EX2 ピンクの髪の受付嬢
王都の冒険者ギルドは当然ながらこの王国で最も大きい。
S級クエストが唯一受注できることからS級冒険者は皆ここを拠点にしている。
大きな街でも1組しかいないA級パーティもここでは5組もいる。下級冒険者の数も圧倒的に多い。
そんな大所帯のギルドなので受付係の数も多い。
今日は珍しい顔がそこにはいた。
受付に用事はなかったけど……顔を出す。
「ミルヴァ、こんなところで何をしてるんだ?」
「ヴィーノさん! お久しぶりでーす!」
桃髪を肩まで伸ばした元気いっぱいの女の子が笑顔で言葉を返してくれた。
受付係のミルヴァ。数ヶ月前まで所属していた工芸が盛んな街の冒険者ギルドの受付係の女の子である。
まだ成人したての15歳で……ミスも目立つが元気よく、愛嬌のある顔立ちのため密かに人気があった。
「どうして王都に?」
「王都の受付係で辞める方と出産による休職で2人分穴が空くのでフォローに来たんですよ。あっちはそんなに人がいらないですしね」
そういえばそんな話があったな。
とにかく数を捌かないといけない王都では受付係の負荷も大きい。
2人も抜けるのであればフォローは必須だろう。
「ヴィーノさんも相変わらずポーションで有名ですよね。王都に来てからも【ポーション狂】の活躍は嫌でも耳に入りますよ」
「あの戦い方してるやつはいないからな。【アイテムユーザー】の力と投擲術はそう簡単にマネできるものでもないし」
「砲弾龍戦が懐かしいですね~。一歩間違えたら私死んでましたもん」
あの戦いから数ヶ月経ってたんだっけ。
砲弾龍が最後に熱線を放とうとした時ミルヴァも側にいた。
俺が投げたボム・ポーションがうまくいかなかったら二人ともここにはいないな。
「ヴィーノ、何してるのよ」
金髪のツインテールをひょこひょこ揺らしてスティーナがやってきた。
まだD級のスティーナは稼ぎが少ないので俺やカナディアと組む以外でも積極的にクエストに参加していた。
元怪盗だけあって目利きに優れており、高品質のものを採取してくるので採取クエストでの評判は上々だ。
「前に所属していたギルドの受付嬢だったミルヴァだ。スティーナはまだ王都以外は行ったことはなかったよな」
「ええ」
「ふわぁぁ、すっごい美人さんですね! ミルヴァです。宜しくお願いします!」
「うん、あたしはスティーナ。宜しくね」
「えーと、スティーナさんは盗賊職で……あっ、ヴィーノさんとカナディアさんのパーティ仲間なんですね! すごい!」
このミルヴァの言い方は語弊がある。
S級冒険者は基本パーティを組まずに単独で行動する。
でも1人では危険なため同レベルの冒険者か低級冒険者を連れていくのが普通だ。
S級冒険者はクエストに引っ張ってくる人をお気にいりとすることができる。
お気にいりに設定された冒険者はそのS級冒険者の許可なく、他のパーティに入ることができなくなる。
この制度、実はかなり危ないんだがS級冒険者が絶対というギルドの方針に誰も異を唱えることはできない。
実際の所、S級冒険者に認められることは栄誉という風潮があるので問題は発生していない。
スティーナはD級でありながら俺とカナディアにお気にいり設定をされているので一目おかれていたりする。
怪盗ティーナだった過去があるため、事情を知るアメリや【幻魔人】のシィンさん以外には取られたくないという所が本音だ。
「ふーん、でもあれですね。カナディアさんにスティーナさん。ヴィーノさんもスミにおけませんね」
「はぁ、どういうことだよ」
「両手に花ってことですよ」
カナディアは分かるが、スティーナはどう考えても違うだろ。
むしろ……嫌われているんじゃないかと思うくらいだ。結構ツンツンしてるし。
「スティーナさんはどうなんですか? ヴィーノさんこと」
「は? 何言ってんのよ。こんなポーションバカを想うわけないでしょ」
「ポーションバカ……」
「気配り上手とか……体付きがいいとか思うけどそれとこれとは話が別なんだからね!」
「ほらっきついだろ?」
「ヴィーノさんにはデレが見えないんですね」
びくっ!
なんだ……急に悪寒が……。
後ろを向くとカナディアが大太刀に手をかけ近づいてきた。
あの碧色の光ったカナディアは目を良くない状況が見える
カナディアは低めの声を出す。
「泥棒ネコのにおいがしました」
「カナディアさんは王都に来ても変わらないですね……」
ミルヴァはこの短編でまだまだ登場します。
次回EX3 冒険者達の休日となります。お楽しみ頂ければと思います。
来週も宜しくお願いします!






