25 対砲弾龍戦④ ミルヴァ視点
砲弾龍が大きく地面に倒れ込みます。
確か……倒れ込んだ時は龍の組織の肉質が落ちて、柔らかくなり、攻撃が通りやすくなると聞いたことがあります。
「カナディア!」
ヴィーノさんは1本のポーションをカナディアさんの口めがけてぶん投げます。
見事口で受け止めて、カナディアさんは大太刀を引き抜き、砲弾龍の方へ行きます。
―四の太刀【桜花】―
カナディアさんは連続斬撃を砲弾龍の頭部に与えます。
素人目で見ても分かるくらいあざやかな動きです。舞っているという感じですね……。
これがA級冒険者の動きですか……。
思えばカナディアさんと会話し始めたのはこの街に滞在するようになってからです。
私も黒髪の言い伝えは親から受け継いでいました。
だから正直な所、いい感情は持っていなかったと思います。
でも……カナディアさんはボロボロになりながらも依頼をこなされており、真面目で実直で迫害されても諦めないすごい方でした。
そんな人を悪い人だなんて到底思いません。
でも誰にも気を許さない、怖い印象があったので親しくなりたいと思いつつも話すことができませんでした。
今となっては後悔です。
でも最近はヴィーノさんとパーティを組むようになってすごく物腰が柔らかくなったのです。
険しい表情が取れて、微笑みが多くなり、とても表情が明るくなりました。
私とも世間話をしてくれるようになりました。
そこでこんなことも聞いてみるのです?
「ヴィーノさんのこと好きなんですか?」
「ふふ……好きと言うか好かれているというか……うふふふふ」
何だか愛が歪んでいるような気がしましたが気のせいですよね!
黒髪を横に振って顔を紅くするカナディアさんはとても可愛らしかったのです。
元々、顔立ちも凜々しくて、スタイルも抜群で、長身で1歳しか離れてないのに……この差は歴然なのですが……。
それでも今度一緒に買い物へ行く約束もしましたし、仲良くできればなって思っています。
だから……頑張ってください。
砲弾龍は立ち上がり、再び進行を開始します。
ヴィーノさんは拡声器を使い、再び盾を構えたファランクス達を呼びます。
「シールド・ポーションをぶん投げる! 受け取れ!」
さっきカナディアさんに投げたのは攻撃力アップが見込めるソード・ポーションらしいです。
しかし、本当にいろいろなポーションを持ってますね。
「……ヴィーノさん大変です!」
「どうした?」
また砲弾龍の背から煙のようなものが出始めました。
さっきのパターンだとまた小さめの速射砲台が出るに違いありません。
「マジか……」
「ウソ……」
さっきは6式ほどだったのに……今回は20いや背中全体に砲台が出現しました。
そこから一斉に弾丸が飛び出ます。さすがの弾幕にナイト隊、ソーサレス隊、ファランクス隊は遮蔽物から一歩も動けません。
こんなのどうしたらいいんですか!
「ヴィーノさん……」
「仕方ない。もったいないがプランAを実行する!」
見張り台にも無数の弾丸が飛んでくるので身を隠します。
ヴィーノさんが拡声器を持ちました。
「カナディア! プランAで行く。頼むぞ!」
カナディアさんが飛び上がり、アーチ状の橋へ上がってそのまま家の屋根へ上がります。
ちょうど高さが砲弾龍の背と同じくらいのため容易に乗り移ることができました。
当然砲弾龍の弾丸の雨に晒されますが、カナディアさんが大太刀を盾に突き進んでいきます。
「いくら何でも……カナディアさんに砲台を壊させようなんて無理ですよ! 持ちません」
「壊すのはカナディアじゃない」
「それはどういう……」
カナディアさんは砲弾龍の背に乗って走り抜けます。
「回避と防御に専念すればくぐり抜けられるはずだ」
カナディアさんは砲台に目もくれず、まっすぐ背中を突き進み……地面に降りていきました。
いや……何か落としています。砲弾龍の背中に何かを仕込んだ感じでしょうか。
「そう。カナディアに持たせたのはA型磁力パウダーだ」
「磁力パウダー? 何をするつもりなんですか?」
「面白いものを見せてやる。ここに200本のポーションがある。……これにはA型磁力という特定の磁力にのみ強く引き寄せられる魔の素材、生鉄を入れている。それと爆弾魔獣のボムの欠片とバチバチネズミの毛を合成させる」
これが【アイテムユーザー】の合成……。この職はレア中のレアと言われていて、少なくともこの国ではヴィーノさんしかいません。
「見てみろミルヴァ!」
何とコンテナに敷き詰められたポーションがバチバチと振動し始めたのです。
「行くぜぇ!」
ヴィーノさんが大きく手を振りました。
「ゴォーーッ! ポーションミサイル!」
シュボ!シュボ!シュボ!シュボ!シュボ!シュボ!シュボ!シュボ!シュボ!シュボ!
200本のポーションは天高く飛び上がったのでした……。
「なぁにこれぇ」






