44 カナディアと二人暮らし
S級冒険者となった俺とカナディアが王都で暮らし始めて3ヶ月が過ぎた。
もうすっかりと王都の暮らしにも慣れ、お互いS級冒険者として忙しくしている。
始めは別の家で暮らす案もあったんだが。
「一緒に住むなんて当たり前じゃないですかぁ」
カナディアが一緒に暮らすことを渇望したため、俺達は以前と同じように共同生活を行っている。
S級になってクエストの報酬や手当などが大幅に増えたのでそこそこ良い家を借りることができた。
ゆくゆくは大きな家を買って、ポーション研究所を作りたいなと思ってたりする。
今はまだS級としてもひよっこ、身の丈にあった暮らしをしていくべきだろう。
「ごはんにしますか? それともお風呂にしますか?」
「すっげーお腹空いているんだ。ご飯食べたい」
「ふふふ、すぐ準備しますね」
料理をするときのカナディアは腰まで伸ばした黒髪をリボンで1つまとめにしている。
新しい家は台所も大きく、料理好きで料理上手のカナディアも満足していた。
ちなみに俺も料理は得意なので先に帰った者が料理を作るという形となっている。
2人いる時はカナディアが作ることが多い。
カナディアは東方から伝わる、和と呼ばれる料理が得意である。
肉じゃがとかすごく美味しい。明日は肉じゃがにしてもらおうかな。
今日の晩飯のカレーライスも好みだ。米料理ってこの地方では珍しいんだよな。
あんなに美味いと分かっていたらもっと早く取り入れておくべきだった。
ちなみに俺は雑多な鍋料理が得意だ。人数が多い時は作るのも楽だし、美味いんだぞ。
◇◇◇
「今週は出張が多かったですよね」
「ああ、工芸が盛んな街に行って、鉱山の街、そんで魔の森だ。ずっと出っぱなしとは思わなかった」
S級冒険者の仕事として救助がかなり多い。
強力な魔獣に襲われて取り残された人の救出などだ。魔物を倒しつつ、人を守る、あとついでに貴重な素材も採取してこいという二重、三重の仕事が重なってやがる。
S級冒険者のアメリが大変だぞ~って言ってたことを最近実感している。
ただクエストをこなせばよかったA級以下の時代とはまた違う難しさを感じるんだよな。
「王都に変わりはない?」
「あったことと言えばB級の人達が高難度のクエストを達成したり、噂の怪盗がまた活躍したり、ギヨーム商店が貴族街で作った建物で大きな催しをするくらいでしょうか」
そのあたりは俺も話を聞いている。
1週間ぐらいじゃそんなもんだよな。
「カナディアはどうなんだ?」
「私はいつも通り王国軍事演習の手伝いですよ」
カナディアはここ3週間ほど王国軍の兵士の教育を中位のS級冒険者と一緒にやっている。
王や国を守る騎士や兵士達はとにかく実戦が少ない。国同士の戦争もこのあたりでは無いから弱体化が言われているのだ。
魔獣狩りも基本冒険者が行うのでこうやってS級冒険者が教育にあたる。
「嫌なことはされてないか?」
「最初はひどかったですけど、兵士長をコテンパンにしてからはわりと従順になりましたね。最近は仲良くやれていると思います」
カナディアは世界でも珍しい黒髪の一族の末裔。
言い伝えで不幸を呼ぶ者、死神などと言われるがS級冒険者という実績を得た今は……いろんな意味で有名になっている。
兵士長を倒した時の姿が美しかったようで実は密かにファンが増えているらしい。
もちろん悪い噂も出ている。このあたりをいつか消し去っていきたい。
「今度、ご飯一緒にどう? って誘われちゃいました」
「え」
「でも断りました。私はヴィーノと一緒にいたいので!」
カナディアはゆったりと微笑んだ。そんな優しい言葉に胸が思わず熱くなる。
黒髪の件で知られていないだけで、カナディアは魅力的な女の子だ。
可愛くて髪が綺麗で優しくて、スタイル抜群、料理上手でちょっと抜けている所がまた良い。
今回の軍事演習を勧めたのは俺だ。工芸が盛んな街と比べて王都はまだまだ黒髪に対する迫害が根強い。
なので冒険者や王国軍の方から意識を変えていくのが一番だと思ったんだ。
ただ、カナディアの魅力を知る男は俺だけだと思っていたのでちょっと複雑だ。
「そもそも私はそんな尻軽女ではないのです。夫に一途なのですから……」
「カナディア……俺達の関係って人から見たらどう見えるんだろうな」
「え~そんなの……理想的な夫婦に決まってるじゃないですか」
これは……S級冒険者になってから分かったことだが……。
俺とカナディアの関係の認識が大幅にズれていることに最近気付いた。
もっと早く気付くべきだったと今更になって思う。






