37 試験開始
【不夜の回廊】
それは不思議なダンジョンだった。
周囲見渡しても特殊な金属を使用した機械式の通路が奥まで繋がっている。
一定間隔でライトアップされて、どこかで電気が使われているのだろうか。
確か千年前の古代文明はすごく発達していたと聞いたことがある。
このような不思議な遺跡が世界にはありふれているとか……。
地上の寂れた遺跡の地下がこんなことになっているなんてな。
少しだけ広い小部屋に入った俺達は何かに気付く。
「ヴィーノ、何か動いてます」
「魔獣……いや、機械か!」
「ここの機械魔獣は自己修復機能があるから壊しても数日で復活するんだぜぇ」
今回の魔獣はこういうタイプか。
飛行型のガンナーと犬型のロボウルフってところか。
アメリは小部屋の壁に背を向けてよりかかる。
「あんた達の力見せてみなよ!」
ガスッ、ドスッ、ゴスッ、ドクッ、ゴッ
見せてみなよと言われた10秒後には全てスクラップにしてしまった。
当然、この程度の魔獣であればポーションで一瞬である。
タイラントドラゴンを倒したような本気投法はフォームをしっかり作って投げないと駄目なので1回1本しか投げられないが、雑魚の魔獣であればクイック投法で威力を殺して速投げする。
倒せなければ……倒れるまで投げればいい。
ポーション・ショットは雑魚に効果的だ。
正直殺しがまずい人相手よりは魔獣とか機械の方が圧倒的に楽。
力を抜くって結構大変なんだよな。
「じゃあ……次行こうか」
「ええ」
「……」
先へ進もうとするとアメリが何だか固まっていた。
アメリがこのように呆けるのを初めて見た。
「ヴィーノ、あんたのその戦い方……なんだ?」
「え、ポーションのこと? 普通だと思うけど」
「普通じゃないし! あー【ポーション狂】ってそういうことかよ。聞いてた内容と違うじゃねぇか」
アメリは水色の髪をわしわしと手でかき、はぁっと息を吐く。
アメリはさっきの【アサルト】との戦いを見ていない。
そのような意味で、ポーション投擲での戦いはあまり見たことないはずだ。
そりゃ……俺だって剣とか魔法で戦いたかったけど……才能ないんだよ。
俺の【アイテムユーザー】って職はアイテムをうまく利用する職だからそのあたりを勘違いしたのかもしれない。
「応接室でポーションで受け止めた時から疑うべきだったな」
戦闘を終えた俺達は奥へ進む。
さらに進んだ先に入った部屋は管制室のようだ。
右に通路、左は壁。電源が落ちた操作できる電子機器。
これも何かのトラップだろうか。
俺は電子機器には強くないので適当にスイッチを押してみるが……もちろん反応はない。
「ヴィーノ、何か手を触れるよう指示している所がありますよ」
「触ってみるか」
カナディアは手形が書かれた電子機器に手を触れた。
ーーピピッ 【黒の民】の因子を確認しました。起動します ーー
何か機械から声が流れなかったか?
そんな反応もよそに入口から見て左側の壁がゴゴゴと上がっていく。
なるほど……こういうトラップか。
何も考えずに右側に行ったらダメだったんだろう。
S級冒険者たるもの、ちゃんと調査しろってことなのかもしれない。
「よし……先に進むぞ! ってアメリ、どうした」
「え、……ああ……えっと……」
アメリはにこりと笑った。
「なんでもない!」






