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65 金髪テイスティング

 黒土の森へ向かうためには王国最南の村を経由して行く必要がある。

 交易の街から馬車で半日といったところだ。

 そこで一泊して充分に準備をして二日かけて黒土の森へ向かう。

 

 これは暇すぎる馬車での一幕である。


「ねぇ」


「ん、なに?」


 突如スティーナから声をかけられる。

 王都から交易の街まで馬車を使い、さらに別を馬車を使うので時間が余りすぎ、話題なんてもう何もなかった。


「我慢してるんでしょ?」


「え? 何を」


 スティーナは何だかもじもじと頬を赤らめて言葉を発す。

 金髪の美少女がそんな仕草をすれば期待をしてしまうじゃないか。


「そ、その……スラムで聞いたことがあるんだけど男の人はすっきりしないと活動に影響が出るんでしょ?」


「ほぅ」


「多分カナディアが今までしてたんだろうけど……今いないでしょ」


「ほぅ」


「あの子の代わりじゃないけど……あたしがしてあげてもいいんだからね!」


 スティーナの性知識はどこかトンチンカンである。

 多分スラムでいろいろ知識を吸収する上で歪んでしまったのだろう。


 これからカナディアの実家に向かって謝罪しにいくのにそんなことをしては罰当たりなのだが、今……超絶に暇なのである。

 スティーナと触れ合うのも悪くはない。ただの暇つぶしだ。


 といっても前には御者もいるし大それたことはできない。


「じゃあお願いしようかな」


「な、何をすればいいのかしら……」


「髪を触らせて」


「は?」


 口を半開きのままスティーナは返してくる。

 懐かしいなぁ。S級昇格試験の前もこうやって馬車の中でカナディアの髪に触れたんだっけ。


「もうちょっと過激なこと想像してた?」


「まぁ、って違っ! そんなこと考えるわけないでしょ! 勘違いしないで!」


 スティーナは脳内ピンクなのは前から知っていた。

 歪んだ知識は悲劇を生む可能性がある。


 スティーナは一見ガードが硬そうだけど気を許した相手には緩んでいるような気がする。

 怪盗になる前はどうだったかはまだよく分かっていないが悪意につけ込まれて悪戯とかされてしまっては誰も喜ばない。


 パーティの中でも年長者の俺が責任をもって教え込まないと……。


「さっ、はよ髪をといて」


「なんか楽しそうね……」


 スティーナの怪訝な眼差しをよそに高揚感が芽生えてくる。


 俺より色素薄い金髪を2つ結びでまとめている。

 日事に髪留めは変えておりこだわっているように見えた。


「今日はこの前みんなで買い物行った時に見つけたやつか」


「覚えてたんだ」


「毎日見てるからな。でも、スティーナの選ぶ髪留めって結構かわいいよな。日々の楽しみにしてるんだぜ」


「そ、そう?」


 スティーナはゆっくりと髪留めを外して髪をゆっくりと伸ばしてくる。


「同じばかりつけるのは飽きるからね。ヴィーノが見立ててくれてもいいのよ」


「うーむ、そうだ! 港の街に有名なアクセサリーショップがあって、多分スティーナに似合うやつがあると思うんだ。買ってくるよ」


「ほ、ほんとに!? あ、あなたのセンスに期待するわ」


「頑張ってみるよ」


「ーーやった」


 センスを問われると正直自信はない。

 まぁ店員さんに聞けばいいだろう。髪質と色はだいたい分かった。

 クエストを頑張ってるし、スティーナが喜んでくれるなら贈り物するのも悪くない。


 正直な所……今回の件、スティーナがこうやって一緒に来てくれることはありがたい。

 1人で向かってカナディアに拒絶されてしまったら恐らく立ち直れない。

 そんな時は慰めて欲しいと思う気持ちも少々、スティーナが側にいてS級として弱い所を見せては駄目だという気持ちが大きくある。

 その気持ちが奮ってカナディアを取り返す意思に昇華できている。


「うお……」


 気づけばスティーナは両結びを解き、髪を長く伸ばしていた。

 普段も可愛らしいがやはりストレートに伸ばされた髪は違った良さを感じる。

 肩越しまで伸びた金の髪が俺の視界を釘付けにする。


 幼びた顔立ちながらもつり目で見られると……なんだかドキドキしてくる。


「なんで顔を紅くしてんのよ」


「いや、その」


「これからカナディアを口説きにいく癖に。この浮気男」


「いや仕方ないって。スティーナはかわいいんだから動揺もするさ」


「っ! 直で言わないでよバカ!」


 言葉を返すスティーナは顔を真っ赤にさせてしまった。

 なんだこれ。

 駄目だ落ち着け。俺は年長者だ。こんなことで動揺してはいけない。

 黒土の森を抜けた先にはカナディアがいて俺はこの心の内を伝えるんだ。


