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EX クリスマスエピソード

気晴らしに書いた外伝クリスマスエピソードです。

時系列として3章最後の79話と80話の間の話となりますがまったくネタバレ要素もないのでそのままお楽しみください。

「あのヴィーノ……聞きたいことがあるのですが」


「ん、どうしたカナデ」


 王都に戻ってきた俺達はこれまでと同じ変わらない生活を取り戻していた。

 ただ1つ違うことといえば正式に俺に奥さんが出来たということだな。


 このカナデという言葉も随分と慣れっこになってしまったな。


「クリスマスってなんですか?」


 それはなかなか回答しづらい質問だった。


「カナデはクリスマスをやったことがないのか?」


「はい。ギルドでかなり噂になっていたのですが……よく分からなくて。里でもそのような文化はなかったですし……」


「去年は交易の街にいたんだろ?」


「あの時は刀を抱えてうずくまってることが多かったので……」


 そうか……あの時のカナデはまだ黒髪の迫害に心を痛めていた時だったか。

 確かにそれだったらどうにもならないな……。

 クリスマスまであと3日。何も考えていなかったが、クリスマスパーティをしたことのない妻のために動くのは夫の役目だよな。


「よし、せっかくだ。クリスマスパーティをしよう。クリスマスってのは親しい達で集まって楽しくパーティをする日なんだよ」


 クリスマス。西の国の文化で12月25日に家族で集まってパーティをしたりする日を言う。

 諸説はあるがこの王国に伝わってる噂なんてこんなもんである。


「ヴィーノ……親しい人がいない人はどうなるんですか?」


「それは考えてはいけない」


 1人、クリスマスに呪詛のような言葉を吐く、S級冒険者の先輩の姿を思い出して首を横に振った。




 ◇◇◇




「やっほーー! パーティに招待ありがと!」

「カナディアさんの料理楽しみです!」


 12月25日。いろいろなツテで声をかけて、スティーナとミルヴァが来てくれることになった。

 アメリも呼びたかったんだけど、さすがにS級冒険者は人気だ。すでに先約でいっぱいらしい。


「2人ともありがとな」


「ま、まぁ……12月25日にいきなり一緒に過ごそうなんて言われたらちょっと期待しちゃうじゃない」


 あれ? そんな誤解を生むような言い方だったっけ。

 カナデがクリスマスパーティをやったことがないって言ったら紛らわしいってめちゃくちゃ怒られてしまった。


「本来なら2人で静かに暮らすものだと思いますけど……カナディアさんを喜ばせるためですもの! がんばります」

「悪いなミルヴァ。彼氏とかと過ごす予定とか無かったんだな。良かったよ」


「……ケンカ売ってるんですか?」

「すみません、ちょっと口が過ぎましたマジで」


 最近、微妙にミルヴァが冷たい気がする。


「私はカナディアさんを傷つけて実家に帰らせたヴィーノさんを完全に許してないんですからね!」

「あ、ミルヴァにもクリスマスプレゼント用意したんだけど……いる?」

「え、やったぁ! ありがとうございます!」


「この子、チョロイわね」


「3人とも、夕食が出来たので座ってください」



 クリスマスということでカナデの作る自慢の料理がテーブルに並べられていた。

 フライドチキンに山盛りポテト、ハンバーグ、野菜の盛り合わせ、オムライスとパーティフードと呼ばれているものに俺もミルヴァも思わず目を輝かせてしまった。

 今日のためにめちゃくちゃ腹も空かせたし……めちゃくちゃ上手そうだ。


「いただきま~~す!」


 やっぱり美味い。今日の昼頃から準備していただけあってどれもこれも美味すぎる。


「これがクリスマスパーティなのですね」


「どうしたのカナディア」


 とても和やかに微笑むカナデの姿にスティーナは問いかける。


「親しい人達と食を囲むことがこんなに楽しいんだなぁって」


「そうね……あたしも昔、お姉ちゃんと一緒に小さなパーティを開いて以来だから……騒がしいのは楽しいよね」


「これからずっと楽しいパーティが続くのですね」


「そうだな。来年はもっと人を増やして大きなパーティにしようぜ」


「あ、来年も呼んでくださいね」


「ふーん、ミルヴァは彼氏作らないのか?」


「もー、ヴィーノさんはデリカシーがなさすぎです!」


 ポカポカと殴られてしまうが、親しい人達だけで過ごすクリスマス。

 それはきっとこれからもやっていくのだろう。

 迫害のために人を信じられなくなってしまったカナデのために少しでも……カナデが喜ぶことをしておきたいと思う。



 ◇◇◇


「あの……ヴィーノ。これはいったい」

「カナデ、教えてやる。クリスマスには性の6時間ってのが存在する」

「な、何かいかがわしい響きですね」


 スティーナとミルヴァを遅くなる前に帰して、風呂へ入った後、さっそくカナデを押し倒した。


「だからクリスマスは……夫婦で営むのが常識なんだよ……」

「もう……そんなこと関係なく……えっちなくせに」


 そうだな。昨日も一昨日もその前も交わったっけ。もちろん、明日も明後日もその次の日もカナデと逢瀬する予定だ。

 つまりいつも通りである。


 だけど……今日はいつもと違う。


 俺は寝室に置いてある。ポーションを手に取り、何か違和感のある場所に振りかけてみた。


「ちゅべたい!」


 カナデが飛び上がり、その女を押さえ込んだ。


「やっぱり忍び込んでやがったなエロ怪盗」

「く、卑怯よ! あたしがいない間に楽しんでぇ!」


 夫婦なんだから当然だろ。何言ってんだこいつは。

 スティーナはじたばた暴れるが……さて、どうするか。


「私、スティーナにも喜んでほしいと思います。私の一番の友達ですから」

「そうだな。スティーナにも一杯喜んでもらいたいなよな」


「あの……2人とも、何でそんな手をワキワキさせてるの……? ちょ、ちょっと待って!」


「スティーナ、いっぱい笑ってくださいね」

「ちょっとやめ、やめっ きゃああああああああ!」


 メリークリスマース。

 3人仲良く騒がしい夜となった。

こうやって季節ネタを時々間に入れていきたいなと思います。


本編は通常通り土曜日の昼に更新しますので宜しくお願いします。


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書籍版ポーション160km/hで投げるモノ! ~アイテム係の俺が万能回復薬を投擲することで最強の冒険者に成り上がる!?~』
第2巻が7月20日 より発売予定です! 応援よろしくお願いします!

表紙イラスト
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