EX3 冒険者の休日④
「そんなわけでシィンさんも一緒に来てもらおうと思うんだけどいいかな?」
「だめだヴィーノ。その言い方だと女性達が嫌な顔をしてしまう」
「シィンさん、何か女性にトラウマでもあるんですか?」
35歳のS級冒険者が俺の背中に隠れて、ボソボソ話し始める。
王国最高の魔法使いなんだって、戦闘ではマジで最強なんだって。
「休日にシィンさんと会えるなんて嬉しいです。ご一緒させてください!」
「……カナディア」
「ああ、【幻魔人】よね。あの時のお礼もしたかったし構わないわ」
「わーー、すごいです! 工芸の盛んな街でも噂は聞いてましたよ! すっごい魔法使いなんですよね! お会いできて光栄です!」
想像通り、3人は快くシィンさんを迎えた。
後ろを向くとシィンさんの瞳からポツリと涙が流れていた。
「……3人とも……天使か何かか?」
「良かったですね」
「それとも……実は3人とも私が好き?」
「その勘違いは誰も幸せにならないのでやめましょうね!!」
◇◇◇
俺達は商店街をぐるりとまわる。
元々女性陣の買い物に付き合うという形だったので服の購入は女性向けの店ばかりだ。
男はちょっとだけ入りづらい。
女性陣は各々試着室へ入り、選んだ服を着ては脱ぎ、別の服を試着していく。
「ヴィーノ、どう思いますか?」
「ヴィーノ、見てくれない?」
「ヴィーノさん!」
3人とも試着室に入っているので俺に感想を聞かれるがかわいい以外の言葉なんて出なくないか?
まともなファッションセンスの無い俺がコーディネイトなんてできるはずもない。
それより困るのは後ろの人である。
「俺の後ろにぴたって付くのやめてくれませんか」
「服の感想を聞かれたらどうする。私に聞くことはないと思うが……憂いは絶っておきたい」
「そもそもさっきからずっと俺の側にいますけど、自由に動いていいんですよ?」
「おまえがいなければ私はぼっちになってしまうではないか。私を放置するな」
何のためにこのグループに加えたと思っているんだ。
シィンさんは本当に喋らない。女の子と極力喋らないように距離を取る。仕事の会話ならまだしも私用の会話がまったく出来ないんだろう。
男相手だと流暢なのに……何でこう……。多分俺より女好きっぽいのに。
女性陣も目をギロギロさせているシィンさんに話かけづらいから俺に集中してしまっているのだろうと感じる。
正直、シィンさんはクエスト中より緊張してるように見える。
◇◇◇
「シィンさん、嬉しそうですね」
3人の女性陣が買った荷物を手に持ってシィンさんはとても嬉しそうだ。
ちなみに俺が全部持たされそうになった所をシィンさんが持つことを提案してみたのだ。
「私は男だからな! 荷物持ちはまかせるといい」
これが王国で10人しかいないS級冒険者の正体である。
何でこの人が雑用係みたいなことしているんだろうか。
「ありがとうございます!」
「ふっ」
カナディアやミルヴァがありがとうございますと言ったことでこの様子である。
マジでチョロい。何度も言うがクエスト中はすげー人なんだけど。
それにしても店、5軒目なんだがどこまで買う気なんだ。
「私の分まで買ってもらって……申し訳ないです」
「いいですよ。S級の報酬金の使い道に困っていたので!」
ミルヴァが買おうとした服はカナディアが買ってあげているようだ。
胸を張って自慢しているところから年上ぶりたいのだろう。
俺は合成費用でS級クエストの報奨金を溶かしてしまうが、カナディアは倹約家のためかなり金を持っている。
基本武器、防具、アイテム、あとは調理器具と紅茶関係の物しか買ってる所を見たことない。
スティーナは服よりも装飾品に目がいっている。
ツインデールの髪を結ぶ髪飾りやリボンなどを購入したようだ。
各々個性が出ているなって思う。
「ねぇ、ヴィーノ。これなんてどうかしら」
そんなこんなで女の買い物に長々と付き合わされるのであった。
それから時は過ぎ、すっかり夜になってしまった。
「今日は付き合って頂けてありがとうございました!」
ミルヴァは明るい笑顔で礼を言う。
彼女の愛らしい笑顔本当に癒やされてしまうな。
「浄化されそうだ……」
シィンさんのリッチ成分が浄化されそうになっている。
「これ私達からのプレゼントです。受け取ってください。今日いっぱい付き合ってもらったお礼です」
カナディアから1つの包装袋を渡された。
いつの間にと思いつつ、中身を開けてみると両手にはめることができるグローブが入っていた。
「手首の負担を押さえる効果のある魔導具です。ヴィーノ、ポーションの投げすぎで手首とか痛めている時あるじゃないですか。少しでも和らげばなぁって」
「ありがとう、嬉しいよ!」
「魔法の効果で手にはめてると思わないくらいぴったりつくってものだから、ポーション投擲にも影響出ないと思うわ。試してみてよ」
実際にはめてみると本当にグローブをしたか分からないぐらい手に合ってしまった。
多少のズレは発生するかもしれないが十分補正できそうだ。
連戦連戦だと手首に負担がかかってしまうからどうしようかと思っていたんだ。すげぇ嬉しい。
「で、シィンさんもはい……これ」
スティーナは同じような袋をシィンさんい渡した。
「わわわわわ、私にもか!?」
「シィンさんはその格好じゃ目立ちすぎるし、あたしとカナディア、ミルヴァで上下の私服を選んでみたわ。今度遊ぶ時にでも着てみてよ」
「また誘ってくれるのか……。君達は女神か!」
シィンさんは喜びで涙を流しているが正直真っ黒なローブでこの界隈を歩くのは正直良くなかった。
どう見たって4人のグループに死神がついているみたいだったもんな。黒髪の噂を超える本物だ。
それに俺の後ろにぴたりとついてきたから……店員さんから小声で憑かれてるんですか? って聞かれるし大変だった。
「ぐぅーーーー」
ミルヴァのお腹から気持ちの良い音が流れる。ぱっとお腹をかくし、顔を紅くしてえへへと笑う。
実にかわいい。
もういい時間だもんな……だったら。
「じゃあシィンさんと俺でメシをおごるよ。シィンさん、王都でいい店とかないですか?」
よし、ここでシィンさんの評価を上げていれば女子達の好感度もアップ。
俺に対する評価もアップだ。
気分の良くなっていたシィンさんは力強く手を振った。
「そうか、なら私オススメの虫料理の店に行こうか!」
「え……」
突如、その言葉に空気は最悪となる。
3人の女の子から露骨に嫌な顔が出てしまったからだ。
その……顔を直視してしまい、やらかしてしまったことを理解したシィンさんは……。
「死……」
崩れ落ちてしまうのであった。
何でこの人稼いだ好感度を台無しにしちゃうんだろうな……。
結局晩ご飯はおしゃれなレストランで食べることにしました。
そしてシィンさんはその後、一言も喋らなかった。
楽しい休日は終わり、冒険者達は日常へと戻っていく。
シィンさんのイメージですがは髪がかぐや様は告らせたいの石上くんで顔はリゼロのペテルギウスみたいなのをイメージしてます。
とても良きお顔です。
次回はEX4 SS級冒険者
来週も宜しくお願いします。






