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【書籍化】ポーションは160km/hで投げるモノ!~アイテム係の俺が万能回復薬を投擲することで最強の冒険者に成り上がる!?~(WEB版)  作者: 鉄人じゅす
2章 ポーション使いと怪盗少女

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53 次の手

「お、覚えておきなさいよ!!」


「おう! 今度一緒に遊ぼうな! カナディアも一緒に笑い合おうぜ!」


「何で私も!? 遠慮します!」


 ヘロヘロになったスティーナを解放して帰してあげた。

 名前も顔も分かったので逃がしたって問題はない。住所とかも実は割っている。


 今日はいったんお開きとしてアメリも帰ってもらうことにした。

 さて、次の手を考えなければならない。


 明朝、カナディアと相談し合う。


「ヴィーノ、どうする気ですか?」


 スティーナから残る宝石も回収したため、悪者から盗んだ宝石以外は全て回収できたといってもよい。


 だがその悪者から盗んだ宝石の補填が俺の罪として残っている。

 この点、スティーナを王国軍に引き渡せば罪は怪盗ティーナに移るので俺のやらかした失敗は帳消しとなる。


 ちなみに冒険者は正義の味方ではない。

 犯罪者の逮捕権などもない。あくまで冒険者の役割はダンジョンでの魔獣討伐、素材採取がメインだ。

 あとはS級はそれに王国軍の教育や王族、貴族の護衛が加えられる。


 つまりスティーナを捕まえて王国軍に突き出すかは個人の裁量となる。

 普通であれば突き出すんだけど……。


「もう一度スティーナに会いにいこうか」


 昨日は怪盗での仕事中だったし、普段のスティーナに会ってみたい。

 そこでもう少し見極めてみようか。


「あ、ヴィーノ。お忘れですよ」


「え?」


 俺の指に取り返したルビーの指輪をはめられる。

 有無を言わさないオーラでにこりと笑うカナディアに何も言えなかった。


 女遊びするときは絶対外していかねぇと……。



 ◇◇◇



 王都には明確に格差が存在する。

 王城周囲に存在する貴族街。冒険者ギルドや店、それなりの暮らしができる商業街。

 あとは貧民街の3種がある。


 D級、C級の冒険者達達も税金が払えず貧民街で暮らすものも多い。

 俺とカナディアは当然ながら商業街に居を構えている。S級冒険者が貧民街に住んでいたら夢がなさ過ぎる……。


 このあたり、社会的な問題になっているが冒険者である俺達がどうにかできるものでもない。

 あるがままで暮らしていくしかなかった。


「ここは……ひどいにおいですね」


 貧民街、通称スラムに到着した俺達はスティーナが働いている飲食店へ向かう。

 ゴロツキやスリも多く、治安は悪いが冒険者にケンカ売ってくるやつはさすがにいない。

 俺とカナディアにはS級の胸章もあるしむしろ尊敬されたいくらいだ。


 実を言うと怪盗を捕まえる前からスティーナの存在は分かっていた。

 あの夜の逃走劇で逃げられる可能性もあったからな。ルビーの指輪の探知を使ってスティーナの住所と勤務先は特定していた。


「いらっしゃいませ!」


 スラムの中にある大衆食堂の中でスティーナはエプロン姿で接客していた。

 軽快に客とやりとりをしており人気者であることが分かる。

 薄めの金髪のツインテールがひょこひょこ揺れ、メシを食っている客達がスティーナ目当てで来ていることがよく分かるほど視線を集めていた。


 そして俺と目が合う。


「げっ!」


 すごく嫌な顔をされた。

 だがその表情はすぐ変わることになる。


「こちらにどうぞ!」


 客席にまわされて、俺達は傷が付きまくったテーブルへと通される。

 スラムの店だけあって……やっぱり汚れてんな。


「ご注文は?」


 ふてくされた顔でスティーナが注文を取りに来た。


「昨日は大丈夫でしたか?」


「大丈夫じゃないわよ。肌が無駄に敏感になって、服着るのも大変だったんだから」


「あー、分かります! アメリさんのアレくらうとほんと足腰立たなくなりますからね」


 アメリの被害者が分かち合う。

 メニュー表をぱらりとめくる。ハンバーガーのお店のようで手頃な値段で色とりどりの素材をパンズではさんで提供するようだ。


「スティーナさん、オススメは何ですか?」


「そーね。この時期だったらレタスにピクルス、あとベーゴンエッグなんていいわよ」


「それにします」


「あ、じゃあ俺も」


「で、何しに来たのよ。あたしに会いにきたってのは分かるけど」


「もう少し君と話したいと思ったんだ。仕事上がりでいいから少し話せないか?」


 スティーナ少しだけ頭を抱える。


「仕事先がバレてるってことは……」


「悪いけど住んでる所も押さえてある」


 スティーナははぁっとため息をつきメニュー表を回収していく。

 俺達から離れて立ち去っていく間際振り返った。


「2時間後、スラムの中央公園に来て」


 それだけ言ってスティーナは仕事に戻っていった。


「ヴィーノはスティーナさんとどういった話をする気なんですか」


「……もう少し彼女のことを詳しく知りたい。ただそれだけかな」


「へぇ……、まぁこの世は重婚可能ですから一夫多妻制として側室を持ちたい気持ちも分からなくもないですけどねぇ」


「違うから……。大太刀はしまってください」


 そもそも側室ってなんだ。初めて聞くぞそんな言葉……。

 黒髪が逆立とうとし、大太刀を抜こうとするカナディアを押さえて、少し遅くなった朝食を取ることにした。


 あ、思ったより美味しい。


 食事の後、軽くぶらついて時間を潰した後、仕事を終えたスティーナと合流する。

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書籍版ポーション160km/hで投げるモノ! ~アイテム係の俺が万能回復薬を投擲することで最強の冒険者に成り上がる!?~』
第2巻が7月20日 より発売予定です! 応援よろしくお願いします!

表紙イラスト
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