69 婿入り勝負
「よく姉妹って言われるんですよ。カナディアは不服らしいですが」
スイファンさんは笑って言う。
そりゃ29歳と16歳だったら年離れた姉妹にしかならねーわな。
「あ、あの……じゃあシュウザさんは?」
「シュウさんは今年で50になります」
年の差21歳!?
「どんな縁で結婚したのよ……」
「ふふ、あの人が私の家庭教師をしていて、その縁ですね」
手をだしちゃったかー!
「えっ、13歳って成人前でしょ? 引くわ」
スティーナもぞっとした顔をする。
“あの子の悲しさを思うと涙が止まらん。あの子はまだ16歳だ! ワシは男に捧げて泣かせるために王国へ差し出したわけではない! まだ若いあの子を傷つけおって!”
さっきシュウザさんに思いっきりどやされたけど、あのおっさん13歳で妊娠させてんだろ。
どの面で俺に説教してきたがったんだ。ちょっと腹が立ってきた。
「そんなわけですからあまり気にしなくていいですよ」
スイファンさんに案内され、俺とスティーナ屋敷の裏の広場へと向かう。
そこにはシュウザさんともう一人、男性がいた。
「怖気付いて逃げ出したかと思ったぞ若造」
「あ、はい」
成人してない女性に手を出したクソ野郎と思うと恐れは全くなくなるな。
口に出すと険悪になるから我慢しないと……。
「シュウザ殿、その若者がカナディアちゃんの婿候補か」
男性が値踏みするようにじろっと見てくる。
この男性も黒髪でシュウザさんと近い年齢に見える。近所のおじさんとかそんなんだろうか。
シュウザさんと同じく鋼の肉体を誇っている。
二人とも上半身裸ってどういうことだろう。黒の一族ってすげーな。
「では義父上。一族に伝わる婚姻試験を行ってください」
義父上!?
もしかしてこの人ってカナディアの祖父になるのか。
……。
「つかぬことをお聞きしますがカナディアのお祖父さんはおいくつなんですか?」
「お? ワシか? 今年で52歳じゃい」
シュウザさんと2歳しか変わらねえじゃねえか!
スイファンさんが29歳なら普通ぐらいの年だ。
義理の親子なのにほとんど歳が変わらない。
「どうした若造さっさと準備しろ!」
シュウザさんがイビリ散らしてきたのでやり返してみるか。
「お祖父さん。シュウザさんが13歳のスイファンさんと結婚された時も同じ試験をやったんですか?」
「んがっ!? スイか! スイがばらしたんだな」
思わぬカウンターパンチを与えられたのかシュウザさんは焦った顔をする。
うまくいったようだ。
「そうだのう。あの時はワシもさすがにブチギレてもーたわ。2歳違いの男が13歳のスイファンを嫁に欲しいと言い出した時は思わず半殺しにしちゃったなぁ」
「お、義父上……昔のことはその……良いではないですか!」
「まぁそうじゃの。おかげでカナディアちゃんという可愛い孫も出来たし、ひ孫、ヤシャ孫も見れる可能性があるんだ。喜ばしいことだ」
お祖父さんは柔らかな表情をしていた。
「お主がカナディアちゃんと結婚してひ孫をたくさん作ればワシは満足じゃい」
「義父上! カナディアにはまだ早いです! 親が子を守るのです!」
ブーメランなこと言っているけど……まぁ気持ちは分かる。
振り向くと後ろのスティーナがすっげー呆れた顔をしていた。
男達ってほんとクソねって今にも言いそうだ。その男達に俺まで含まれてそうなのが辛い。
「とにかくカナディアの気持ちも大事ですが両親にも認められなきゃ意味がない。その婚姻試験とやら……乗り越えさせてもらいます」
「ははっ、言ったな若造! 今日乗り越えなければカナディアは諦めてもらうからな!」
「言っておきますが俺は手強いですよ。お祖父さんもシュウザさんと二人相手にでもやってやる!」
伊達に数ヶ月S級冒険者をやってたわけじゃない。
人間相手だと本気で投げられないがやりようはある。絶対負けない。
俺はホルダーからポーションを取り出す。
「何を言っておるじゃ婿殿は」
呆れた声を出すお祖父さんに戦意がガクッと削がれてしまった。
シュウザさんは大太刀を背負っているがよくよく見ると手には違うものが持たれていた。
お祖父さんも同じものを持っている。
これは木の棒……? いやそれにしては丸くまっすぐ伸びて、うまく加工された一品だ。
あんな道具初めてみた。
「婚姻試験とは一球入魂! 義祖父とヤキュウ勝負をするのだ! ワシのバットを空振りさせればお主の勝ちじゃ! カナディアちゃんとの結婚を認める」
なんだそれは……。






