息を立てていた。
「何、天使みたいにかわいい子じゃない。ドコで誘拐してきたの?」
「人聞き悪い言い方はやめて」
「妻がいる身で女の子を家に連れて帰るってどういうつもりですか」
「本当にごめんなさい」
「えっちなことしようとしてたんじゃないの~」
「したけりゃカナデとするし。早くカナデを抱きたくて仕方ないんだよ」
「きゃっ、もうヴィーノったら。仕方ないですねぇ」
「あたし帰っていい?」
こんな話をしている場合じゃない。
シエラをゆすって、起こさせた。
「ふにゃ?」
「眠い所悪いが話を聞かせてくれないか」
「ヴィーノ、シエラと結婚してくれるの?」
「そっちじゃねぇよ」
「ヴィーノは結婚しません! 私の夫です!! 何なんですかあなたはいきなり!」
カナデが強い剣幕でシエラに詰め寄る。
「なにこのあばずれ」
「あなたが言いますかァ!?」
カナデは息をつく。
「あなたの意思がどうであれヴィーノは私の夫です。不愉快なので下品な女は去りなさい」
「え~、ヴィーノ。こんな黒狐と離婚してシエラと結婚しよ」
「いやいやいや……」
「何ですか、この白狸! ヴィーノは私のモノです! いきなりしゃしゃり出ないでください」
「2人とも落ち着きなさい」
スティーナが間に入ってくれた。
「シエラ……だっけ。ちょっと話を聞かせてくれないかな?」
「ん、分かった」
「何々ですか、この女。……腹が立つ!」
カナデはシエラを強く睨み。
「……っ」
シエラも負けじとカナデを強く睨んだ。
なんだ……これ。
シエラもカナデもお互いを敵対視しすぎじゃないか?
正直黒髪を悪く言われた時以上にカナデは怒っているような気がする。
「スティーナ、すまない。シエラを任せていいか?」
「分かったわよ」
俺はカナデの手を引っ張って、外へ連れて行く。
「カナデどうした? 何か今日変じゃないか?」
「……」
「カナデ?」
「私にも分からないんです。あいつを見ると何か頭がすごくムカムカしてくるんです。……あの白髪が……勘に触るというか」
もしかしてシエラが白の巫女だからか?
黒の民と白の民は敵対していた過去がある。
黒の巫女であるカナデと白の巫女であるシエラ。もしかしたら過去の因縁が遺伝子レベルで存在しているのかもしれない。
「ヴィーノ……。あの子と変なことしてないですよね」
「してないって。俺を信じてくれ」
「信じてます。信じてますけど……ヴィーノって胸の大きい子が好きですし……」
それはその通りだが……。
「私、怖いんです。言い知れない不安を感じます。ヴィーノをあの子に奪われてしまう……そんな気がしてなりません。そんなことになったら私耐えられない!」
「カナデ」
俺はカナデの両肩を掴んで、不安で体を震わせる彼女の名を呼ぶ。
そのまま想いをこめるように唇を奪った。
「……んぐっ」
「……俺は君とずっと共に生きるために黒の民の里まで行って連れ戻したんだ。もう手放すものかよ」
「ふぁい……」
黒の民は孤独だ。
黒の民の里から抜ければ黒髪の子は1人になってしまう。
カナデは常にその不安と戦っている。
だからこそ……夫である俺に執着してしまう気持ちが何となく見えてくる。
こうやって俺がいかにカナデを愛しているかそれを教えてあげる必要があるんだ。
カナデの機嫌が戻り、甘えるように腕に引っ付いてくる。
これは実に良い雰囲気だ。このまま夜もベッドで2人……激しくいかなければ。
自宅のドアを開けると驚くべき光景が写っていた。
「スティーナぁ……しゅき~~」
「シエラかわいいわねぇ……ほらっ食べ物ならまだあるから」
見えないしっぽを振ってるがごとく、シエラがものすごくスティーナに甘えていた。
スティーナは朗らかな笑顔で餌付けをしている。
「いやぁ! スティーナまで懐柔されてるぅ!」






