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81 白魔術の力

 シエラか……。

 不思議な子だったな。

 あの子と話しているとすごく安らぐというか、構ってあげたくなるというか、不思議な魅力を感じてしまう。


 本当は家に連れ帰るつもりもなかった。

 王国警察に引き渡せばいいはずなのに俺が絶対に守らなきゃと庇護欲が浮かんでしまった。

 普通に考えれば年頃の女の子を家に連れ帰るか? 手を出す気は絶対無かったけど……普通に考えればかなりまずい。

 そもそも手を出す気がない? この俺が? 結婚してから毎晩のようにカナデに手を出している俺が?


「何か思考がおかしくなってきたな。メシ食ってないからかもしれん」


「ヴィーノ」


「お、風呂上がったか。うぇええええええ!?」


 シエラがすっぽんぽんのまま出てきやがった。

 さすがに女性慣れした俺もこれにはびっくりだ。

 すぐさまバスタオルを掴んでシエラの体にかけた。


「俺の服を置いてあっただろう!?」


「ぶかぶかだった」


「当たり前だ!」


 一次的の対応だったのにまさか裸で出てくるとは思わなかった。羞恥心とかないのか!

 しかし……一瞬とはいえ……素晴らしいものを見てしまった気がする。

 なんだっけとらんじすたーぐらまーというんだっけ。


「シエラの服は?」


「ああ、後で洗濯してやるよ。ポーションを使えば朝までに乾く」

「必要ない」


「え」


「出てきてセラフィム」


 シエラの言葉と共にその頭上に光が収束し始める。

 シエラの頭上に突然現れたそれは上半身だけの生物であった。

 全身や顔面を白銀の鎧で纏った不思議な生物。シエラの頭上、上空をプカプカと浮いている。

 背負う2対の剣が印象的だった。

 

 って。


「なんじゃこりゃああ!?」


 こんな術は見たことない。

 びっくりして腰を抜かしてしまった。


「セラフィム、【浄化】」


 セラフィムと呼ばれた鎧の生物はシエラに向けて手を翳す。

 するとシエラの体が光輝き始めたのだ。

 さらに風呂場にあったはずのシエラの服が飛んできて、まとめて光に包まれる。

 終わった時……シエラは出会った時のように純白のドレスを身に纏ってた。

 スス汚れていたドレスは洗濯したように綺麗になっていたのだ。


 シエラが俺の瞳をじっと見つめる。


「これは……」


 何と美しい姿なんだ。白髪……。いや、本当に白髪なのか?

 白のようには思えないし、銀のようにも見えない。何と形容していいか分からないほど白い。

 色素が抜けた白髪やごくまれに街中で見かける白髪とも違う。

 神がかった美しさを誇っている。


 俺の口から……自然と言葉が出ていた。


「君は白の民なのか……」


「ん、シエラは白の巫女。王国はあんまり白の民いないって聞いてたけど……知ってるの?」


 今、白の巫女って言わなかったか。

 いや、でも……こんなタイミングで現れるか? 冗談にしてはシエラは美しすぎる。


「そのセラフィムってやつはいったい……」


「セラフィムは白魔術の1つ。シエラの守り神。何でもやってくれてエラい」


 もしかして対になっているのか? カナデの受け継いだ黒の巫女と黒魔術。

 シエラは白の巫女で白魔術。いや……大混乱だ。


 シエラは突如お腹を押さえ始めた。


「……お腹すいた」


「はえーだろ!?」


「セラフィムを構築するとお腹が減るの……。結構無理させてたから……一気にお腹が」


 随分と燃費が必要な魔術のようだ。

 しかしもうクリームスープはカラッポだしなぁ。

 そうだ。俺はポケットに入れていた携帯食をシエラに渡す。


「……?」


「俺が作ったビーフジャーキーだ。いい塩味で美味しいぞ」


 時間が無い時に食べる携帯食は常に用意している。

 メシはうまいものを食わないと力が入らないからな。


 シエラは包装を解き、頬張った。


「っ!? すごっ、おいしい」


「そうだろ、そうだろ」


 シエラはペロリとビーフジャーキーを食べてしまった。

 作りがいのある女の子だ。これだけ食べるなら携帯用ポーション飯を考えてみるのもありかもしれないな。

 ポーション卿としてやれることを考えておきたい。

 そんなこと考えていると……ポタポタと床から音がする……


 見下ろして床に落ちた涙を見て、見上げるとシエラが涙を流しながらもぐもぐしていた。


「シエラ、どうした?」


「うぐぅ……久しぶりに……うぐ、おいしいお肉……食べたから」


「何があったか分からないけどまた食べたくなったらいいな。俺がシエラのために作ってやるよ」


「ホント?」


 お腹いっぱい食べられるってのは言うのは簡単だが決して楽ではない。

 俺も王国の小規模な農村出身で兄弟もいっぱいいた。

 貧しい暮らしで腹いっぱい食えることなんて早々なかった。


 だから腹を空かせている子を見ると助けたくなるんだろうな……。


「……ヴィーノとつがいになったら毎日お肉食べられる?」


「ああ、そうだな。毎日……。は?」


 突如シエラが飛びついてきた。

 ちっちゃなな体を伸ばして両手を首にまわしてくる。


「ちょっ、近いって!」


 その体に似つかわしくない胸を押さえつけられてちょっとイケナイ気分になってくる。


「ヴィーノ、もっとお肉お肉!」

「こ、こら……まったく」


 でも不用意に振り外したりはできない。

 なぜだろうか……そんな気持ちにならない。


 もしここでカナデが帰ってきて、この場を見られてしまったらとんでもないことに……。

 

「ただいま帰りました! 結婚1ヶ月記念日なので急いで戻ってきましたよ~! ヴィーノに会いたくて倒すのに3日かかるって言われたS級魔獣を1日でぶった斬ってきました! さぁ……今日も夜はいっぱい私を愛して……」


 扉を開けて入ってきたのは最愛の妻となったカナデである。

 狙ってるんだろうか……このタイミング。


 シエラは俺に抱きついたままだし、カナデは手に持っていた何かをドサリと落とすし。

 ああ、これは修羅場ってやつなのかもしれない。


 どうして……こうなるのだろうな。


「ヴィ……ヴィ……ヴイーノ。その女は……誰ですか」


「カナデ。言い訳はしない。だから……だから……大太刀に魔力をこめるのはやめようか」


「ヴィーノ、結婚しよ。お肉食べたい」


「ああああああああ! 結婚記念日に浮気だなんてぇぇぇ!! 実家に帰らせて頂きますぅぅぅ!」


「うおおおい! 3章に戻るのはやめような!!」


修羅場はこれからも何度かありますが基本的にはギャグ的要素で流します。


一応この物語の世界観では王国は重婚可能なこともあり王国民は複数人との恋愛に許容があります。

なので現実的ではクズ的ムーブな所があってもある程度ご容赦頂けると幸いです。

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書籍版ポーション160km/hで投げるモノ! ~アイテム係の俺が万能回復薬を投擲することで最強の冒険者に成り上がる!?~』
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