EX5 男だけのS級クエスト②
「むっ」
シィンさんが空を見上げ睨んでいたので同じように見上げると大空を飛ぶドラゴンの姿が見えた。
「毒龍ロトンドラゴンか……珍しいな」
「この遺跡に生息してるんでしたっけ」
珍しいタイプのS級魔獣である。
名前のとおり猛毒攻撃の激しい魔獣だが手強いというより発見例が少ない印象がある。
言えばレアモンスターという位置付けだ。
貴重な素材が手に入るので何とか討伐したい所だ。
「このあたりを旋回してますね……」
「ああ、私の魔法の射程ではどうあがいても届かない」
「俺は届くんですが、あの距離だと威力が……。ん?」
いや、待てよ。
実験しようとしていたアレが使えるか……?
俺はポーションホルダーから……最近研究している特殊ポーションを取り出す。
「バッテリー・ポーション!」
「なんだそれは……」
シィンさんが怪しげににらみつけてくるが問題ない。
このポーションは何と魔法を封じ込め、溜めることができるポーションだ。
ちょっと複雑な合成になるので素材は明かさないが実用化できれば戦闘の幅が広がる。
「シィンさん、このポーションにディープフリーズ……氷の魔法を溜めるイメージでやってみてください」
俺はシィンさんに手渡し、さっそく魔法力を溜めてもらうことにする。
シィンさんが魔法力を高めたことでその魔力がポーションにどんどん吸い込まれていく。
うん、上手くいっているようだ。
魔力を十分にため込んだポーションを受け取り、俺はのんびり旋回しているロトンドラゴンを見据える。
「いっけーーー!」
今回は当てさえすればいい。威力を殺して、射程と命中に全力を尽くす。
まっすぐ飛んでいったポーションはドラゴンの体に命中し、ポーションが割れることで封じ込められた中の魔法が炸裂した。
恐ろしく強力な氷の結界はドラゴンの周囲を取り囲み、冷気で体力を奪っていく。
その圧倒的な力は一撃でドラゴンを地へと落としてしまった。
「よっしゃ! 大成功だ」
「相変わらず奇抜な戦い方をするな……」
少し口調が明るい。投げたのは俺だが魔法はシィンさんの効果だから、シィンさんが倒したようなものだ。
よし……これなら。
「シィンさん、せっかくなんでいくつかのポーションをつめてもらえないでしょうか!」
俺とカナディアのパーティで唯一の弱点は魔法攻撃に弱い所だ。
物理攻撃に耐性のある魔獣が現れるとかなり苦戦することになる。
魔法が得意なA級、B級を呼べばいいのだがスティーナのように優先的にパーティに来てくれる人材は意外に少ない。実の所、黒髪の件もあるし適当な人材は選べない。
だからシィンさんの魔法を溜めたポーションを定期的に十数個持てれば……それも解消される!
シィンさんは俺のポーションを受け取り、魔法を込め始めた。
ピキピキ……パリン。
「割れた!?」
「特殊ポーションの精製が甘いな。これではまだ使い物になるまい」
「ええー、さっきは上手くいったじゃないですか!」
「あれは私がうまく制御したからだ。適当に込めると今のように割れてしまう」
まだ試作段階だからなぁ……。
シィンさんのように魔力調整が上手い人なら魔力側から合わせられるが……やはりポーション使いとしてはポーション側でいろいろ調整できるようにしたい。
しかも1本あたりかなりの魔力を吸われる。強い魔法使いがいればポーション研究もはかどり、魔法に合わせた耐久性のあるポーションを作成することができるだろう。
それが出来ればどんな魔法でも気軽に溜められるようになる。
ただそれには研究として魔法使いに手伝ってもらわないといけない。
魔力をたっぷりあって、ポーションの耐久性に応じて魔法力の度合いを調整できる魔法使いか……。
「シィンさん」
「……なんだ」
「俺の電池になってくれませんか?」
「死ね」
当然断られてしまった。
S級は無理だよなぁ。電池要員……他から探すかあ。
どこかにいないかな……。
この後、沈んだ毒龍を回収し、巡回任務を終えることにする。
その頃、俺とシィンさんとは別でS級の巡回任務を行っているパーティがあった。
さて……ヴィーノの電池要因はいつか現れるのでしょうか!
次回EX6 女子だけのS級クエスト①です。
来週の投稿をお楽しみください。






