26 対砲弾龍戦⑤ ミルヴァ視点
コンテナから200本のポーションが空へ向かって飛び出て、砲弾龍の方へ向かっていきます。
砲弾龍の砲台から放たれる弾丸で何発かは破壊されますが……その中の半分近く生き残り、砲弾龍の背中に着弾しました。
ズゴゴゴゴゴゴゴォォォオォォ!
凄まじい爆発音が響きます。
爆裂魔法ならともかく、ポーションでこんなことをする人を初めてみました。
「やったんじゃないでしょうか!」
さすがにこの威力です。砲弾龍もひとたまりもないでしょう。
「砲台は全て破壊できたと思うが……」
ガアアアアアアアアアアアアア!
砲弾龍は咆吼を上げました。
言われる通り砲弾龍の背中の砲台は全て破壊されましたが、動きに影響がありません。
「あの背中は相当肉質が硬いな……。あれじゃダメージは通らない」
「そんな……どうすれば」
「やはりカナディアとナイト組で踏ん張ってもらうしかないな」
「ヴィーノさん! 今度は背中から大きな砲台が出現しました」
「あれは……」
砲弾龍の背中からは大きな砲台が出ています。双眼鏡で覗くと……銃口の数は……10ほど。
その銃口から大きめのミサイルらしきものが飛び出してきたのです。
ズゴン! ゴオン! ドゴン!
「きゃあああああああ!」
「あっちもミサイルかよ!」
工芸が盛んな街の家屋にミサイルが着弾し、爆発音がします。
見張り台の近くも通過して正直怖いです。
お母さん、私……今日死んじゃうかも。
「こっちもミサイルで応戦する。コンテナを並べてくれ!」
でも何とかしないとダメなので言われるがままにやってみます。
ヴィーノさんの指示通り、床にコンテナを並べました。
ヴィーノさんは再び合成して、ポーションミサイルで砲弾龍の弾を迎撃します。
シュボシュボっと飛んでいくわけですがミサイルとミサイルがぶつかりあって爆発音だらけでわけがわからない。もうどうなってるのこれ!
「ミルヴァ! 属性ポーションをくれ!」
「は、はい!」
私はヴィーノさんに属性と書かれたコンテナからポーションを取り出して手渡します。
「どんな魔獣にも弱点属性ってのは存在する」
炎とか氷とか雷とか……有名なのはそれですね。
ヴィーノさんは3属性のポーションを砲弾龍のミサイル砲台に向けて連続で投げました。
ファイア・ポーションが当たれば炎が吹き出し、サンダー・ポーションが当たれば周囲に電撃が発生します。
そして最後のフリーズ・ポーションが当たった時に砲台が凍り付き、動かなくなったのです。
「わー、すごい!」
「本当の機械じゃなくて生体の砲台だからな……氷属性が良く効くのかもしれん」
「ヴィーノさんって魔法使いですか?」
「だから、ただの【アイテムユーザー】だっての」
ミサイルもそうだけど、ポーションに付加効果を与えて、あれだけの攻撃を与えられるなんて本当にすごいと思います。
さらにHPやMPが減ったメンバーへのフォローも忘れていません。
ヴィーノさんってやっぱりすごい人なのかも。
破壊してもそこからまた新しい砲台が出てくるので凍らせて活動を止める方針に切り替えたようです
「またミサイル砲台が出やがったか」
「どうします? フリーズ・ポーションはまだありますけど、ここからじゃ当てられませんよ!」
さきほどの凍り付いた砲台が邪魔をして、出てきた砲台が死角となり隠れてしまっているのです。
このまままっすぐ投げても新しい砲台には当たりません。
このまま放置するとミサイルを撃たれるし、どうすれば……。
「問題ねぇよ」
「問題ないって、無理ですよ! ポーションを自由自在に曲げることでもしない限りそんなの無理」
「じゃあ曲げればいいんだよ」
「へ?」
ヴィーノさんの投げたフリーズポーション。
今までまっすぐ投げていた軌道とは違い、やや……曲線を描いています。
砲弾龍の砲台に近づいた所で一気にポーションが横方向にぐいって曲がりました。
「すごっ!」
そのまま砲台に当たり、凍結させます。
「行けるって言ったろ?」
「えー、どうなってるんですか」
「スライダー・ポーションとでも名付けようか。ライズもフォークもシュートも全部投げれるぞ」
よく分かりませんが、ポーションの軌道を自在に操れるヴィーノさんは魔法使いを超越した存在なのかもしれません。
その内もっと驚くべきことが見れそうな気がします。
「お、ダウンさせたぞ! みんなやっちまえー!」
じっくり足を切っていたナイト組が砲弾龍の足止めに成功したようです。
カナディアさんを含み、全員で攻撃します。ヴィーノさんもポーションをぶん投げて支援しています。
これを繰り返して行くうちに一方的に攻撃できるようになってきました。
これはもしかして……魔獣討伐もできるんじゃないでしょうか!
そうなったらギルドは王都から名誉ある報奨が……。
ピギャアアアアア! ピギャアアアア! ピギャアアアア!
今までの悲鳴とは違う……奇声とも言えるような声です。
な、何でしょうか。砲弾龍が静まってしまいましたよ。
「これは……もしかして!」
ヴィーノさんの表情が険しくなります。
事態はいよいよ最終局面のようです!