41 結晶獣戦 アメリ視点
「ヴィーノ、カナディア……ヤツの攻撃を止めろ!」
「はい!」
「分かってる!」
結晶獣の攻撃を食い止めないと恐らく天井は崩れ、あたし達は生き埋めになってしまう。
カナディアは近づき、ヴィーノは大きく手を振りかぶった。
「五の太刀【大牙】!」
「全力だぁぁぁあああああ!」
カナディアの最大の一撃とヴィーノの最大の威力のポーションが結晶獣の角に突き刺さる。
2人の最大の一撃、これで割れないものなど存在しない、そのような一撃だった。
しかし……結果は無情だ。
「まだ足りないの……」
「くそっ……」
カナディアは単純な火力不足。
ヴィーノは恐らくポーションの瓶があいつ自身の力を100%伝えていない。瓶が持たないんだ。
仕方ない……あたしが最後の一撃をするか。
ここまでよくやった。もう十分だ。
でも2人の目は諦めてなかった。
「カナディア! 砲弾獣の時にやれなかったプランCで行くぞ!」
「分かりました!」
なんだ? まだ手があるのか?
まだ……ギリギリ間に合うか。もう見守るのはこれで最後だ。
これで無理ならあたしが角を折る。
ヴィーノは近づいてくるカナディアに大量のポーションを押しつけた。
本当に何をするつもりなんだ……。
カナディアはすごい勢いでポーションを何本もがぶがぶ飲んでいく。
「もう飲めましぇん」
「良し!」
カナディアは咳き込み、大太刀を構える。
ヴィーノは腰を下ろして、手をカナディアの腰にまわした。
そういうことか!
人間の70%は水分だと言われている。
それをポーションで満たすことで……カナディアはポーション女となる。
そして、ヴィーノはポーション投擲の能力を持つ。
カナディアをポーションに例えやがった!
「うおおおお!! いけええええええ、カナディア・ポーション!」
ヴィーノはポーションを投げるようにカナディアをぶん投げた。
ポーションを投げたの変わらないほどすごい速度だ。
前に突き進むカナディアは大太刀を構えた。
「五の太刀・終極【剛牙】!」
勢いのまま振り切ったカナディアの一撃は結晶獣の角の全てを刈り取ってしまった。
核を壊された結晶獣は力を無くして倒れてしまう。
「おお!! やったぁ!」
思わず、あたしは叫んでしまった。
それぐらい見事な勝利だったのだ。
よく思えば……がぶ飲みしたからってポーション女にはならねーよな……。
まぁ気持ちの問題なのだろう。
祭壇から飛び降り、2人の元へと向かう。
「二人ともやったな!」
「ああ、何とか間に合ったよ……」
ヴィーノは疲れたような顔を見せる。
反面……カナディアは刀をぽろっと落としてしまう。
「カナディア……? どうした!!」
かなり無理な動きをしたから反動でおかしくなったのか。
それとも結晶獣の攻撃でどこか……悪く……。
そんな心配をして駆け寄ろうとしたら……突如カナディアは立ち上がった。
「私!!」
カナディアはこっちを向く。
「お花を摘みに行ってきます!」
これまでにない速度で走り去ってしまったのだった。
あたしはヴィーノの方を向く。
「カナディアのお腹は10本が限界なんだ」
そうか……そりゃお腹も緩むわなぁ。






