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22 対砲弾龍戦①

 老人からさらに詳しく話を聞き、再びギルド内で話し合う。


 ギルドマスターはもっと警戒していれば……と悔やんだ声をあげる。

 実際40年に1回という話だが、今年は38年目らしい。それを見越して準備するのはまぁ……無理なんだろうな。

 他にも要因があり、砲弾龍が近づいているのに気づくのがかなり遅れてしまったと告げる。

 まさか……明日の朝に来てしまうなんて普通じゃありえない。不幸が重なりあったということか。


「それで……ギルドマスター。応援は来るのですか?」


 破滅級の魔獣を倒す時は各地のギルドから応援を呼んで対応する。

 今からでも遅くはない。交易の街からは近いし、王都からでも馬車で数時間で到着する。


 しかし、ギルドマスターは首を横に振った。


「悪い偶然で王都の方にも破滅級の魔獣が現れたんだ。なのでこの地方のB級冒険者は全てそちらに向かっている。こちらへ応援を呼ぶ時間はないそうだ」


「一応、交易の街にA級冒険者パーティがいたのでお願いしたんですが……」


 おいおい、それって……。


「【アサルト】の方々ですね。でもこっちには関係ないって言われて……」


 ミルヴァは萎れるように沈んだ顔立ちになった。


 B級の時はクラスアップのために頑張っていたというのに……A級になった途端、【アサルト】は自分達が冒険者の顔と言わんばかりに何もしない。

 交易の街には【アサルト】と俺とカナディアしかA級はいないので増長しまくって手がつけられないことになってやがる。


 ということは応援の見込みはなし。

 砲弾龍の対応はA級2人、C級、D級16人でしろってことか。


「で、でもヴィーノさんやカナディアさんがいてくださるなら何とかなりますよね!」


 A級は無敵ではない。

 S級冒険者まで行けば一騎当千とも言えるが……人の多い王都ではA級もそこそこいるんだ。

 そのような意味では絶望的だろう。下手に手を出さずに避難に全力を上げる方がいい……いいんだが。


「ヴィーノ、私、あの子達を守りたいです」


 相方は正義感に溢れている。

 せっかくさっき孤児院を悪党から守ったというのに……吹き飛ばされちまったら意味がない。

 この砲弾龍の件で孤児院への攻撃が無くなる可能性が高いしな……。


「じゃあ……このメンツで何とか進行を食い止めよう。理想は進路を変更させて、新設された大通りを通行させ、正門から裏門に出すことだ」


「チッ、そんなことできんのかよ」


 16人の冒険者から不満の声が上がる。


「そもそもA級でもアイテムしか能のない無能さんと黒髪の死神女だろ? 今回の件だって死神が魔獣を呼び寄せたんじゃねーの」


 冒険者達の不快な視線がカナディアに集中する。

 黒髪効果はここでも絶大か。刷り込みってのは恐ろしいな。


「おい、君らも冒険者なら自分の目で見たもので判断しろ。憶測で語って自分の価値を下げんな」


 不快な声をひとまずは黙らせた。

 C級、D級がわめいた所で何も変わらない。


「それで……この中で破滅級のクエストを受けた者はいるか?」


 一同静まる。

 そりゃそうだ。あれはB級冒険者の資格を持っていないと参加することができない。

 所属している街に破滅級が現れたら参加することになるが、40年近く大型魔獣が出現していないこの街に所属していたら行くことはないのだ。


「あ、私も無いです……」


 カナディアも無かったか……。

 最近の破滅級のクエストって2年前だったし、16歳のカナディアが受けているはずもない。


「A級で破滅級の戦闘経験のある俺が指揮を取るでいいな? ギルドマスター、さっそく作戦会議を行いたいと思います」


 他の冒険者達はしぶしぶ従うという形で納得させた。

 俺以外の誰もが経験したことのないクエストだ。取りまとめなんてできるはずもない。


 B級冒険者がいないことも今となってはありなのかもしれない。

 俺とカナディアが主要でやれるなら活路は開けるはずだ。


「ヴィーノ、大丈夫なのですか?」


 さすがのカナディアも不安そうに声をかけてくる。

 俺はできる限り明るく応えた。


「これはチャンスかもしれない」


「へ?」


「カナディア、君はこの街の救世主になれるかもしれん」

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書籍版ポーション160km/hで投げるモノ! ~アイテム係の俺が万能回復薬を投擲することで最強の冒険者に成り上がる!?~』
第2巻が7月20日 より発売予定です! 応援よろしくお願いします!

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