 他の女の子に見惚れている場合はじゃないのに……。


「髪触らないの?」


「俺ってやっぱクズなのかな」


「よくわからないけど自分でそう思うならそうなんじゃない? 」


 クズを否定してくれなかった。

 そんなわけで俺はスティーナの髪をすくうように触れる。


「ひゃう」


「どうしたの?」


「ちょっ耳とか首に触れないで……。よ、弱いの」


「そんな敏感肌でよく怪盗やってたな。この反応は楽しいケド」


「うるさい! あたしだって気にしてるの!」


 髪に触れるフリして首や耳に指を寄せると分かりやすくビクっと反応する。

 実に楽しい。

 やめろって言ってこないのでこのまま楽しませてもらうことにしよう。


「ねぇ……あたしの髪、どう?」


「うん、細くて柔らかくてちょっと不思議な感覚というか……カナディアの髪も極上だったが」


「へぇ……やっぱカナディアにもしてたんだ」


 褒めたつもりなのに氷のような目で睨み付けられる。

 仲が良いと思っていたけど対抗意識があったのだろうか。

 個人的には違いはあれどどちらも素晴らしく良いのでたまらない。


「ふん」


「ちょっ、えっ、スティーナ?」


 突如立ち上がったスティーナは何と俺の膝の上に座り始めた。

 ふわりとした髪が顔面に広がる。

 お尻の感覚がももに伝わり、この開いた両手をどうすればいいかわからない。


「頭撫でなさいよ!」


「へ?」


「それぐらいしてくれても……いいじゃない」


「あ、ああ……」


 まぁ……それぐらいならと俺はスティーナの頭をゆったりと撫でた。


「あなたって撫で方上手いわよね」


「そうかな。自分ではよく分からない」


「……安心できる。えっちなのがなけりゃね」


「膝の上に乗ってくる女がそれをいうか」


「もうちょっと……、もうちょっとだけ」


 もしかして甘えたかったんだろうか。

 スティーナは気が強くて、才能もあるので何でも一人でやってしまう子だ。

 カナディアと一緒に寝る時に髪を撫でてあげたりすると喜んでくれたから……そのような話を聞いてくれたのかもしれない、


 甘えるように背を預けてくるスティーナに正直嬉しくて思う。

 彼女は怪盗ティーナとして一人で生きてきたんだ。

 だからこそ他人を信じるとはいうのは想像以上に難しいのだと思う。

 多分俺だけじゃなくてカナディアもアメリも信頼しているのだと思うけどこうやって異性であっても身を寄せてくれるのは信頼されているようで嬉しい。


 パシャリ。


 ん? 無心で撫でていたら何やら音がした。


「何……それ」


 スティーナがなぜか魔導機器をこちらに向けていた。


「知らないの? 最近王都で流行ってる魔法の力で撮ることができるカメラっやつ」


「ああ、それは知ってるけど……なぜそれを今、撮ったし」


 スティーナは振り返って小悪魔っぽく笑う。


「向こうでカナディアに求愛した後、この写真を見せてあげよっかなって」


「おまっ! 何考えてんの!?」


 嫉妬深いカナディアにスティーナの髪を撫でる俺の姿を撮った写真を見せられたら間違いなく大太刀で追われてしまう。


「見せられたくなかったら……今度あたしのお願い聞いてもらおうかな〜〜」


 強請られている。

 だけど俺は証拠を握れてしまった手前、項垂れるしかなかったのだ。


「ふふっ、ヨロシクね。ヴィーノ」


 にこりと笑うスティーナにしてやられた感がある。

 まさかこいつこのために膝の上に乗って弄んだというのか。


 まったくずる賢い女の子だ。

 ま……ゴキゲンいてくれるならいいのかな……そう思う。



 でも。



 どうせ強請られるなら今のうちに悪戯しておこう。


 未だ俺の膝の上から離れないスティーナの脇腹を揉みほぐす。


「にょはっ!?」


 当然敏感肌のスティーナがそれに無反応でいられるはずもなく、体をくねらせる。

 なかなかいいくびれをした横腹だ。揉み心地がよい。手を押さえつけるたびスティーナから可愛らしい声が漏れる。

 そのまま両手を横腹から放して、苦手と言っていた首元や耳を徹底的に触りまくることにした。


「きゃはははっ! ちょ、バカ! ひゃん、やめっ、そこはらめって!」



「お客さん! おっ始めるのはやめてくれよ!」


 御者に再度怒られるまで俺はスティーナの弱点を弄ぶことにした。


 トータルで考えれば楽しい時間だった。

 そのまま旅は進み、俺達は黒土の森へ到着する。


 痛恨のビンタを2発はなかなか痛かったが一次的なものとして思うことにしよう。

絶賛お楽しみ会でした……。

なにやってんだという感じの話でしたが今後の流れでわりと必要だったりします。

次回も宜しくお願いします。

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