76 二人の夜
「今日はさすがに疲れた……」
思えば朝一で黒土の森に入って、お昼にはヤキュウ勝負させられるし、夕方はカナデと本気の勝負だ。
ポーションを1000本以上投げたのは今思えば初めてだったかもしれない。
肩も肘も痛むし、1000発投げを毎回しない方がよさそうだ。
自分の体の限界ってのを理解する必要がある。
畳と呼ばれる床材が敷かれた室内にふとんを敷かせてもらい、ごろんと寝かせてもらっている。
カナデから受けた傷はスティーナの持っていた俺作成のポーションのおかげで完治している。
ただ、ポーションの飲み過ぎで胃の調子が悪いので晩ご飯を遠慮したのがもったいない。
もう少しこの村を観光したかったけど明日は早急に帰らないといけない。
王都に戻ったらS級冒険者として仕事が山ほどあるに違いない。
「すみません、お体どうですか?」
カナデの声がする。
襖と呼ばれる仕切りをの先で影となり、カナデが呼びかけてくる。
「大丈夫だよ。体も良くなってきた」
「なら……中に入ってもいいですか?」
「ああ……。おっ」
襖を開けて、中に入ってきたカナデは白一色の寝間着であった。
いつものピンクのルームウェアを着ているのだが、この寝間着はスイファンさんが着ている割烹着と呼ばれる衣服に似ている。
なんだっけ、浴衣というんだったか。
夜空のように美しい黒髪が揺れ、俺の横へちょこんと座る。
スゴくいいにおいがする。風呂に入って、そのままこっちに来たのかもしれない。
「ど、どうしたんだ」
何だか色っぽさに戸惑い緊張してしまう。
「い、いえ……ヴィーノに会いたかったんです。できるだけ二人きりで……」
カナデも緊張しているようだ。
「ス、スティーナとか……隠れて見てないよな」
「母上と喋ってたので大丈夫だと思います。にゃっ!」
我慢できず、カナデの手を握る。
カナデの手のひらは大太刀を振ってるためか硬く鍛え上げられていたが手の甲は逆にスベスベで女の子らしい柔らかさだ。
「ダメか?」
「いや……まぁ、正式に夫婦となるのですから、その……いいですよ」
今までは遠慮していたが正式に妻になるのだからと触りまくる。
女の子の手って髪と同じくらい愛おしくないか。
カナデは恥ずかしそうに頬を紅く染めていた。
実に可愛らしい。
「カナデ!」
「きゃっ!」
カナデの両腕を掴んで思いっきり抱き寄せた。
ずっとこうやって抱きしめたかったんだ。
カナデの黒髪を片手で撫でて可能な限り密着する。
「ヴィーノ……」
上目遣いで俺の名を呼ぶ。
愛しい……。そんあ色っぽい声を出されたらもう俺は我慢できそうにない。
「ああ、カナディア」
「今、カナディアって呼びましたね」
「え」
カナデの表情が素に戻った。
「真名を間違えることは夫婦間で絶対にやってはいけないことです。不貞していると同じなのですよ」
「え、そうなの!?」
「まぁ……ヴィーノは異色族ですから今回は大目に見ますが腕をへし折られたっておかしくありませんよ」
「横暴すぎだろ!?」
また一つ、黒の一族のわけわからんルールを知らされることになる。
今までカナディアって呼び続けてたからな……間違えそうだ。
「あの……その、ヴィーノ」
「ん、なに」
「キスしても……いいですか?」
俺の心臓が大きく鳴り響く。
カナデとキスをしたことって一度もなかった。
好きな人とキスできること……夫婦なら当たり前なのかもしれないけどそれをカナデから提案されるとは思ってもなかった。
「今日はカナデの方が積極的じゃないか」
よく思えば白の寝間着が抱きしめたりした時にはらりと開くのだ。
するとカナデは下着をつけておらず、美しい肢体が見えていた。
どう見たって……覚悟を決めてなきゃこんなことはしてこない。
「私が王都を出るまえ……ヴィーノに押し倒されたじゃないですか。あの時も妻として受けるべきだったのに……怖くて気付かないフリしてたんです」
そういえば……あの時はスティーナに見られたからやめちゃったが。
その後も変わらずだった。一線を引かれたような気がして俺も攻めずらくなったんだよな。
「でも……もう、覚悟は決めました。ヴィーノが黒髪の私を嫁にもらってくれるなら……ヴィーノが望むこと何でもします!」
「何でも!? いいの!? ほんとに!?」
「あ、やっぱりやめ」
その先は言わさない。
カナデの唇に自分の唇を強く押しつけてやった。
逃げられないように頭を押さえつけて、息をするのを忘れるほど長く、長く……口づけをした。
そのまま……カナデをふとんの中に引きずり込んだ
妻の実家で致します? 上等だ! もう迷わない!
「う゛ぃーの……すき」
「俺も大好きだカナデ!」
朝を迎えた。
果てた!!
間を描写すると怒られるので仕方ないね・・・
次回は朝からスタートです。