06 自己紹介
「……っ。ここは……」
「目が覚めましたか?」
おぼろげな意識が少しずつ覚醒していく。
手足が地についていることから寝転がっていることが分かる。
目線の先にはすごく綺麗な女の子が俺を見て、微笑んでいた。
何だか頭が柔らかい何かで支えられているような気がする。
それがカナディアの柔らかいフトモモであることに気付くのはそれから少し後であった。
◇◇◇
「俺は気を失っていたのか」
「ええ、ドラゴンを倒してすぐに倒れてしまいました」
うん、膝枕ってすばらしい。
美少女の膝枕に動揺しそうになるが、俺は何とか耐えきることができた。
恐らくカナディアは年下だろうし、慌てふためくのはかっこ悪い。
聞けばここはダンジョンの内にあるセーフエリアだ。
踏破した冒険者達がマッピングし、神聖なまじないをして魔物を寄せ付けない部屋を構築した場所。それがセーフエリアである。
どうやらカナディアがここまで運んでくれたようだ。
「何から何まで……悪い」
「結果的に私も救われましたし構いません」
ポーションは傷を治すが失った血液までは戻せない。
旧パーティに殺されかけた後、すぐにポーションを飲めばよかったのに……こうなっちまうのが無能と烙印されちまう所なんだろうな。
「あの……えーと……」
カナディアは何か戸惑った様子を見せていた。
何だろう。膝枕の件ではないと思うが……あ、そういえば。
「まだ名乗ってなかったな。俺はヴィーノ。あんたはカナディアだよな」
「あっ」
ビンゴのようだ。カナディアの表情に戸惑いがなくなる。
「ヴィーノさん、何があったんですか? 私があそこへ行く時……あなたがパーティを組んでいた人達が横を過ぎていましたが」
そうだ、俺はA級パーティ【アサルト】の面々から囮にされ、パーティから追放されたんだった。
俺は正直にカナディアに話すことにした。
「それは大変な目に遭いましたね」
「ああ、まさかあんな感じで裏切られるとは思ってもみなかった」
交易の街に戻って、騒動を訴えてもいい。
俺の立ち位置的に信用されないかもしれないが、仲間殺しは禁忌。
元々、【アサルト】はA級冒険者としてやりたい放題していたから評判は良くない。噂が噂を呼んでS級昇格も保留となるかもな。
ただそれをすると……逆恨みをされる可能性が高い。
あいつら容赦ないもんな。
俺はカナディアのフトモモから頭を起こし、立ち上がる。
体も良くなってきたし、ダンジョン脱出をしないとな。
アイテム袋を取られてしまったから無一文だ。でも剥ぎ取ったタイラントドラゴンの素材を売れば金は取り返せる。
「さて……これからどうしようかな」
立ち上がった俺をカナディアは怪しげに見ていた。
「あなたは何者なのですか?」
「え、どういうこと?」
「……私にはあなたが特別な人間に見えます」
「買いかぶりすぎだよ。俺は無能の烙印を押された最底辺の冒険者だ。それは変わら」
「はぁ……」
カナディアはため息をついた。
「私がさっきもらったポーションのビンです。これを全力で投げてみてくれませんか」
「いいけど……」
カナディアから飲み干されたポーションのビンをぶん投げてみる。
これで何が分かるというのか……。
壁に向かって思いっきり投げてみた。
ズゴオオオッ!
「壁にめり込んだね」
「ええ、巨大ゴーレムのパンチでもそうはなりませんよ」
そういえばドラゴンの首をぶち折ったのは俺だっけ……。
俺いつからこんなことできるようになったんだろ。
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