EX6 女子だけのS級クエスト②
「よく分かりませんけど……一緒に寝ているだけですよ。私、目を瞑ったら2分で寝入るので」
「え、じゃあえっちなこととか」
カナディアの顔が急激に真っ赤になる。
「し、しませんよ! そーいうのは結婚してからって法律で決まってます!! ま、ヴィーノが押し倒してくるなら……妻として受け入れますけど」
そんな法律はない。
貞操概念とかあるんだけど成人しているのだから……そのあたりは自由だ。
この世の結婚適齢期は20歳前後だからちょっと早いというのもある。
「ヴィーノはどうなの? 一緒に寝ているって……襲ってこないの?」
「うーん、私、2分で寝ちゃいますし、朝までぐっすり寝ちゃうので……よく分からないんです」
「あなた……襲われているわよ。あなたの体付き見てムラムラしない男なんているわけないでしょ」
「ヴィーノはそんなこと……でも、最近、私の体ばっかり見ている気がするんですよね。胸5割、尻3割、髪2割って感じです」
そりゃ……その暴力的な胸とか……体付きを見れば誰だってそう思うわよ。
正直1つ年下とは思えないくらい。……血筋とかなんだろうなと感じる。
カナディアくらいの美人が無防備な格好で寝息とか立てたら秒で襲いそうな気がする。
もし黒髪じゃなければ……カナディアは違う意味でも有名となっただろう。
「スティーナだってヴィーノによく胸とかお尻よく見られますよ」
「そうなの!?」
そういえば……イヤらしい視線を向けられることがあるような気がする。
カナディアほどじゃないけどあたしだってスタイルには自信のある方だ。
今の格好だって、お腹出したり、太もも出す身軽な格好だけど自信がないと出来ない。
……カナディアと比較すると正直落ち込むケド。
でもヴィーノが見てくれてるんだ……。嬉しい。
「やっぱり泥棒ネコのにおいがします」
だから違うって……。
「なぁなぁカナディア、あたしは!? あたしは!?」
「……アメリさんは顔だけかと」
「ちっ、あいつに幼女趣味はないか」
自分で幼女というのはどうかと……。
「でも私はヴィーノを信じてます。本当に押し倒すなら起きてる時だと思うので……その時は……」
なんだろう、この胸のモヤモヤ。嫉妬ではなく、単純に興味がある。
2人の恋路に対して横恋慕とかする気はないけど……2人のベッドシーンを覗いて見たい衝動が止まらない。
……幻影魔法で侵入してみようかな。いや……でもさすがにまずいか。
その時、アメリが空へ視線を向けた。カナディアも同様に向ける。
2人の視線の移動を見て、あたしだけが遅れる。
「お、そうこうしてる内にデュラハンが出てきたぜぇ!」
空から舞い降りてきたのは首のない鎧戦士。
腰から下は馬のような形相をしている……S級モンスター。
これが……デュラハン。
怖い……。あたし一人だったらあっと言う間に殺されてしまうだろう。
「アメリさん」
「おうよ、今回あたしがやらせてもらうな」
デュラハンが大槍を向け、馬の足を走らせて向かってきた。
カナディアは大太刀を抜いていない。アメリ1人で大丈夫だというの?
今回あたしは2人の支援としてこの場にいる。あたしにできることは……。
何も無かった。
「【ウインドアーマー】」
アメリの体に風がまとう。
巨大なハルバードを構えて、デュラハンの突撃に備えた。
そうだ……確かアメリは生まれつき筋力の質が高いって聞いていた。
細腕なのに成人男性の数倍の筋力を発揮することができるって。
そして優秀な魔法使いでもあり、風属性を得意としている。
そんな生まれつきの体質と魔法の力が合わされば……。
「散りな」
デュラハンの胴体など一撃で真っ二つに裂くことができるのだろう。
小さき体から生まれるとんでもない一撃。
まるで風車のようにハルバードをまわして敵を葬り去る。
これが風車の実力なのね。
S級魔獣を一撃で倒し、アメリはにこやかに笑った。
「おっし、もう少しでセーフエリアだ。ふんばるぞ!」
「はい!」「うん」
本当に頼りになる人達ばかりだ。
1人で踏ん張るだけだった怪盗はもういない……。
これからはみんなで頑張っていこう。そしてもっと強くなって……世界を旅しよう。
「セーフエリアについたらあたしが2人にマッサージしてやんよ! いっぱい笑顔にさせてやるから」
「ひっ!」
「それは勘弁して……」
手をワキワキしながら楽しそうに話すアメリにため息が出てしまうのであった。
いよいよ幕間の話も終わりが見え始めてきました。
残り3話で3章開始となります。
EX7 スティーナの戦い①です。
宜しくお願いします。






