63 行方を探して
翌朝、冒険者服を来たスティーナと待ち合わせをする。
今日から長期で休みをもらうことにした。これのために2週間カナディアの分も含めて死ぬ気で働いたんだ。
ギルドマスターや他のS級冒険者から小言をもらったが、カナディアを連れ戻すことが急務なので何とか了承してもらえた。
「それでどこから調査するの? かなり時間が経ってるし聞き込みは微妙よね」
「そんな必要ねーよ」
俺はいつも左指につけているルビーの指輪を翳した。
「それ!」
「ああ、これは同じ指輪をしている者同士で簡易的だが距離と方角が分かるようになっている」
カナディアが使えるという怪しげな黒魔術がかかったルビーの指輪。
元々は夫の監視が目的で付けさせられていたが今となっては非常にありがたい機能になっている。
正直……カナディアの居場所の手がかりはほとんどない。
「カナディアの出身ってどこか知ってるの?」
「知らない……というよりはぐらかされて教えてくれなかったんだよな」
S級資格試験の時に分かったことをまとめれば、カナディアは黒の民の末裔と言えるのかもしれない。
カナディアは恐らく外国人ではない。恐らく生まれも育ちもこの国だ。
交易の街のギルドにある日突然現れた黒髪の美剣士……15歳でギルドに入ってきたことは今でもよく覚えている。
そしてルビーの指輪の指し示す方角。
街など存在しない方角を指し示していた、
「途中で捨てたってことはないわよね」
「可能性はゼロではないが……それはないと思う。カナディアは多分……俺を待ってくれている」
「大した自信ね。でも……まぁ……あたしもその通りだと思うわ」
短い時だがスティーナもカナディアの性格をよく分かっているようだ。
カナディアはこのルビーの指輪を今も持ち……黒髪の一族が住んでいると思われる場所に……いる、そう信じたい。
「じゃあ、その方角へ進むってわけね」
「ああ、だが1つだけ思うことがある。それを確認してからだな」
「思うこと?」
俺は頭にあることを証明するために冒険者ギルドへ行くことにした。
ギルド内は相変わらず騒がしく、皆、忙しそうにしている。
特にS級冒険者は俺とカナディアがいない分、出ずっぱりだ。
カナディアと一緒に帰ってきたらいっぱい謝らないといけないな。
タイミングが良くて本当によかった。今日、あの人はギルドで待機ということになっている。
近くに受付係のミルヴァがいたので声をかけた。
「ミルヴァ」
「あ、ヴィーノさん、スティーナさん! カナディアさん……まだ戻ってこないんですね」
「ああ、そうなんだ。でも絶対連れて帰るから安心してくれ」
「居場所が分かったんですか? 分かりました。吉報を祈ってます」
「それでペルエストさんに取り次いでくれないか。S級の俺だったら面会予約とかいらないだろ」
「はい、少々お待ちください!」
SS級冒険者ペルエストさん。
王国ギルドで最高最強の冒険者だ。
圧倒的な人気と多忙ゆえに気軽に合うことはできない。彼はギルドにとっても最重要人物だ。
面会予約なしでも取り次いでもらえるのはそれこそ王族もしくは国の最高機関のお偉いさん、そしてS級冒険者ぐらいなものだ。
ミルヴァから受付係のトップに話が行き、そのままペルエストさんに伝えられた。
十分ぐらい待った後、ミルヴァが戻ってくる。
「奥の執務室へ来るように……だそうです!」
「分かった、ありがとう」
王都ギルドの4階建ての建物であり、かつ強烈な階級社会と言える。
地方ギルドと違い、王都は国内最大ゆえに所属人数も圧倒的に多い。
交易の街や工芸が盛んな街のギルドの常識がまったく通用しない。
例えば他の地方都市ではA級冒険者は権力があるように思われるが王都では数が多いためそれほどの特別感はない。さらに才のある者しかなれないのにもかかわらずB級冒険者一律下級冒険者と同じ扱いだ。
王都から地方ギルドに行くとその扱いの差にびっくりすると言う。
ライバルが多い分、伸びる人は伸びてS級になるが伸び悩むA級冒険者も数多い。
そのためライバルとの戦いを避けて。地方都市で一発大きな事件を解決してS級になろうと考えるA級冒険者もいるのだ。旧パーティ【アサルト】なんかもそうだな。
3階はギルドの幹部の執務室とS級冒険者の個室がある階だ。
ここまで来てようやく特別感が出てくる。
部屋数の地位の関係で俺とカナディアは同室が与えられている。実は王国のS級冒険者の数は他国より多い方である。
そして4階。ここを独占するのがギルドマスターとSS級冒険者ペルエストさんだ。
「4階に行くの初めてかも」
「階段の前に警備兵がいるからな」
王国警備兵がいるのも4階からだ。保安上の理由で止め役は必要だ。
ちなみにS級の胸章さえ見せれば警備兵も素通りさせてくれる。
俺が胸章見せると兵は敬礼し、階段を開けてくれた。
「それで? SS級冒険者に何の用なの?」
「行けば分かるさ」
ペルエストさんの執務室の前へ到着する。
相手は絶対的の上位の冒険者。失礼のないように身だしなみを整える。
気さくな方だから気にしないだろうけど……礼儀はちゃんとしておかなければならない。
扉をノックし、声をかけた。
「ペルエストさん、ヴィーノです。お時間よろしいでしょうか?」
「ああ、入れ」
扉を開けて入室した。
「来ると思ったぞ、ヴィーノ」
重厚な声と威厳のあるが鋭い目付きで俺を見据えてくる。
やっぱり俺の思っていた通りカナディアの行方を知っているとみた。
……何としてでも情報を手にいれないとな。
次回、EX4ぶりの王国最強冒険者とのお話し会です。
次週も宜しくお願いします。






