67 エンカウント
黒髪の民がいると言われてる集落は森を抜けてすぐの所に存在した。
集落のまわりは険しい山々に囲まれて、地図上だとその先は断崖絶壁で海となっている。
集落の近くには川が流れており、畑や米が作れる田んぼと呼ばれる農地があちこちに存在していた。
まわりから秘匿できて、自給自足ができる場所か。
広大なこの土地が今まで誰にも気づかれていなかったなんて信じられない。
俺とスティーナはまわりをキョロキョロしつつも集落の入口へと向かう。
さっそく入口にはごつい体をした男が4人、槍を立てていた。
俺達の姿を見つけて2人が互いに槍を交差させて入場を遮断する。
もう2人が俺とスティーナの後ろにまわりこんだ。
……男達は皆、黒髪だった。
「何ようだッ! この地に何様で参った」
俺はスティーナに目線で抵抗しないよう指示し、手を挙げることにした。
「さすがにこれは横暴じゃないか? まだ何もしてないのに」
「うら若き男女。兄妹で迷い人か? この場所を知られたからには生きて返すわけにはいかん」
「兄妹じゃないし……」
スティーナから抗議の声が上がる。
俺もスティーナも金髪だから間違えられてもおかしくはない。
この口ぶり、迷子でここにやってくる人がいたんだろうか……。
だけどこの場所は絶対知られるわけにはいかない。
迫害された黒髪の民のことを思えば当然と言える。
「俺はヴィーノ。今回、冒険者のペルエストさんの紹介でこの集落へ来た。もちろん紹介状も持っている。長と話がしたい」
「……ペルエストさんだと?」
門番達の間で騒つく。
持ってきた紹介状には冒険者ギルドの承認印やペルエストさんのサインも入っている。
さすがに無視できないはずだ。
「あの人は仕事熱心な方だ。こんな若造に大事な役目を渡すはずがない」
「そうだ! もし本当だったら一緒に来るはずじゃないのか」
再び槍を向けられる。
一理ある。それほどにペルエストさんは彼らの信頼を勝ち取っているということだろう。
だけど俺だって引くわけにはいかないんだ。
「教えてくれ! カナディアがこの集落にはいるんだろ?」
門番全員の顔つきが変わる。
カナディアはここにいるのは間違いない。
ルビーの指輪の反応もこの先を示している。
「俺はカナディアを追ってここまで来た。大事な仲間なんだ。会わせてほしい!」
「何用だ」
俺の叫びに動揺していた門番達であったが、集落側から聞こえる落ち着いた男性の声に俺もスティーナも門番達の視線がそちらに移行する。
王国ではあまり見られない和服を着こなす初老の男性がそこにはいた。
服の上からでもわかるほど筋肉が隆起しており、鍛え上げたその体は強者の様相を示していた。
口髭に白髪混じりの黒髪。威厳を感じさせる顔立ちから50代くらいに思えた。
「村長、この村に迷い人が来たんだ」
「迷い人は何ぴたりとも生存はさせぬ。それはヌシ達が一番理解しておるだろう」
「あ、ああ。だけど…‥こいつらペルエストさんの紹介状を持っていて」
「ふむ」
門番の一人が村長に紹介状を渡した。
この人がこの集落の長か。この圧倒的な威圧感、門番自体は大したことないが、この人だけは違うと腰に備えたポーションが揺らいで伝えてくれる。
穏便に行きたいが……。
「旅のもの、いや、王国の冒険者よ。黒の民の村へよくぞ参った。歓迎しよう」
その言葉に俺とスティーナは一息つく。
「いいんですかい? 素性が分からないのに」
「このサインはペルエスト殿のもので間違いない。彼が認めた者を通さねば長年の恩を仇で返すことになるぞ」
門番達はその言葉に押し黙ってしまった。
ペルエストさんってものすごく慕われているんだな。
俺もいつかはこんなことが言われる冒険者になりたいものだ。
「さて冒険者諸君。さきほどカナディアの名前が上がったが……どういうことかな」
「カナディアは王国で俺……ヴィーノとスティーナの3人でよくパーティ組んでいたんです」
「ほぅ」
「でも不幸な行き違いでカナディアが離れてしまって……。でも俺はカナディアのこと大事な仲間だと思っているんです。だからペルエストさんに頼んで紹介状を書いてもらいました」
「ふむ」
「カナディアに会わせてください! 俺、あいつに伝えなきゃいけないことが山ほどあるんです! 誰よりも大事で……大切でカナディアがいない生活なんて考えられない!」
「つまりお主はカナディアを引き取りたいと申すのかな?」
「はい! また一緒に王国で暮らしたい。2人で住んで過ごしたあの家に戻って本当の意味で結ばれたい……ってあのー、お顔が般若のようになっていますよ……?」
「そうか……。お主があの子が言っていた男か……」
「えっ」
「ハアアアアアアァァァァァァァ!」
村長の和服が弾け飛び鋼の肉体が露わになった。
そしてどこからか取り出した大太刀がキラリと俺に向けられた。
「え? あの……」
「カナディアが言っておったぞ。王国で愛した人に弄ばれたと純情を踏みにじられたと」
「うっ!」
この感じ……もしかして、もしかして。
俺はとんでもないことをやらかしてしまったのかもしれない。
黒の村の長は話を続ける。
「ワシの名はシュウザ。カナディアはワシの大事な一人娘じゃ。さぁ……しっかり話を聞かせてもらおうかのう!!」
「……は、はい」
肩をバンと叩かれて、そのまま恐ろしい力で肩を握り込まれる。
一人娘の親父って最悪なパターンじゃねぇか。
逃げ出しくなったが……もはや逃げ場はどこにもなかった。
そして。
「ヴィーノ、修羅場だね! ふふふ」
スティーナがすごく嬉しそうなのが勘にさわった。
この女、後で覚えてろよ!
カナディアパパとエンカウントです。
しばし義父さんとの触れ合いが続きます。
そしてお母様とも……
次回も宜しくお願いします。






